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「12歳の恋愛カウンセラー」第1話

 12歳、小学6年生の心愛(ここあ)は、ビン底眼鏡をかけていて髪の毛ボサボサ、まったくモテなくて一見恋愛には無縁のように見える。だが、実は今まで10万冊以上読んだ少女漫画のおかげで心愛の恋愛IQはとてつもなく高かった!
 少女漫画の購入費用は、なんと心愛が年齢を偽って請け負っているメール恋愛カウンセリングで賄っていた。12歳の心愛のもとに、婚約破棄、風俗、不倫など大人向け高難度の恋愛相談が舞い込んでくるが、高い恋愛IQで相談者の悩みを解決していく。
 相談の条件は、相談料の1万円と、相談内容は絶対にウソをついていないこと。ウソをつくと、その相談者の恋愛の結末は不幸なものになってしまう……。

≪主人公≫
心愛(ここあ):
12歳、小学6年生の冴えない女の子。趣味は少女漫画を読むこと。嫌いなものは虫。

★第1話「小学生恋愛カウンセラー心愛(ここあ)」

●小学校へ登校するシーン(実は漫画の中のシーン)

小学6年生くらいの可愛い女の子、
冬子が同世代のイケメンの男に壁ドンされている。

ドン!

イケメン小学生A
「冬子!俺と付き合ってくれ!」

冬子
「タクヤくん…」

イケメン小学生B、イケメンAの手を振り払う。
「まて、冬子のことを本当に分かってるのはオレだ!」

冬子
「カズキ!」

タイプが違うイケメン二人が冬子をとりあっている。

冬子
「(ドキドキ…)」

そこでシーンが変わり漫画の世界から現実の世界に変わる。
学校へ登校する小学6年生、心愛(ここあ)の姿。

少女漫画を読みながら登校している。

心愛はさっきの漫画の女の子とは違って、髪はボサボサでビン底眼鏡の冴えない女の子。
ぶつぶつとつぶやいてる。

心愛
「(イマイチだな…。
 二人ともがっつきすぎ。
 冬子の年頃なら、こんなガキっぽい男じゃなくて、
 落ち着いた大人っぽい男が好きなんだ。
 私なら…ぶつぶつ)」 

心愛はトコトコあるいて学校につき、自分の席に向かう。

●小学校の教室の中でのシーン

ガラッと教室のドアを開ける心愛。
心愛の机の上には暴言が落書きされ、花瓶が立っている。
『死ね。ブス。キモイ。
 陰キャ。消えろ』

心愛
「……(またか)」

心愛は、黙って花瓶を窓の横の定位置に戻し、雑巾を絞って、机の上をふいて文字を消す。

席に座り、鞄から少女漫画を出す。
『タイトル:マスカレード・ボーイ』

『私は少女漫画が好き。
この世界を忘れて、漫画の世界に没頭できるから』

心愛は、いじめを気にすることもなく席に座って少女漫画に没頭する。

『私が今までに読んだ少女漫画は全部で10万冊以上!
フヒヒ』

近くの席から、ギャルっぽい女の子の声が聞こえてくる。

女子生徒A
「ねえ、聞いてよ。今度彼氏とデートなんだけどさ」

女子生徒B
「えっ、あの最近付き合い始めた中学生の彼氏?」


「そう。私の行きたいとこでいいよって言うんだけど。
 決められなくて、どうしよう?」


「知らないよ。ユキの好きなところ言えばいいじゃない。
 あ、心愛にでも聞いてみれば?(笑いながら)」


「ハハッ。こんなブスに聞いてどうするのよ。
 恋愛経験なんてあるわけないじゃん」


「アハハ」

心愛、無視して少女漫画を読んでいる。
「…………」

女子二人は恋愛話を続ける。


「水族館と映画館ならどっちがいいかな?」

B
「いまディズニーの映画やってるじゃん。私なら映画館かな~」

A
「やっぱり?」

心愛、心の中でつぶやく
「(映画?、恋愛偏差値低すぎるんだよオマエら。
 そんなの水族館に決まってる。
 まず中学生男子が女子向けディズニーの映画なんて見ても楽しくない。
 好きな相手とのデートは相手が楽しめる場所が一番だ。
 テンションが高くなっておのずとデートは成功に近づくからな。
 そして、まだ付き合い始めて間もないならコミュニケーションを通して仲良くなるのが正着(せいちゃく)。
 映画館ではデートの時間が2時間以上も拘束されてその間会話ができない。
 お前らみたいなガキじゃあ大した感想いえないだろうしな!!
 その点水族館はだいたいの中学生男子ならテンションが上がる。
 コミュニケーションもはかどる。
 あ、ハンカチを持っていくのを忘れるなよ。あそこの水族館にはヒトデを手で触れる体験コーナーがあるからな。女子力アピールしとけ!)」

