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音楽配信やってみてわかった「鎖国」システム

前回、TUNE CORE JAPANやROUTER.FMで楽曲を配信。アクセス解析を見ると、自分の楽曲が海外では全く聴かれていないことが判明。という話をした。

もちろん私がブランド力のない弱小アーティストであるのが、曲を聴いてもらえない最たる理由ではあるのだが、それにしても、これだけ広い世界に向かって発信してリアクションがゼロというのはあまりにも不自然。意図的に蓋をして閉じ込められているのではないかと勘繰ってしまう。

音楽配信サービスの最大手はApple MusicとSpotifyということになろうが、最近はAmazonも力をつけてきていると聞く。音楽にそこまで興味がない人たちにとってSpotifyは未だちょっと敷居が高いサービスであるように感じるし、MacやiPhoneユーザーでない人にはApple Musicもそこまで近しい存在ではないかも知れない。今やAmazonはほとんどの人が使っている通販サービスで、そこからMusicに流れる人が一定数いたとしても不思議な話ではなかろう。

ふと、自分の楽曲がAmazon Musicでどんな風に扱われているか見に行ってみたらこれが酷かった。同名のアーティストと混同されてめちゃくちゃなことになっている。別に自分と同じ名前のアーティストが存在するのはかまわないが、自分の曲が別人の作品として扱われているのはよろしくない。相手だって嫌だろう。

Amazon Musicにはアーティスト専用ページがあって、そこに登録すると、楽曲やアーティスト情報などをある程度、自分で整理整頓することができる。

早速、専用サイトから登録の手続きを開始。言語オプションで日本語が選べるのはありがたい。アカウントを作るためにいちばん最初に活動範囲が「国内」か「ワールドワイド」かを選択させられる。私の場合そもそも国内でアーティスト活動を展開するつもりが全くないので、迷わず「ワールドワイド」をチョイス。

Amazon Music for Artistsのアカウント取得には普段使っているAmazonのユーザー情報がそのまま流用できることになっているので、登録してあるメルアドとパスワードを入力。ところが何度やっても「このユーザーは存在しない」とのメッセージが出て先に進めない。念の為、Amazonのサイトでパスワードを再設定してみたが結果は同じ。どういうこっちゃ?

同じページに「新規にAmazonアカウントを作る」というアイコンがあり、「すでにAmazonアカウントあるんだけどなあ〜」と思いながらもクリックしてみたら、普通にメルアドとパスワードを新規で入力するように誘導される。再び「すでにAmazonアカウントあるんだけどなあ〜」と思いながら、言われるがままに情報入力したところ、新たにアカウントを取得することができてしまった。どういうこっちゃ?

要するにAmazonには国内専用のAmazon.jpがあり、それとは別に本国のAmazon.comがあるわけだ。Amazon Music for Artists に登録するためには.comでアカウントを持っている必要があるということか。(←これは間違いと後で判明。)なるほど。

まあ、とにかく、Amazon.comにアカウントができたので、これでめでたくMusic for Artists の登録に進めると思いきや、話はそう簡単ではなく、まずは新しく取得したAmazon.comのアカウントのユーザー情報を設定する必要がある。フォームに名前や住所などの個人情報を入力していくわけだが、ここで居住地「日本」を選択すると、「米国以外の国を居住地とする場合はカスタマーサービスにお問合せ下さい。」とのメッセージが出て先に進めなくなる。ここで心が折れて一旦退出。

友人のカフェでカロリーたっぷりの料理を食べて、気分を取り直し、帰宅して再度PCの画面に向かう。Amazon Music for Artistsに関するブログや記事が多数オンラインに出ているので、いくつかをチェック。アカウントを作るのに苦労している人は私の他にはいない。どういうこっちゃ?

