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数の拡張「実数→複素数」

実数

基本単位や分割単位の個数を用いて、基準値からの増減を表した数が実数である。そのうち、有限の分割で表せるものを有理数、有限の分割で表せず、分割が無限に続くものを無理数と呼ぶ。

単位量、増減(足し算引き算)、基準値が定められるものは、ほぼ何でも実数で表せる。

例えば、時の「単位」として、太陽が一周するのにかかる時間を$${1}$$日、それを$${24}$$分割した単位を$${1}$$時間、$${1}$$時間を$${60}$$分割した単位を$${1}$$分、さらに$${60}$$分割した単位を$${1}$$秒と定められる。そして、時間の経過を「足し算」として定める。これで、どんな長さの時間も数で表せる。「基準」は適当に決めていいが、太陽の昇り沈みのちょうど中間くらいを午前または午後$${0}$$時とする。これにより、どんな時刻でも数で表せる。

長さの「単位」は、メートルや尺、寸など、自由に決められるが、人によって使用単位が異なると意思の疎通がとれなかったり誤解が生じたりするので、現在は基本的にメートルで統一されている。「足し算」は長さをつなげることに対応する。これに「基準」を付け加えると、ある長さの直線(あるいは曲線でもいい)における点の位置を表せる。

一般に、「単位」とその分割および「足し算」が決まればを表すことができ、「基準」を決めてそこからの増減を考えれば位置を表すことができる。

方程式

実数を用いて、ものの量や位置を表すことができる。実在する量や位置を表す数だから実数と呼ばれる。実在する量の観測および計測によってその値を実数に表す。

先に条件があって、その条件を満たす量を求める方法が、方程式である。条件を満たす量が必ずしも実在するとは限らないから、それを表す数は想像上の数になる可能性がある。

複素数

方程式$${x^2=-1}$$を満たす$${x}$$は、実数の範囲に存在しない。すなわち、いかなる実数も$${x^2=-1}$$を満たさない。したがって、これを満たす数は想像上の数であり、そのような数を虚数と呼ぶ。$${x^2=-1}$$の一つの解を$${i}$$で書き表すことにする。このとき、$${i}$$を虚数単位という。

実数と虚数を合わせて、複素数という。

複素数は方程式の解を表す数として定義される。

複素数は、実数と虚数単位の実数倍の和の形で表される。実数の部分を実部、虚数単位にかかる実数を虚部という。

複素数$${z}$$の実部と虚部をそれそれ$${x,y}$$とすると、

$$
z=x+yi
$$

と表される。

虚数は虚部が$${0}$$でない複素数である。すなわち、実数$${a,b  (b\ne0)}$$を用いて、$${a+bi}$$と表される数である。

特に、実部が$${0}$$の虚数を純虚数という。任意の純虚数$${\beta}$$は$${0}$$以外の任意の実数$${b}$$を用いて、$${\beta=bi}$$と表せる。

虚数についての考察

さて、ここからは、虚数が本当に想像上の数でしかないのかを調べてみよう。

まず、なぜ実数の$${2}$$乗が負の値をとらないかを考える。

そもそも、数の正負とは何だろう。

正負とは、数が増加するか減少するかの区別である。数が増加する場合を正、減少する場合を負と定めた。

正負の符号の定義とかけ算の定義に沿うように、正負の数のかけ算が定義される。すなわち、注目対象の増減量とそのまとまりの数の増減量に対して全体の増減量を求める計算として定義され、増加量の増加は増加、増加量の減少は減少、減少量の増加は減少、減少量の減少は増加となる。

定義された「かけ算」において、符号と絶対値は互いに影響を与えず、符号は符号だけで、絶対値は絶対値だけで決まる。

したがって、$${2}$$乗が負にならないというのは、符号のかけ算の性質である。

ゆえに、$${2}$$乗が負になる数を考えたなら、その性質は絶対値によるものではなく、符号によるもののはずである。

虚数単位$${i}$$は、正でも負でもない新たな符号として解釈するのが妥当だと思う。

虚数は、ものの量の増加でも減少でもない、全く別の操作を表すと解釈できる。この操作は$${2}$$乗によって減少に転じる。

$${2}$$乗によって減少に転じる操作とは一体なんであろうか。そのような操作は実在するのであろうか。

結論から言うと、確かにそのような操作が実在する。したがって、虚数はもはや想像上だけのものではなくなり、実在する操作を表すものとして用いることができる。

操作の具体的内容を説明するために、いくつかの概念を準備する。

数直線

直線上の位置を実数で表すことができると述べたが、これは逆に実数を直線上の位置で表すことができるということでもある。実数を表す直線を数直線という。

正負は向きに対応する。右向きを正とすれば、その逆の左向きは負となる。

座標平面

現実は直線だけでできているわけではない。

面上の位置を表すにはどうしたらよいか。

直線上の位置の拡張によって、面上の位置を表すことが可能になる。

まずは面を線で表す。すなわち、面を隙間なく線で埋め尽くす。それぞれの線上の位置は実数で表せるから、後は、面を埋め尽くす無数の線のうち、注目する点がどの線の上にあるかがわかればよい。

面を無限に細かく分割したものが線だと考えられるから、線の個数は実数に対応する。これを利用すると、点がどの線上にあるかを実数によって指定できる。

面上の位置を表すには、点がどの線の上にあるかを識別する実数と線上の点の位置を表す実数の二つが必要になる。

逆に、二つの実数の組によって、面上の位置を指定することができる。面上の位置を表す数の組を座標という。座標の表し方が決められている平面を座標平面という。

各線の原点に対応する点を結んでいけば、無数の線を横断する線ができる。この線は、点がどの線上にあるかを表す実数に対応する。

結局、座標平面は、平行でない二本の線によって定められる。特に、直交する二本の直線によって定められる座標を直交座標と呼ぶ。通常、横の直線を$${x}$$軸、縦の直線を$${y}$$軸という。横方向の位置を表す実数を$${x}$$座標、縦方向の位置を表す実数を$${y}$$座標といい、$${(x,y)}$$と書く。

$${x}$$座標が$${1}$$で$${y}$$座標が$${0}$$である点の座標は$${(1,0)}$$である。この点を原点を中心に反時計回りに$${90\degree}$$回転させると、座標$${(0,1)}$$に移る。さらに$${90\degree}$$回転させると、座標$${(-1,0)}$$に移る。

この回転操作は$${2}$$回で$${x}$$座標を$${1}$$から$${-1}$$にする操作である。これは$${2}$$乗によって減少に転じる操作だと見なせる。したがって、$${90\degree}$$回転させる操作を$${i}$$に対応する操作として定めることができる。

複素数平面

実部を表す直線を横軸、虚部を表す直線を縦軸とする座標平面を複素数平面という。

このとき、複素数は複素数平面上の位置を表す数である。改めて強調するが、複素数は、平面上の位置という実在する量を表す。

四元数

平面を表す数があるのなら、空間を表す数を考えることだってできるはずだ、とかいって、考え出されたのが四元数である。そして、四元数から一部を取り出して作られたのがベクトルである。

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