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三平方の定理

三平方の定理の意味

直角はあまりにも有用であるため、古代の人々はうまく直角を作る方法を編み出した。

三辺の長さの比が3:4:5となる三角形が必ず直角三角形になることを発見し、三角形の三辺の比が3:4:5になるようにして直角三角形を作ることで、直角を作り出したのである。

直角三角形ができるような三辺の比は他にもあり、例えば三辺の比が5:12:13や8:15:17のときも直角三角形ができる。

上で挙げた以外にも、直角三角形ができるような三辺の比が数多く(無数に)存在する。そうすると気になるのが、三辺の長さの間にどのような関係が成り立っていれば、直角三角形ができるのかということである。

3:4:5や5:12:13などの三つの数の関係には何かしらの共通点があるはずだ。すなわち、直角三角形の三つの辺の長さの間に何かしらの関係が成り立つはずであり、具体的にどのような関係が成り立つのかが知りたいのである。

そしてまさしく、直角三角形の三つの辺の長さの間にある関係を示したものこそが、これから語ろうとしている、三平方の定理なのである。

三平方の定理の発見

直角三角形の三辺の間に成り立つ関係を発見することは決して容易ではない。だからここでは天下り的に三平方の定理を導入する。

直角三角形の底辺、高さ、斜辺をそれぞれ$${a,b,c}$$とおくと、三辺の長さの間には、

$$
a^2+b^2=c^2
$$

という関係が成り立つ。これを三平方の定理という。

例えば、ある直角三角形の辺の長さを測ったところ、それぞれ5,12,13であった。このとき確かに、

$$
5^2+12^2=13^2
$$

という関係が成り立つ。

逆に、三角形の三辺a,b,cの間に

$$
a^2+b^2=c^2
$$

という関係が成り立つならば、それは直角三角形である。

例えば、

$$
3^2+4^2=5^2
$$

が成り立つから、三辺の長さが3,4,5である三角形は直角三角形になる。

ところで、三平方の定理を実際に誰が最初に発見したのかは知らないが、「よく見つけたな、こんなの」と思う。しかし、三平方の定理の応用の広さを考えれば、この定理を発見することは必然だったのかもしれない。必要に迫られれば、人間は謎に力を発揮するものである。

三平方の定理の証明

こんなわけのわからない三平方の定理が成り立つことを、最初から当たり前のように受け入れられるはずもない。本当なのか?と疑いたくなる。

直角三角形をいくつも作って、辺の長さを測って計算すれば、実際に成り立つことが確認できるかもしれない。しかし、直角三角形は無数に存在するため、そのすべてについて調べきることは不可能である。

ゆえに、すべての直角三角形に対して成り立つことを示すには、公理と論理を用いて証明しなければならない。

三平方の定理の証明方法は数多く存在する。その中で私が最も気に入っている方法を一つだけ紹介しよう。聞いた話によると、アインシュタインが小学生のときに見つけた方法らしい。

辺ABを斜辺とする直角三角形ABCについて考える。点Cから辺ABに垂線を下ろし、交点をHとおく。

直角三角形

このとき、頂点Aを共有する二つの直角三角形△ABCと△ACHに注目すると、∠CAH=∠BACおよび∠AHC=∠ACB=90°より、二つの角が等しいので、△ACH∽△ABCである。同様に、頂点Bを共有する二つの直角三角形に注目すれば、△CBH∽△ABCが成り立つ。

よって、三つの三角形は互いに相似、すなわち△CBH∽△ACH∽△ABCとなり、それらの相似比は、それぞれの斜辺の比に等しく、$${a:b:c}$$となる。このとき、相似比と面積比の関係より、それらの面積比は$${a^2:b^2:c^2}$$となる。よって、それぞれの三角形の面積は、ある定数$${k}$$を用いて、

$$
\begin{aligned}△CBH&=a^2k\\△ACH&=b^2k\\△ABC&=c^2k\end{aligned}
$$

と表せる。

また、△CBHと△ACHは△ABCを二つに分けてできたものであるから、

$$
△CBH+△ACH=△ABC
$$

という関係が成り立つ。これにさきほどの面積を代入すると、

$$
a^2k+b^2k=c^2k
$$

が成り立つ。両辺を$${k}$$で割れば、

$$
a^2+b^2=c^2
$$

となる。

三平方の定理の活用

三平方の定理を何に活用するのか。まずは単純に考えよう。直角を作る際に、三辺を決めるのに役立つ。逆に、直角三角形の辺の長さを求める際にも役立つ。

また、長方形の対角線を直角三角形の斜辺として見れば、三平方の定理を適用できる。円錐の展開図から体積を求める場合、高さがわからないが、組み立てた際にできる直角三角形に注目すれば、三平方の定理を用いて、斜辺と底辺、すなわち側面と底面の円の半径から高さを求められる。

座標平面において、点の位置は$${x}$$座標と$${y}$$座標を用いて表される。$${x}$$軸と$${y}$$軸が直交するとき、原点からその点までの距離は$${x}$$座標と$${y}$$座標を底辺および高さに持つ直角三角形の斜辺の長さになる。

二点間の距離が三平方の定理を用いて座標から求められることは極めて重要である。

まだまだ話は広がるが、今はやめておこう。

さて、これでこの数学シリーズはひとまず終了である。中学校の学習指導要領を参考に、中学数学に関して一通り書いてみた。正直、自分にとって興味がない分野もたくさんあって、なかなか苦労したが、改めて勉強になった部分もある。数学は面白いが、あまりに広範囲に枝をのばしすぎなんじゃないかと思うことがある。しかし、一度学び始めて、意外と奥深いことがわかると、沼にはまってしまうのである。

次は高校数学についても書きたいが、先に大学数学の勉強をしなければならない。どうしようか悩みどころである。まあ、気ままにやることにしよう。


ここまで読んでいただきありがとうございました。面白いと思って読んでもらえてたら幸いです。

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