『心愛は大量に読んだ少女漫画のおかげで、若干12歳小学6年生にして
 天文学的な恋愛パターンを試行し、天才的な恋愛IQを手にしていたのだ。』

A
「じゃ、映画館いきたいっていっとこ!」

心愛
「(やれやれ、この調子じゃこのカップルの賞味期限はせいぜい3か月…)」

教室に学校の先生が入ってくる。
ガラッ
先生
「はい、ホームルームはじめるよ。席に座って」

女子生徒は席に着く。

『なぜ12歳でそこまで大量の少女漫画を購入できたかって?』

ブルブルと心愛のスマホが震える。

心愛
「フヒヒ。新しい相談か…。」

メールの文章
『先生。お願いします!
 元カノとの恋愛がうまくいってなくて……。
 相談にのっていただけますか?』

●心愛の恋愛カウンセリングのWebページ
『大人気!恋愛カウンセラーココアのメールカウンセリング』
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≪口コミ≫
『レビュー★5
恋愛経験豊富で素晴らしい先生です!

レビュー★5
無事彼氏と復縁できました!

レビュー★5
彼女とラブラブです!信頼できる先生です!

レビュー★5
噂だと、心理学の博士だとか…。

レビュー★5
いや、本当は数々のお金持ちを虜にしてきた銀座のクラブのママという噂も!?

レビュー★1
相談をする際は、全て事実を伝える必要があります。
私は内容をごまかしたばかりに、酷い目にあいました……』

心愛、キランとビン底眼鏡が光る。
スマホのフリック入力でタタタタッっ!!と高速でメールに返信する。
「まかせてください。相談料は1万円です」

心愛
「(フヒ……これで新しい少女漫画が買えるぜ)」

『心愛は年齢を偽り凄腕の恋愛カウンセラーとして仕事を請け負っていた。
そしてその収入は全て少女漫画の購入に充てられているのだ』

心愛
「(さてさて、今回の相談は…?)」

メールの文章
『結婚前提で交際していた彼女に振られてしまいました。
彼女との同棲も解消しました。
彼女には婚約指輪をプレゼントしていたのですが、私の家に忘れたそうです。
彼女に婚約指輪は貰ったものだから返してくれと言われたのですが、家を探しても見つかりません。なくしてしまったみたいです。
そもそも返す必要があるのでしょうか?
年齢25歳 会社員
彼女24歳 OL』

心愛、ボソっとつぶやく
「金目当て…」

・・・・

キーンコーンカーンコーン

学校が終わり下校。トコトコと歩く心愛。
途中で猫に餌をあげる日課を行う。
「にゃ~ん」
猫は心愛になついている。

●心愛の家にて

心愛はパソコンの前に座っている。
ペロペロキャンディーをなめながら
キーボードでカタカタと文章をうっている。

心愛の部屋にはたくさんの少女漫画が積まれている。
そのうち奥から1冊取り出して読みだす心愛。

心愛は絶対年上彼氏、とタイトルのついた少女漫画を読んでいる。
「……確か”絶対年上彼氏”の第8巻。
 ナツミとユウタが破局するシーン……ぶつぶつ」

心愛はパソコンでカタカタとメールの返信をする。

パタンと単行本を閉じる。

心愛、メールを返す
『ひとつ確認があります。
 今回の相談で、嘘をついていることはありませんよね?
 些細なことでも、事実でないことがあればたとえアドバイスに従っても必ず失敗します』

相談者、気まずい顔をする
「……」

・・・・

●回想(相談者カップルがケンカしてるシーン)

彼女
「私たち、もう付き合って結構経つよね。
 私も今年で25歳になるし……」

相談者
「そのことなんだけどさ…」

彼女
「はぁ!?何言ってるの!
 せっかく有名大学出て大手自動車メーカーに勤めてるのに
 居酒屋で働きたいって……!」

相談者
「ごめん。やっぱり、オレこのまま一生を終えるのはどうしても嫌なんだ。
 ゼロから居酒屋で修行して、将来自分の店を出したいと思ってる」

彼女、あきれ顔
「…………頭おかしいんじゃないの」

相談者
「大学時代に飲食でアルバイトしてた頃を思い出したんだ。
 働く事の楽しさを…」

彼女
「そんなの自分勝手すぎる!
 私たちの今までの時間は何だったのよ!!

