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職場の電話はとっても苦手

職場で電話を受けるのが苦手だ。
これは何年務めても変わらなかった。

もともと職種的に事務職ではなかったので、電話を取る機会が少なかった。
事務員さんが慣れた対応をしてくれる。
とても滑らかに対応している年下の女の子を見ては本当にうらやましく思っていた。

職が変わると、電話対応が必要な職場になった。
電話対応が苦手な私は、何歳になっても電話の音がするとドキドキしていた。


電話嫌いは、いつ発動する?

思いだせば、子供の頃、電話は苦手だった。
まだ携帯電話もなく、電話は一家に一台の時代
電話を取るのは、いつも母親の仕事だった。
たまに母が手を離せない時に代わりに電話を取るのだが、モジモジと要領を得ない対応で母親につないでいた。

一人暮らしをするようになったが、自宅の電話は苦手ではない。
電話はすべて自分にかかってくるものであり、私の知り合いか、私が対応可能な要件ばかりなのだから。


じゃあ、なんで職場の電話が苦手なんだろう?


理由はこれだ。
その場にいる他人の存在。
私は、必要以上に他人の目を気にして行動しているんだ。

一人の時に緊張しないのは、他人に見られていないから。失敗しても誰も見ていない、その安心感があるから。

他人がいる中での電話対応は
「聞かれている」
「変な対応はできない」
と過剰に緊張していたんだ。

なぜ緊張するのか?
それは
「より完璧に対応しないと」
「ミスはできない」
「変な対応をすれば人に笑われる」
と勝手に思っていたからだ。


自意識過剰なのか?

でも実際、静かな職場では他人の電話対応の内容は、ある程度聞こえてくる。
「この人は上手だな」
「この人は対応が苦手なんだな」
と、対応の仕方がわかる。
私も聞いてしまうという事は、みんなも多かれ少なかれ聞いているんだろう。

「他人に会話を聞かれている」と意識すると次第に緊張する。
周囲の人が多ければ多いほど、私の緊張は増大する。
人の目を過剰に気にしすぎだと言われても、緊張してしまう。

緊張をしすぎると部署の名前すら飛んでしまう。
「はい、○○です」
の○○が出てこなくて、口ごもる。

ど忘れすると、あわてて思い出そうとしても全然思い出せない。
だからさらに焦る。

相手の名前も聴き取れなかったり、忘れる事も多々あった。
最初は覚えていても、電話を取り次ぐ際に、すっかり忘れている。
全く、使えない私。
社会人として、どうなのよ。
だから「次はちゃんとやらねば」と、自分に呪縛をかけてしまう。

電話が鳴るたびに
だれか取って!
私が取らなくていいように!
そう願ってばかりいた。

職場に慣れさえすれば、苦にならないだろうと思ったが、何年たっても、いや、結局50を過ぎたこの年まで、電話嫌いは改善されなかった。

でも、いくらかは軽減できた。

生きていく知恵ではないが、少しでも苦にならないような工夫をした。

最低限の仕事をするために

それは、まず部署の名前を付箋で目につくところに貼ること。
普段は大丈夫でも、ど忘れした時のため。
パニクった時は、そのメモを読めば大丈夫という
安心材料を作っておいた。
備えあれば憂いなし。
緊張してど忘れする人には、付箋メモはオススメ。

次は、相手の名前を忘れないように、すぐにメモを取ること。
最初のうちは覚えていても、取り次ぐころには、すっかり忘れている。
年齢を重ねるにつれ、短期記憶が怠け始め、覚えられない。自分の記憶ほどあやふやなものはない、という自身すらある。
なので、とにかく殴り書きでメモを取る。

