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初めて日食なつこさんのライブに行った。 #クラブイクリプス3

私はピアノという楽器に対して「豪華」「ドレス」「きらびやか」「厳か」という単語のイメージを勝手に持っていたけれど、現れたのは白いシャツに黒いパンツで、はだしの女性だった。とても素敵だった。

初めて、日食なつこさんのライブに行ってきました。

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きっかけは数年前の『関ジャム 完全燃SHOW』で取り上げられた『水流のロック』。
ピアノの音色と、意志の強さが伝わってくる歌詞と、透き通った声がとても好みで、購入してよく聴いていた。
そして最近思い立ったようにほかの曲にも手を出し始め、『水流のロック』以外にもノスタルジーを感じる優しい曲や力強くてかっこいい曲、たくさん素敵な曲があることを知った。

私は関ジャムの映像以外で動いている彼女を見たことがなかった。
曲を聞いているうちに、このひとはどんな顔をして歌うんだろう、どんなふうにピアノを弾くんだろう、という興味がむくむくと膨らみ、ライブに行ってみようと決めた。

今年の9月中旬。
検索してみると、11/2にビルボードライブ大阪でライブがあるらしい。
ジャニーズのコンサート以外に全く慣れていない私は、ふさわしい服装も席の取り方もわからない会場に少し躊躇したけれど、飛び込んでみることにした。

チケットぴあでチケットを取ると、店に電話をして整理番号を教えてもらい、当日会場で手続きをして整理番号順に並び、席は好きなところに座ることができる、という流れだった。

テーブル席は相席で、一人で行ったため空席のある一番前のテーブルに座ることができた。しかもピアノを弾く彼女の目の前。

食事と飲み物を頼むことができて、ライブ会場で食事するのは初めての経験なのでおもしろかった。アーティストカクテルを注文。日食をイメージして作られたカクテルらしい。赤ワインの下に白い部分もあって綺麗なカクテルだった。食事はフィッシュアンドチップスにした。

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客席の明かりが暗くなると、日食なつこさんが現れてすたすたと舞台に上がり、少し挨拶をして、すぐピアノの前に座って曲が始まった。「颯爽」という言葉がよく似合う。

黒髪のショートカット、白いシャツ、黒いパンツ、はだし。
黒子に徹しているのかと思うほどシンプルで飾り気のない出で立ちに、曲も歌声も彼女のものなのに、「人間よりも曲が主役なんだ」という印象を勝手に受けた。
言葉をひとつひとつ丁寧に発するような挨拶を聞いて、ようやく、いままで歌声しか知らなかった彼女の人間味を感じることができた。



ここからセットリストのネタバレがあります。



前半は優しいさわやかな曲が多くて、綺麗なピアノの音と伸びやかな透き通った声が楽しめる曲が多かった。

『Red-light Tower』
『スペクタクル』
『三面鏡』
『あのデパート』
『white frost』

ビルボードライブ大阪は西梅田にある会場で、私が幼いころからよく行っていた阪急百貨店と阪神百貨店のすぐ近く。
特に『あのデパート』を聴くと阪急百貨店の大食堂や屋上遊園地が思い出されて、メリーゴーランドに乗って母と祖母に手を振っていたときの光景がよみがえる。
この曲のことは以前、noteにも書いた。

今はない屋上遊園地、亡くなった祖母、大人になった自分、もうあの頃から変わってしまったことだらけだし、子供のころの私がメリーゴーランドから見た景色は写真にも残っておらずおぼろげな記憶だけれど、その思い出を色濃くしてくれる曲。
オレンジ色の夕日のような照明とノスタルジックな曲調が合わさって、音だけで聴くよりも温かくて少しさみしい気持ちになった。

『white frost』はツンと冷えた冬の朝のような音の曲。綺麗な曲だなと思ってよく聴いていた。冬の始まりに聴けてよかった。

目の前の席だったので滑らかに動く指先もペダルを踏む足もよく見えて、こんなにまじまじと「ピアノを弾くひと」を見るのも初めてで楽しかった。

後半戦はドラムのkomakiさんも登場し、アップテンポで強気な曲が多めに。

『青いシネマ』
『環礁宇宙』
『レッドデータクリーチャー』
『エピゴウネ』
『LAO』
『剣の歌』
『水流のロック』
『vapor』

MCもあり、普通に話す姿や笑う様子を見られて、また人間味を感じることができた。もっとクールで無口な方なのかなと勝手に思っていたけれど、おもしろくてかわいらしい人だった。

『青いシネマ』はさわやかな青色が見えるようなとてもきれいな曲で、好きなので聴けて嬉しかった。サビの「青い青い時間の只中に今日の僕はまだいたいの」の「青い青い」の声のアップダウンが好き。

大好きな『エピゴウネ』があったのも嬉しかった。
「情熱だけで生き残れたら どいつもこいつもヒーローだよ」と歌う気の強い曲で、とても好き。
優しい曲は神々しさを感じるほど温かいのに、強気な曲は殴り掛かりそうなほどの荒々しさがあってかっこいい。
『LAO』も、今回は聴けなかったけど『黒い天球儀』も好き。
歌っている最中は睨みを利かせながら歌っているかと思えば、うつむいた瞬間に楽しそうな笑みを浮かべていたり、曲を聴くだけではなく見ているのも楽しかった。

そしてきっかけになった『水流のロック』が聴けて本当によかった。最後まで出てこないから、もしかしたら聴けないのかなと思ってそわそわしていた。生で聴けてよかった。
水滴の跳ねるような音を出すとき、右手で鍵盤を叩いてから腕を上げるのが印象的だった。私が好きだった音はこうして出ているのかと認識できた。

最後の曲が終わると、彼女は落ち着いた挨拶をして、また颯爽と退場していった。
後味すっきり、だけど満足感の残るライブだった。
そして、満足したつもりだったけれど、帰ってきて音楽サービスのプレイリストを見ると、まだ生で聴けていない曲がたくさんある。

帰りにもらってきた次のツアーのお知らせを、部屋のコルクボードに貼った。

何かとびきり楽しいことに使わせていただきます。