 ……さよなら」

・・・・

●相談者の家
相談者、スマホの通知を見ながら
「あっ。先生から早速回答がきた」

『相談者さんが彼女に振られたのであれば、基本的には婚約指輪を彼女に返す必要はありません。
 婚約指輪をプレゼントすることは、法律的には”贈与契約”といいますが、無条件の贈与ではなく婚約状態にあることが前提の贈与です。
 なので、前提条件の婚約状態でないのであれば、贈与契約は消滅します。
 (民法703条)

 ……ですが、気になることがあります。
 指輪代と同じ現金を返すよ、と伝えてみてください』

心愛、キャンディーペロペロしながら
「普通、指輪が欲しいのなら
 これから別れる相手の家に忘れたりなんかしない……。」

男性
『えっ、現金をですか!?
 最近ちょっと出費が立て込んで。
 現金を用意できるかどうか…』

心愛
「……。
 彼女が欲しいのは、もっともっと大物。
 もし金目当てなら次の行動は…」

心愛、パソコンをカタカタ
『私に任せてください』

相談者、戸惑いながらも
『分かりました…。
 彼女に送ってみます。』

・・・・

相談者の元カノからLINEが返ってくる。
彼女は後ろ姿しか見えない。
『ダメです。現金で払うなら、指輪代の倍支払って下さい』

相談者、返信を見て申し訳なさそうな顔をする。
「………」

相談者、ココアにメールを返す。
『現金なら指輪代の2倍じゃないとダメだそうです。
 まさか彼女がこんな守銭奴だったとは…。
 やっぱりお金目当てだったんですね、ショックです……。』

心愛(ここあ)キランと眼鏡を光らせる
「……予想通り」

相談者
『でも、これでハッキリしました。ココア先生のおかげです。
 返さなくても法的に問題ないなら、このままフェードアウトしようかと思います。』

心愛、ペロペロキャンディーをバキッ!と噛み切る
「はあ? フェードアウト?。
 違うだろ」

心愛、カタカタとキーボードを打つ。カタカタ、ターン!(エンターキー)
『分かりました。
 じゃあ、指輪代の2倍払うって言ってください』

相談者
『えっ!?
 流石にそれは…。
 相手の思うツボなのではないでしょうか…。』

心愛
『大丈夫です』

心愛に言われるがままにLINEを送る相談者。

相談者
『やっぱり…今度は3倍じゃないとダメだと…。
 こっちが払うと言えば、彼女はどこまででも吊り上げるつもりです。
 これじゃきりがありません。』

心愛
『いえ、ここまでは計画通りです。
 お金を払うと言って、彼女に会いに行ってください』

相談者
「えぇ!?
でも…、そもそも彼女はあってくれるんでしょうか?」

心愛、少女漫画を読みながら、眼鏡がキランと光る。
「大丈夫です。
 会ってくれるはずです。
 当日は、私の言うとおりに行動してください。
 あと、お金は持っていかなくて大丈夫です。」

●公園にて

彼女、不機嫌そうな顔
「なによ。
 こんなところに呼び出して」

相談者
「ごめん……指輪が見つからなくって」

彼女
「私のことを考えてないから、大切な指輪をなくすのよ!
 許さない!……見つかるまで絶対に許さないから。」

相談者
「……許して欲しいと思ってる。」

彼女
「指輪の3倍じゃないとダメって言ってるでしょ!!
 150万円!
 出してみなさいよ!
 (そんな大金、もってないの知ってるんだから!!)」

相談者
「いや……指輪、見つけたんだ」

彼女
「えっ、え?
 ふーん、そうなんだ。
(嘘だ、だって指輪は…)」

相談者
「ほら、手を出して」

彼女、手を差し出し、相談者からの何かを受け取る。
そこには、折りたたまれた小さな手紙。

彼女
「なによこれ!!
 どこが指輪なのよ!」

彼女、手紙をひらいて捨てようとする
「バカにしてるの…
 こんな紙切れ!!」

彼女はそこに書かれた文章に気づく。
『ごめんね、もう一度やり直そう。
 今度は結婚指輪を一緒に買いにいこう』

相談者
「やっぱり指輪をなくすわけないよ。オレいつも大切にしてたから」
「本当は、……君がもっててくれてるんじゃないかな」

彼女
「……!!」

相談者
「あかりのこと、不幸にしてしまうんじゃないかって…。
 こんな甲斐性のないオレだけど、よかったら一緒に頑張っていきたい」

彼女、ぶわっと顔が真っ赤になる
「バカ!!最初からそう言えばいいのよ!!
 
