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日本の商業BL、面白くなくなっている気がする

noteでは主に実写作品を取り上げているが、元々は商業の漫画、小説がメイン。

読む数は少なくなったものの、今でもたまに買って楽しんでいる。

だけど、最近は日本の商業BLの行く末が心配。

このままでいいの?日本のBL。

はじめに

このnoteの情報ソース元は主に”BL情報サイトちるちる”となっています。

他にBL特化で情報発信しているサイトを知らないからです。

あとは私や身内による体感です。

そして、ちるちるのリンクを貼るとnoteの投稿に失敗しましたとポップアップが出るため、申し訳ないのですがリンクはありません。

アダルトサイト扱い?

今どんな作品が人気?

完全なる私の体感で言うと、漫画はオメガバース系、エロ直球系、深掘りしすぎない軽めの作品が人気そうな気がする。

小説はもうとにかくなろう系の中世ファンタジー。

ちるちるのランキングを見ていると、そんな感じ。

・ちるちるのタグ検索にて、発行総数、作品トーン、エロ度を集計
・対象作品は漫画、小説
・対象年代は現在(2022)、5年前(2017)、15年前(2007)、25年前(1997)
・発行総数とタグの件数から割合を算出
 - 小数点以下は四捨五入
・トーンは大体の作品が重複して設定されている

発行総数

2022年:3659件
2017年:3215件
2007年:1571件
1997年:725件

※二次創作、雑誌、非BL、同人のタグを除外。
※電子書籍のみも含む。

トーン

電子書籍のみの作品は、よっぽどの人気作でない限りはタグ設定がされておらず、集計不可だったのが惜しい。

現代に近づくにつれてシリアス、痛い系作品が減り、あまあま作品が増えているようだ。

しかし、昔はほとんどなかったホラーやミステリー、ダーク系の作品もわずかに増えていることがわかる。

10年代から電子書籍の台頭もあり、作品数や書き手が増え、ジャンルの幅も少し広がったのだと推測。

エロ度

こちらはそんなに年代での変化は大きく変わらないように見える。

強いて言うなら、00年代以降はエロ度なし、少なめの作品は減少傾向。

ちるちるでの統計記事

・リバ

記事 - リバってもしかして絶滅危惧種なのでは|BLニュース ちるちる

これだけ作品数が増えているのに、リバが増えていないのは面白い傾向だと思う。

需要がないわけではないけど、そこを重要視している読者は多くはないということか。

・オメガバース(他、バース設定)

記事 - BL界の歴史を覆した作品を考える|BLニュース ちるちる

15年以降の大きな変化として、やはりオメガバースの台頭は外せない。

記事内では20年までのグラフしかないが、21年、22年も増え続けている。

・23年の流行予想

記事 - 2023年はアレがくる!!!次に流行るBLコンテンツ大予想会|BLニュース ちるちる

>『夜はともだち』『心中するまで、待っててね。』がTikTokを中心に再ブームとなるなど

そうなの!?知らなかった。

相変わらずバース系は人気だと思うし、電子書籍もどんどん主流になっていくと思う。

総合すると

タグ設定されていない電子系の情報をざっと見ている感じ、大体ド直球のエロ系か溺愛系が多い気がする。

それも加味すると、現在人気なのは、あまあま系でエロ度は標準的以上の作品。

おそらく、パーセンテージで出ている以上に多いと思う。

昔から比べるとジャンルの幅が広がっているとはいえ、それを大幅に上回って電子書籍のエロ系、溺愛系の勢いがある。

そして、オメガバース。

これは、仕組まれた運命と、発情期という設定が、上記に書いた人気傾向、そして時代傾向ともかなり相性がいい。

次は、そんな時代傾向を考えていく。

読み手の心境の変化 - シリアスも長編も”疲れる”

新規の長期連載がなくなった理由

これは調べ方がわからなかったので完全に私の体感になるけど、新規の長編作品って本当に少なくなっていると思う。

ここ5年くらいで長期連載前提で始まったBL作品をご存知の方は、是非コメントにて教えていただきたい。

小説はまだ1冊である程度完結しているので、昔から人気があれば長編になるという印象。

それに比べて漫画は、1話の時点で長編にするか短編にするかがある程度決まっていて、最近は本当に長編前提で書かれている作品は少ないと感じる。

シリーズ化すると言っても、上下巻や上中下巻、もしくは1冊ごとにキャラクターを替えてのスピンオフがほとんど。

そんな中で、特に人気のあった作品は続編が決定するという流れ。

14年発売の『抱かれたい男1位に脅されています。』もその流れで長編になったはず。

まず、長編作品はよっぽどの大人気作品出ない限り、売上を継続してあげるのが大変。

巻数が増えるにつれ、新規は挑戦しにくくなり、既存読者は途中で飽きて買わなくなる。

商業BLというただでさえ儲けるのが大変なジャンルで、今から新規で長編連載をしても、採算が合わないのだろう。

その分、アマチュアでならそういったビジネスを度外視に、書きたいものを書きたいだけ書ける。

小説は特に、『背中を預けるには』のように、アマチュアから出る長編大作はこれから増えていくだろうと思う。

商業での長期連載が減っているというのは、BLに限った話ではない。

一世を風靡した『鬼滅の刃』は全23巻。『東京リベンジャーズ』も全31巻。『ゴールデンカムイ』も全31巻。

調べてみた限りだと、ジャンプでも最近は3~4年の連載で終わる傾向があり、それ以上に長く連載しているのは『僕のヒーローアカデミア』や『ブラッククローバー』くらいのようだ。

