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中検一級「不合格」体験記(前編:戦略を立てるまで)

2023年11月に実施された中検一級のスコアが返ってきました。自己採点の段階で不合格であることはわかっていたのでもはやショックはないですが、せっかくなので中検に向けた数ヶ月間の体験記を書こうと思います。

試験結果は以下のとおりです。
リスニング:35/50 42/50 計72/100
筆記:16/20 12/20 14/16 (ここまで記号、42/56)14/20 18/24 計74/100

その前に、すでに語彙問題の分析を以下の記事で書いているので、興味がある方は合わせてご一読ください!


中国語学習遍歴

中検そのものについて語る前に、僕の中国語との過去の付き合いを紹介します。

中国語を始めたのは2017年4月で、大学の第二外国語でした。大学3年の夏〜翌年1月までは、北京大学の対外漢語学院で留学し、留学中の2019年12月にHSK6級に合格、2021年には中検準一級に合格しました。2023年の中検スピーチコンテストでもスピーチの部で最優秀賞をいただきました。

中検一級を受けた時はすでに中国語歴6年半でしたが、まだ「神のレベル」の一級に合格できるレベルではないと思っていました。ですが、スピコンに出場した際に中検無料券をいただいたき、かつしばらく中国語を勉強する上で明確な目標がないと感じていたので挑戦してみることにしました。

僕は中検準一級を受けた時にも体験記を書いているので、ぜひご参考にしてください!

中検一級の試験概要

中検一級は毎年1回、11月にのみ開催される試験で、言わずもがな日本で受けられる中国語検定試験の最高レベルの試験となっています。

平均点に関係なくリスニング85点、筆記85点で一次試験が合格となり、二次試験は日中と中日の通訳試験が課され、こちらも85点で合格となります。

中検準一級は一次試験が難関で二次試験は9割が受かる試験でしたが、一級は一次の合格率が5〜10%程度、二次も低い場合だと4割程度で、最終合格率が数%となる本当に難しい試験です。

次に、リスニングと筆記に分けて簡単に説明します!

リスニング

リスニングは全部で3つの大問があります。最初の2つがシンプルな選択問題で、長文を聞いた後にそれぞれ5問ずつ4択問題に答える形式です。合計10問50点で、1問間違えると即5点マイナスなので、3問間違えるとほぼ合格は無理です。3つ目の大問が書き取りで、長文を聞いたあとにややゆっくり読まれる文章を聞いたままに書き取ることが求められます。書き取る時間としては不十分で、中国語を速記する必要があるため意外と注意が必要です。

筆記

筆記は全部で5つの大問があります。前半3つが記号問題28問で、合計56点あります。大問1が長文問題の体裁をした語彙問題、大問2、3は純粋な語彙問題で、HSKと比べても中検がいかに語彙力を重視しているかがわかると思います。細かな出題形式については冒頭で紹介した記事でもかなり詳しく書いていますので、ぜひご参照ください!

後半、大問4が2問20点の中文和訳です。ぱっと見そんなに難しくないと思うのですが、僕の得点を見るとあまり芳しくないように思われ、ただ中国語で書かれた言葉の意味が日本語で分かる以上の訳が求められているように感じました。和訳は数年前まで3問24点だったのですが、現行の試験では和文中訳が1問増えた関係で2問20点となっていますので、過去問を解く際はご注意ください。

大問5が3問24点の作文問題です。前半2問が和文中訳、後半1問が指定の語彙を用いた自由作文です。こちらは専門用語や時事的な用語など訳すのが難しいものも出題されている印象で、自由作文は何が求められているのかわかりづらいですし、模範解答がとんでもないレベルで書かれており、ちょっと癖があります。

現状把握と目標設定

筆記の目標

初めて過去問を解いたのが7月末、107回の筆記の記号問題だけ解きました。この時の得点が30/56で、びっくりするくらい難しかったです。和訳や作文はそれなりに手は出そうでしたが、この記号56点分は数ヶ月でどうにかなるレベルじゃなさそうだと一瞬諦めそうでした。。

過去問演習のスコア

すでに説明したように、筆記は記号問題が全28問の56点分で、8個間違えたら得点が40/56となりこの時点で不合格が確定します。僕は初めて解いた過去問でこの記号部分が30点しかなかったため、これをどうにかしないと記念受験にすらならないと考え、まずはこの記号問題で46を取ることを目標としました。

記号問題で46点を取る場合、後半の和訳中訳で5点しか落とせない計算です。かなり楽観的な目標設定ですが、受験する前は和訳が20/20であれば中訳19/24でギリギリ実現可能だろうと考えていました。

ただ、実際の得点を見れば分かるとおり満点を目指すのは厳しい世界なので現実的には記号で48〜50点(すなわち3〜4ミス)、後半で37〜35点を目指すのが妥当かと思います。

リスニング

準一を受けた時の感覚として、リスニングは比較的余裕があると考えていました。記号問題は音源が2回流れるので落ち着いて取り組めますし、内容がわかれば当然に正解できる(=ひっかけやちょっとした誤解での失点を作問側が狙ってない)と思っているので、普通に聞き取れれば満点だと思っていました。

