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「満場一致に注意せよ」

ドラッカーの『経営者の条件』に、
GM(General Motors)で長らく社長を
務めたアルフレッド・スローン
用いていた意思決定基準の話が出て来る。

毎週日曜の朝に参加している読書勉強会で
『プロフェッショナルの条件』
読み進めているが、この本はドラッカーの
過去の著作の「いいとこどり」なので、
『経営者の条件』からも多くの引用が
なされていて、先週は丁度その箇所に
あたった。
小見出しが「満場一致に注意せよ」

スローンは、GMの最高レベルの会議では、「それではこの決定に関しては、意見が完全に一致していると了解してよろしいか」と聞き、出席者全員がうなずくときには、「それでは、この問題について、異なる見解を引き出し、この決定がいかなる意味をもつかについて、もっと理解するための時間が必要と思われるので、いつものようにさらに検討することを提案したい」と言ったそうである。

『プロフェッショナルの条件』162ページ

ドラッカーは、この「意見の不一致」の
必要性
として、三つ理由を挙げる。

第一は、組織の囚人になることを防ぐため。
組織の決定権者におもねるなどして、
何かしら特別な決定を引き出そうとする
輩を排除する必要がある。

第二は、選択肢を確保するため。
決定には常に間違う危険が伴う以上、
唯一の選択肢のみ存在するよりも、
複数の選択肢を確保すべきと説く。

第三は、想像力を刺激するため。
しっかり検討された反対意見があれば、
丁々発止の議論になる。
それにより参加者の想像力が刺激され、
元々有力だった意見もより良いものに
磨かれる可能性が高まる。

我々凡人からすれば、
みんな賛成しているのだから
さっさとそれに決めてしまえば
シンプルでベストなのでは?
などと思ってしまうところ。

真にベストな決定を下すためには、
このような深い洞察に基づく
優れた意思決定基準
を持つことが
欠かせないのだろう。

このエピソードは、私にとっては
殊のほか印象的で、今回も改めて、
深呼吸の際に空気を深く吸い込む
ときの心持ちで、エッセンスを
深く頭の中に吸い込むイメージを
頭の中に描いていた。

そんなところへ、小宮コンサルタンツで
経営コンサルタントとしてご活躍の
藤本さんが、昨日書かれたnoteの中で

ユダヤ社会では全員が賛成した案は否決されると言われます。

という一文と共に、正にスローンの話と
同じ趣旨で「意見の不一致」を説いた
「ユダヤ人の知恵」を紹介してくれた。

GMのスローンがユダヤ人かどうかは
定かではないが、この意思決定基準が
「ユダヤ人の知恵」と共通するものだ
と知り、更に納得感が高まったのだ。

何でもかんでも、常に意見を戦わせて
ばかりでは疲れてしまうという意見も
あるだろう。

しかし、より良い決定、決断を下す
ためには、常に反対の立場からの
議論に耐えるだけの論理、理屈、
背骨がなければならない
のは、
疑いのないところ。

経営における意思決定というのは
それだけ重いのだということを、
よくよく心しておきたい。

己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。