 ……こちらこそ、よろしくお願いします。」

●回想(相談当初)

心愛 
『ひとつ、確認があります。
 今回の相談で、嘘をついていることはありませんよね?
 ・・・・
 本当はあなたが彼女に別れをつげたのではないでしょうか?」

相談者、心愛のメールを見て驚く。
『すみません。実は…
 別れを提案したのは、私の方からです。
 どうせ、愛想をつかして振られるだろうと思って、
 それなら、自分の方からと…』

心愛
『そうだと思いました。
 正直に教えてくれて、ありがとうございます』

相談者
「(…なんで分かったんだろう)」

●回想終わり

公園の茂みに心愛が隠れている。

心愛
「あのね、女の子は男が思ってるよりも懐が深いの。
 自分が彼女を食べさせていけないから別れる?
 本気で選んだ相手ならそれくらいじゃ別れない。
 プライドが耐えられないから男の方から別れを選択してしまうだけ」

茂みに隠れている心愛に虫が近づいてくる

心愛
「うわぁ、虫!!」

ズサァと心愛が茂みから出てきてコケる。

心愛
「ぎゃ」

いい感じの雰囲気だった二人に水を差してしまう心愛。

相談者が心愛に駆け寄る。
「!? だ、だいじょうぶ??」

心愛、顔を赤くして逃げる
タタッ

彼女
「大丈夫…なのかな?」

心愛
「くっ……。少ししくじったが
 成功したようだなっ!」

相談者、心愛が落とした少女漫画に気づく。
「なんだこれ?”絶対年上彼氏”
 少女漫画……?」

・・・・

●後日、小学校にて
体育の時間
心愛は公園でコケた擦り傷の絆創膏を膝にはっている。

ワーワー!

体育館でドッジボールをする心愛のクラス。

心愛のチームにボールが飛んでくる。

心愛の前には男子が立っていて、ボールが近づく。
男子は直前でボールを避ける。
サッ
心愛にボールに当たる。

ボゴッ

心愛
「いてっ」

ボールがむなしくバウンドする

心愛、外野にトコトコ歩いていく。
「……」

男子A
「あはは!何よけてんだよ!
 女子を守ってあげろよ!」

男子B
「いやコイツは女子じゃねーって!」

アハハ

・・・

●教室にて
心愛、着替える。ボールが当たったところをさすりながら
「(疲れた…マッサージ受けたい…)」

教室においていたスマホを確認する心愛
「あ、相談が来てる。
 …2件も」

心愛、メールを読む。

スマホ画面
『私は今メンズエステのお仕事をしています。
 稼ぎはいいですが、異性との出会いもなく
 ただ歳をとっていくことに恐怖を覚えます。
 年齢のせいか、リピートしてくれるお客さんも減ってきました。
 でも、今更普通の仕事に戻ることができません。
 それにこういう仕事をしていたら、体目当ての男性ばかりで
 恋愛恐怖症になってしまいました。
 私はこれからどうしたらよいでしょうか?
 28歳セラピスト ゆか』

 
心愛、漫画を思い浮かべる。
「メンズエステ……。
 過剰なマッサージをする、ちょっとエッチなお店……。
 
 漫画で読んだことがある」

心愛
「で、もう一つは…」

スマホ画面
『ココア先生。恋愛の相談です。
 仕事帰りにマッサージ店に通っているのですが
 そのお店の担当セラピストのことが好きになってしまいました。
 どのようにアプローチすればいいか、ご教示いただけると幸いです
 28歳 会社員 男』

心愛
「この相談者はマッサージの店員さんが好きになったのか…。
 メンズエステじゃなくて、普通のマッサージ店だけど。
 1対1だから、お客さんが恋愛感情を持つのはよくあることだな。
 気になるのは…」

心愛、メールの返信をする。
「とりあえず最初はこっち」

心愛はメールの返信をする。
『ゆかさん。
 今までの恋愛の経験と
 なぜメンズエステのお仕事をされているか、
 もう少し詳しく経緯を教えていただけますか?』

・・・・

廊下にいる男子
「女子着替え終わったー?」

気づいたらメールを返信している間に心愛以外みんな着替え終わってる。

女子
「入っていいよー!」

心愛、急いで着替える
「(やば)」

アハハ
クラスの女子から笑われる心愛

★第1話 終わり

#創作大賞2023 #漫画原作部門


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