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カンクンで原因不明の体調不良。ベリーズ経由でグアテマラ・フローレス島へ

2016年3月。日本を出発してから、メキシコ、キューバと周遊して、約1か月が過ぎていた。

ハバナの街に充満していた排気ガスに喉をやられたのだろうか。咳が止まらず、メキシコ屈指のビーチリゾート・カンクンでしばし休養することにした。

3月のカンクンは、乾季のなかでもベストシーズンを迎え、温暖で過ごしやすい。これなら体調も回復に向かうだろう。早く元気になって、煌めくカリブ海ではしゃぎたい。

現地では、バックパッカーのあいだで有名な日本人宿「ロサスシエテ7」に滞在した(2022年6月に閉業)。部屋は、4つベッドが並んだ女性用ドミトリー。

宿で出会ったメンバーと、さっそく近所のメルカド(市場)に買い出しへ出かけることに。

決めポーズをしてくれた肉屋さん

メルカドで購入した食材をどっさり抱えて宿に戻った。日本人宿で定番の「シェア飯」をみんなで作るのだ。

料理が絶望的に下手くそな私は、料理上手なお兄さんに、包丁の使い方から手取り足取り教わった。旅をしながら花嫁修業までさせてもらえるとは、ありがたい。

包丁の使い方を習得する筆者(右)

人生で初めて、鍋炊きご飯に挑戦。ふっくらツヤツヤで、幸せな香りが漂ってくる。

この日の夕食は、オムライス、ワンタンスープ、揚げワンタン。

オムライスの上にケチャップでハートマークを書き、遠距離恋愛中の彼氏に送った。たまに、こういうかわいいことをしている(自分で言うな)。

ここに滞在している日本人は、一風変わったおもしろい人ばかり。

カンクンの一流レストランで働く尺八演奏家

宿は清潔で快適だし、一緒に過ごすメンバーもすてきな人ばかりで、最高の環境だった。

ところが、私の体調は一向に良くならない。それどころか悪化している。

原因不明の腹痛や微熱に苦しみ、食欲も沸かず、ただベッドの上でぐったりしたまま1週間が過ぎた。

風邪ではなさそう。食あたりか、それとも水が合わないのだろうか……。

私にはひとつ、思い当たる節があった。

「宿疲れかもしれない」

私は元々ひとりでいることが大好きな人間で、ひとり時間がないとダメなタイプ。

だが、中米を旅したこの1ヶ月は安心安全を重視して、日本人経営の日本人宿にかなりの頻度で宿泊していた。

和気あいあいとテーブルを囲んでシェア飯を食べるのも、みんなで深夜まで語り合うのも、本当に楽しい。

一方、節約のためにドミトリー泊が続いたり、日本人ならではのグループ行動が増えたりするうちに、自然とひとり時間が少なくなっていた。

自分でも気付かないうちに、大きなストレスを溜め込んでいたのかもしれない。

正直、宿で厄介な人に遭遇する日もあった。

昨夜も、「ろくに包丁も使えないで、これまでお母さんになにを教わってきたんだ」と、ロサスシエテに長期滞在するおじさんにネチネチ言われたばかり。「余計なお世話や」とブチ切れそうになった。

「ひとり時間を作らないと体調は良くならない」

そう確信した私は、ベリーズ経由でグアテマラのフローレスに向かうことを決めた。
あぁ、カンクンのビーチで遊びたかったなぁ……。

出発の夜、宿のメンバーが総出で見送ってくれた。なんてあったかいんだろう。

私は、同じくベリーズに向かうお兄さんとふたり、夜行バスに乗りこんだ。みんなに会えてよかった。ありがとう、ありがとう!