社会人であるため勉強時間があまり取れないことを考慮すると、やはりリスニングにかけられる時間は少なかったです。週に1〜2回過去問やトレーニングブックを解くこととして、現状の能力をやや向上させつつ記号45点、書き取り40点を目標にしました

目標達成への戦略

そもそもの日々の学習

とりあえず7月末の時点で上記のような方向性で11月の試験本番までの道筋を立てましたが、それまでどんな学習をしていたかを紹介します。

○準一級レベルの成語の学習
準一級の対策の記事に詳しいことは書いていますが、僕は2年前に準一級を受験した際にAnkiというアプリに自作の成語フラッシュカードを作成していました。全部で900〜1000くらいあって、それをちまちまと復習していました。

○小学校の国語の教科書の通読
中国の子供でも分かる語彙力を身につけたいと思い、平日はよく国語の教科書を読んでいました。1年生、4年生、6年生のものが主で、時々読んだ内容の200字要約なんかもやっていました。

○トレーニングブック(リスニング編)
昔購入したトレーニングブックの問題がまだたくさん残っていたので、月に1〜3題くらいのペースで取り組んでいました。問題を解いたら必ず听写(書き取り)をして、時間があるときは何回も音読をしました。

○トレーニングブック(筆記編)の作文
あまり真面目にはやっていませんでしたが、5〜6月に作文の練習がしたいと考えてスキマ時間にスマホのメモ帳に書いていました。80問あるうちの50くらいまでやった記憶です。たくさん辞書を引いて書き、時々中国人の友達に見せていました。

○中国語ニュースのチェック
NHKワールドのアプリをダウンロードし、特にやりたい勉強がない時はニュースを読んでいました。音声の配信もあるので、耳を鍛える目的でよく聴いていました。

筆記の記号問題対策

筆記の大問1〜3は語彙問題で、大問2を例に取ると以下のような出題傾向があります。

大問2の出題傾向

詳しい解説は下記の記事をご覧ください!

準一級を受けた時は、トレーニングブック(筆記編)の索引を参照して準一級のページに出てきた成語を全て暗記し、キクタン慣用句編の392個と上級編の単語も(単語とその意味だけですが)全て暗記しました。そこまでやってようやく準一級に合格したわけですが、そんな自分も一級は30/56な訳で、全く歯が立たないことにびっくりしました。。

振り返ると、準一級は、日々の単語学習の中に成語や慣用句、ことわざを大量に追加すること(=ボリュームアップ)が求められており、トレーニングブックやキクタンに出てくる語彙を片っ端から暗記しさえすれば合格点(75点)に到達できました。しかし、一級は成語を中心に覚えるべき語彙が爆増する一方で、知っているつもりの二次熟語を中心とした単語の意味と使い方を正確に理解すること(=ブラッシュアップ)も同時に求められています

その意味で、一級は「片っ端から暗記」戦法は片手落ちになる試験だと思いました。例えば、トレーニングブックには一級のページに成語などが800程度は出題されますが、これらを暗記したところで対応できるのは全体の数%程度にしかなりません。それ以上に出題頻度の高いかつ難しい二字熟語の問題は、単語の意味を暗記してもその用法やニュアンスは理解しづらいため正解できず、とても厄介です。

この、ボリュームアップ(V)とブラッシュアップ(B)の観点を踏まえ、僕が取ったのが以下2つの戦略です。

  1. 解いた過去問に出題された語彙は全て覚える(戦略V)

  2. トレーニングブックの語彙問題の解答を自力で作成する(戦略B)

具体的なやり方や反省点などは「後編」に譲ります!

筆記の和訳中訳対策

無邪気に「和訳満点!」の目標を掲げていた割に、和訳中訳ともにしっかりした戦略はありませんでした。

準一級を受けた感覚として、和訳中訳は思ったより点が来ている印象がありました。模範解答を見ても、過度に意訳する必要はないように思います。中訳に至っては「これだと不足があるのでは?」と思われる模範解答もあるくらいで、漏れなく丁寧に記述すればいい点数になると考えていました。

勉強する時間もあまりないことから、費やす時間の9割は語彙に割き、主に直前1週間で一級と準一級の過去問を解き、余力があればやり残していまトレーニングブック(筆記編)の作文問題71〜80に取り組もうと考えました。

リスニング対策

準一級が思ったより簡単だったこともあって、同じノリで一級も乗り切れると考えていました。時々トレーニングブック(リスニング編)の問題を解いて書き取りを行い、今ある能力でもそれなりに対応できるかな、と考えていました。

初めて過去問をちゃんと解いたのが試験1ヶ月前くらいのことで、その時なんと選択問題が35/50程度しか取れず、すでに計画の雲行きが怪しくなっていました。書き取りは30〜45あたりをうろうろしていて、記号問題次第で85が狙えるかというかなり消極的な態度でいました

今回の試験で誤算があるとしたらリスニングを上げます。反省点は後編で書きますが、やはり実力不足でしたね。


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