漫画作品全般の傾向として、長期連載よりも、短期でたくさんの作品を出す方向へシフトしている。

そして、漫画だけでなく、日本はBLドラマも1話30分程度の短編が多い。

これは需要と放送枠の確保、資金などに関係がある。

韓国でもこの傾向が強くて、逆に中華ブロマンスはかなりの長編、台湾・タイは短編も長編半分ずつといった感じ。

韓国はBLドラマ、ひいてはLGBTQへの理解があまり進んでいなくて、大きな作品を作るのはまだ難しく、短編webドラマが多い。

中国ドラマは、古装は特に50話100話は当たり前の世界なため、内容にかぎらず長編になりがち。

台湾、タイは1話30分程度、オムニバス形式などの短編ドラマもあれば、1話1時間越えのドラマも普通にあり、監督脚本や制作によって様々。

つらい現実を忘れたい

給料は上がらないのに生活費は上がり続け、おまけに外出は制限され、インターネット上には自分より優秀な”一般人”が山のようにいる。

とにかく、現代人は我慢の日々を送っている。

そんなただでさえつらい日々を送っているのに、娯楽である漫画や小説の中でまで、現実を思い出すようなシリアス作品は読みたくないという人が増えているのではないかと思う。

そして、今はとにかくコンテンツ数が多い時代。

重厚なストーリーはBLではない少年漫画などでお腹いっぱいで、BL作品に求めるものは癒やし、可愛い恋愛モノなのかもしれない。

最近人気の『高良くんと天城くん』を例にすると、主人公の2人が付き合うまでの駆け引きのようなまどろっこしい描写はない。

付き合ってからも、(私が見た範囲では)特に大きな事件が起きたり試練が待ち受けたりしているわけでもなく、可愛い2人の日常を描いているところが人気の要因なのだと思う。

タイパ主義

最近は一番最初にその作品のメインシーンを持ってきて、「どうしてこうなったのかと言うと……」というスタイルの作品が増えた印象がある。

これは商業BLだけじゃなくて、他の漫画やドラマ、Youtube動画でもよく見られる演出。

もういまや、現代のエンタメ業界は完全に飽和しきっている。

日本の人口は減っているというのに。

コンテンツ数が増えているのに比べ、人口が増えていないということは、それだけ顧客の奪い合いが激化しているということ。

読者側も何にどれだけ時間を使うか、シビアに判断している。

だから一番良いシーンを先に見せる”オモバレ”がないと、そもそも読者に興味を持って貰えない。

面白いのかどうかわからない作品を読むのは、タイパが悪いから。

そんな中で、いつ終わるかわからない連載作品、いつ結ばれるのかわからないシリアス作品、そういったものが淘汰されていくのは十分納得できる。

オメガバースとタイパが相性いいのも、そのせい。

付き合うまでの過程は「運命の番だから」という一言で説明出来るし、NSFWシーンに持ち込むのも、「発情期だから」でOK。

手っ取り早く読めて、無駄を削ぎ落として、美味しいところだけを読めればそれでいい。

とにかく今はタイパの時代。

アジアBLの台頭

そんな中で、20年以降盛り上がっているジャンルがある。

それが、日本国外から輸入されてきたBL作品だ。

主に、漫画は韓国、小説は中国やタイからの作品が翻訳されて出版されるケースが増えてきた。

タイパが重視されている今の日本で、『魔道祖師』や『エネアド』など、ロマンスよりもストーリー重視でBL要素が薄い、重厚な作品が話題を集めている。

二次創作が好きな層にファンが多い印象で、とにかくファンアートなどの文化が盛ん。

日本の商業BLでは補えない、壮大な世界観と長編ストーリーを海外作品で補っているのが現状だ。

もちろん、海外=日本に輸入されてくる作品は、クオリティが高く、現地でも他の地域でも人気のある、ランキング上位の作品だけ。

そりゃ日本でも人気が出るのは当然。

だけど、その現地や他の国でも人気の作品が、ストーリー重視の作品であることには注目しなければならない。

どうなる?国産BL

正直、このnoteのタイトルは煽りでつけただけで、面白くないと感じるのはただNot for meなだけ。

十分理解している。

だけど、どんどんタイパ主義で気持ちのいいところだけを作品にしていく傾向が強まっていくのは、悲しく思う。

作品のジャンルは増えたのかもしれないけど、その中身の大筋は一辺倒になっている気がする。

ただ男の子2人が恋愛していればいい?

何の障害もなく、波風はあまり立たない、見どころシーンだけの切り抜き作品、それって本当に面白い?

最近の日本の商業BLは、なんか牛丼みたいな感じ。

早い、安い、美味い。

マニュアル化で一切無駄のない流れが出来ていて、お昼のスキマ時間、ご飯の用意が面倒な夜、一瞬で食べて一瞬で出ていく、そんな感じ。

もちろん、その手軽さが魅力なんだけど、一生の思い出に残る味かと言われたら、多くの日本人にとってはそうじゃない。

例えば、大切な人の誕生日にご馳走してあげたいのは牛丼かと言われたら、なんか違う。

少しお高めのお寿司とかお肉とか背伸びして予約したコースだったり、はたまた自分で一生懸命作った手作りのご飯だったりする。

本も一緒。

忙しい毎日のちょっとのスキマで課金して、10分で満足。

1週間後にはその内容もほとんど忘れ、また別の作品に課金する。

そうじゃなくて、発売日にわくわくしながら本屋に行って手に取って、お家でお茶を入れてゆっくりしながら、数日かけて1冊を楽しむ、そんな感じのBLが読みたい。

最近の私は、何年も前から追っている連載作品と、アジア圏の作品と、西欧のM/M、それで生きている。

あまりにも数が少なすぎて、ついに英語の洋書にも手を出そうとしている。

あとは一般書籍として販売されているけど、BLファンも楽しめるような作品。

どんどん国内の作品への興味が失われ、海外へ日本紙幣が流れていく。

日本のBL、本当にこのままでいいのか。


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