それでも聞き取れなかったり会社名しか書きとれなかったり、完璧にはいかない。
自分は本当にポンコツだな~~と実感する瞬間。

でも仕方ないので、取り次ぐ際に「すみません、会社名しか聞けませんでした」
と言いながら電話を取り次いでしのいでいた。

今、思い出しても全く使えないやつだと思う。
でも、まぁなんとかなった。

「申し訳ございませんが、もう一度お名前をお伺いしてもよろしいですか?」と聞けるようになったのは、随分あとになってからの事。

メンタルの持ち方

落ち着いて周りを見渡すと、電話の受け答えをそつなくこなす人は、ごくわずかだと思った。
部署にもよるだろうが、私のいた場所では、受け答えが上手な人は、ほんの1~2割程度。
多かれ少なかれ、みんな電話が苦手そうだった。
明らかに電話を避けている人、誰か取ってくれるだろうと見向きもしない人、電話をとっても苦手そうにモジモジしている人、そんな人が自分の他にたくさんいた。

あ、仲間がたくさんいる。
苦手なのは、私だけじゃないんだ。

そう思うと、少しは気が楽になった。
みんな何かしら電話の取次ぎ、嫌いなんだな、苦手なんだなって思った。

周りの人も電話が苦手だと感じてから、自分が電話を取る時の気持ちが、少し楽になった。
もちろん、緊張はするけれども、少し慣れてきた。

最初から取る気のない人に比べると、しどろもどろでも電話に出てる私はちょっとえらいって。
頑張ってるんだから、失敗してもしょうがないって。

電話の相手が知り合いになれば、電話は緊張しなくなる。
職場にいる期間が長くなると、電話の相手も顔なじみが増えるので、取次ぎがスムーズになる。
声も覚えるから、名前も間違えなくてすむ。
やはり継続は力なり。


それともう一つ。
みんなも苦手だって思うと、自分が完璧な対応をしなくても「あいつダメじゃん」とは思われないだろうなって。
せいぜい「緊張してるな?」って思われるぐらい。
だって、みんなも電話嫌いで緊張するんだからさ。

そう勝手に多くの人を同士にして安心していた。
もちろん完璧さんの前では「こいつダメだな」って思われていたと思う。

でもできる人がすごいのよ、あなたの方が普通じゃないのよ、あなたがエキスパートなのよ、だから私は普通なのよ。
そう自分に言い聞かせることで、変なプレッシャーを余分に感じないようにした。


どれだけ良く見られたいんだか…

一人の時にはできていることが、他人の前だと上手くできない。
これは、単純に人の目を気にしているからだなぁ。
本当はできることなのにね。

過度に他人に良く見せようと思う自分がいるから、こんなにしどろもどろになる。
どれだけ他人によく見られたいんだ?自分。

ま、それがわかっていても、なかなか他人の目を気にせずに、一人の時と同様の対応ができるかって言われると、難しい。
何度、自分に言い聞かせても、緊張していたし。

大丈夫って自分を安心させる材料を一つずつ積み重ねて、ミスしても命までは取られない、たかが電話の取つぎなんだから、ぐらいの気持ちを植え付け続け、慣れるのを待つしかないんだよな。

緊張しづらい雰囲気づくり

へんな対応をしてしまったら「おつかれ!」とか、気軽に声をかけてもらえる環境だと緊張を減らせると思うんだけどな。
みんな腹の中で「失敗したな~」とか思っているのに、無反応で静まりかえる職場。

非常に気まずい。

おしゃべりばかりも困ったものだが、ある程度、会話が飛び交う職場の雰囲気の方がいいんだけど。

失敗しても「どんまい」って笑ってくれるような。
そんな職場だと、私のような緊張しまくりの人たちでも、あまりプレッシャーを感じずに電話を受け取れるんだろうけどな。

せめて、近くの席の人にだけには、そんな対応をしようと思いながら働いていた。
せめてアイコンタクトだけでも取るようにして「お疲れさま」を伝えていた。
そうすると、私が失敗した時にも無視ではなく「おつかれ」が返ってくるので、緊張が減るようになってきた。


「緊張しない」ようにする事はできなかったけど、「緊張して失敗しても良い」雰囲気を作ったり、「緊張するのが自分の性質」と開き直ることで、心は軽くなったと思う。


そんな事を繰り返しながら、20数年なんとかやってこれた。
でも、やっぱり電話は苦手だな。
職場の電話は、得意な人にお任せしたいのが本音。

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