陸路での国境越えは初めてで、ドキドキする。

国境でメキシコ出国税の390ペソを支払う。世界一周3か国目、ベリーズに入国した。

翌朝8時、バスはベリーズ最大の都市、ベリーズシティに到着。

お兄さんとカフェに入り、マシュマロ入りのホットチョコレートを飲んで、ホッとひと息。ミルキーな甘さが染みる。

店内で、訛りが強い英語が聞こえてきてハッとした。

多くの中南米諸国がスペイン語圏なのに対し、 1981年までイギリスの植民地だったベリーズの公用語は英語。

「国境を通過しただけで言語が変わるなんて!」と興奮する。

午前11時、フローレス行きのバスが1時間遅れでバスターミナルに到着した。ベリーズでスキューバダイビングを楽しむというお兄さんとは、ここでお別れ。

窓が全開の古びたバスに乗り込んだ。滞在時間わずか2時間で、ベリーズシティを出発。

国境で、ベリーズ出国税の15USドルを支払う。
大きなゲートをくぐった先は、グアテマラだ。

国境を抜け、バスはフローレスに向かって走り出した。1日に2度も国境越えをするなんて、初体験だ。

グアテマラ北部ペテン県の県都、フローレス。

ペテン県中央部の巨大な湖、ペテン・イツァ湖に浮かぶ「フローレス島」と、対岸の街「サンタ・エレナ」から構成されている。

出発から約5時間。この陸橋を渡った先が、フローレス島だ。

「ペテン県」って、名前がおもしろい(笑)。

バスのお兄さんに、目星を付けていた「ホテル・オーロラ」という宿で降ろしてもらうよう伝えていた。

ところが、GPSでチェックしていると、その周辺を通り過ぎようとしている。

「お兄さん、私のホテル、この辺じゃない?」
「やべ、忘れてた!」

聞いて良かったわ(笑)。

「君のホテルはここだよ」と彼が指さす建物の前で、無事に下車することができた。

湖畔のホテルで見晴らし抜群!
一目で気に入った。

久々に個室を取った。1泊100ケツ(当時のレートで1450円)。

「あれ、ネット情報だと60ケツだったのに。値上がりした?」と首を傾げた。部屋の設備も、もう少し綺麗なイメージだったんだけどなぁ。

「まあ、雰囲気が良さそうだし、いいか」と思い、ここに泊まることに決めた。

さっそく島内を散策してみよう。

ツーリスト向けのホテルやレストランが建ち並び、島全体にゆったりとした時間が流れている。道行く人の表情も、心なしか穏やかで優しい気がする。

カラフルなコロニアル様式の家々がかわいくて、夢中でシャッターを切った。

島や湖畔の街が好きだ。
水辺が近くにあるだけで、心が満たされるんだよね。

自分の「好き」を言語化できると嬉しくなる。

ペンキ塗りのお兄さん
「ボートツアーに興味ないか~?」と気怠そうに声をかけてくるおっちゃん
キュートな雑貨屋のお姉さん

えっ、道路が水没してるんだけど! サンダルで良かった。

ちゃぷちゃぷ。ひんやりと気持ちがいい。

オタマジャクシのような小さな黒い魚がうようよしている。

泳いでいる人もいる。水自体は綺麗なのかな?

湖畔に建ち並ぶホテル

お腹が空いてきた。そろそろランチにしよう。

観光客に人気のフローレス島は、全体的に物価が高く、レストランのメニュー価格を見るとひるんでしまう。

でも、フローレスでは好きなものを食べて、好きなように過ごそうと決めた。

普段は節約生活だけど、我慢しすぎてストレスになってしまったら、本末転倒だもの。楽しむ時は楽しまなきゃね!

ショッキングピンクの壁がひときわ目を引くレストランを発見。気になって入店した。

色彩豊かなグアテマラレインボーがたまらん〜! 

きゅんきゅんが止まらず、このレストランでランチをすることに決めた。

注文したのは、トマトソースベースのパスタ。うまい!

フローレス島は小さい島なので、40分ほど歩くと一周できた。

宿のスタッフさんがおすすめしてくれたスイーツ屋で、チョコレートケーキを一切れ購入。今晩のデザートにしよう。

夕暮れどき。ピンク、うす紫色、オレンジ……刻一刻と空の色が変化していく。

ペテン・イツァ湖に夕陽が沈む。
絵画のような光景を前に、茫然と立ち尽くした。

夕陽を見つめるポリスマン

昼間は蒸し暑いが、夜は心地よい風が吹き抜けて、一気に涼しくなる。

宿周辺に戻るとWiFiが繋がり、LINEの通知が入った。彼氏だ。

「彼にもこの夕陽を見せてあげたい」

ビデオ通話をかけて目の前の景色を共有し、「今日、無事グアテマラに入国したよ」と報告した。

とりとめのない話をしているうちに、すっかり日が暮れていた。

「で、体調はどう?」

そう聞かれてハッとした。すこぶる元気になっている。やはり、私の勘は当たっていたか。

「自分探しの旅」とかよく言うけれど、実際、旅にその側面はかなりあると思っている。あらゆる環境に身を置いて化学反応を起こすことで、自分という人間をより一層深く理解できるのだ。

心も体も健全な旅をするために、今後は定期的にシングルルームに泊まることにしよう。

フローレスには3泊した。

最終日、滞在していたホテルの向い側に、なんと「ホテル・オーロラ」を発見。どういうこっちゃ(笑)。

「バスのお兄さん、間違っとるやんけ!」とツッコミを入れたくなったが、「宿名を確認する」という基本的な確認を怠った私に落ち度がある。
快適な宿だったし、結果オーライ。

完全に回復した私は、フローレスを拠点に「ティカル遺跡」の観光もしっかり満喫した。

すっかり惚れ込んだフローレス。別れを告げるのは名残惜しいが、あまりゆっくりもしていられない。

次の目的地である古都アンティグアに向けて、荷物をまとめた。



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