ふと、トップページの活動範囲「国内」もしくは「ワールドワイド」を選択するというころまで戻り、試しに「国内」を選択、普段使っているAmazon.jpのユーザー情報を入力してみたら、、問題なく次に進めることができた。

ふうっ。要するにだな。通信販売も音楽配信サービスも、国内と国外はそれぞれ別枠で扱われており、日本国内のことは全部Amazon.jpでやってね。というルールであるらしい。これってある種の「鎖国」だよね。

*ちょっと調べてみたらAmazonのアカウントは基本、世界のどこでも使えて、例えばアメリカで取得したアカウント情報(ユーザー名やパスワード)はそのままヨーロッパのAmazonでも利用できるらしい。どうやら日本のAmazonだけが、この「鎖国システム」を導入しているようだ。(未確認情報)

これでピンと来た。冒頭の自分の音楽が海外では全く聴かれていないという問題。これ、鎖国してるのはAmazonだけじゃないんだ。日本国内から発信された楽曲は、(しかるべき手続きや、特別な力が働かないかぎりは)国のまわりに張り巡らされた高い壁を越えることはできないんだ。海外企業の日本法人があるってのはそういうことなんだね。私たちは壁の中に囲われている。

前回の投稿でも言ったけど、アーティスト活動をワールドワイドに行いたいなら、楽曲配信に使うディストリビューターも海外のサービスを使うべきと思った私の判断は間違っていなかったわけだ。「鎖国」は大袈裟かも知れないけれど、同じモノを売るにしても国内と国外で流通経路が全く異なるのは事実で、プロモーションにしても何にしても方法をちゃんと知らないと、せっかくの労力が水の泡になってしまうということを学びました。

さて、そんなAmazon Music for Artistsだけど、いちおうユーザー認証まではいけたので、このままアーティスト登録まで済ませてしまおう。と、やってみるとこれがまたちょっと面倒だったりして。

ユーザー認証されてサイトに入れたら、アーティストの登録画面へ。ここで個人のアーティストとして登録するか、レーベルやディストリビューターとして登録するかを選択する。ここまで全て日本語で応対されているのだけれど、すでに少し違和感のある表現。「アクセスをリクエストしているのはだれですか?」と来た。意味は通じるけど少し変なセンテンスだよね。

私はレーベルとして登録したいので、「レーベルまたは販売会社」という項目をクリックして先に進む。難解な日本語の説明をいくつかかいくぐり、最終的にサイト内に設けられたチャットのウィンドウで先方とやりとりすることになる。チャットのお相手はもちろんAIなんだけど、これが全部英語。しかし、出来の良い翻訳ソフトが存在する今となっては、下手な日本語より全編英語の方が意味が通じやすかったりする。最初から言語を日本語に設定せず英語でスタートした方がスムーズだったかも知れない。

チャットにエクセルのファイルが添付され、「項目を全て埋めて送り返すべし」とのメッセージ。エクセルの使い方はまあ普通にわかるからよかったが、経験のない人はここで折れるだろうな。レーベル名や、連絡先、ディストリビューターの名称などを記入して、はたしてこれで合っているかどうか半信半疑ながら、ひとまずデータを送り返した。数日内にメールで返事が来るとのこと。

手順としてはひとつ前に戻るけれど、同名アーティストの楽曲が混同されている件は、窓口が設定されているので、アーティスト登録が済んでいなくても、クレームを入れることができる。私は1、Tune Core Japanから配信した曲、2、ROUTER.FMから配信した曲、それから3、海外のレーベルから配信したそれぞれの曲が、他人の曲として扱われていたので、それらを明記して取り扱い変更の申請をした。返信はないが、クレームから24時間ぐらい経過した現在、Amazon Musicで確認すると、1、と、2、についてはすでに他人アーティストから分離されていた。3、は依然同名の知らないアーティストの作品として扱われている。

今日はここまで。

相変わらず話にオチはないのだけど、強いて言うならレコード会社の人たちって毎日こんなことをやってんだなあ、大変だなあ、と思わされました。ごくろうさまです。

写真はぜんぜん関係ないけど、手続きに滅入って、いちど外出して、友人のカフェで食べたケサディア。落ち込んだ時はこういうもの食べると元気がでるよね。


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