犯人

前に一度、昼しか食べないダイエットをしたことがある。

いただいたお菓子は朝起きたら食べようと楽しみにして眠りにつくのだ。
ワクワクして寝れたもんじゃなかったが、お風呂上がりに体重を測定し、1gでも減っていると、今すぐ食べたい欲望も我慢できた。

どれくらい続けた頃だろうか。

確かに昨日の夜
「明日たーべよ!」
とテーブルに置いた饅頭が見当たらない。

どこだ?どこへいった?
深夜帰宅した夫が食いやがったか?
子どもらは先に寝かしつけてたから、饅頭の存在を知るはずがない。

主人に確認するも
「知らないよ?自分が食べたんじゃないの?」
と言われる。
そんなはずはない。わたしは食べない。

饅頭だけ食べる泥棒?いや、まさかな…
じゃあ、やっぱり子どもが食べたのかな?
夢か?あの饅頭は夢か?

どうにも腑に落ちないまんま、数日が経った。

すると今度は冷凍庫の奥底に隠していたピノファミリーパックが減っている。

これはもう、完全に誰かが食ってやがる!とわたしの怒りは頂点に達し
「ピノ知らん?わたしのピノ!食べた?アーモンド味の数を数えてたから勘違いなんかじゃない!まじでない!!!」
と容疑者として夫を責めたてた。

すると夫は
「平屋ちゃんが食べてたよ」
と言うではないか。

なんだこいつ、ぬけぬけと嘘をつきやがる

「いつよ!そんなはずあるか!わたしは食べてない!!!」
と大声で否定するわたしに、夫は続けてこう言った。

「この間、1時くらいかな?帰ってきて、ご飯食べてたら、平屋ちゃんが起きてきて、冷凍庫開けてアイス出して食べてたよ。オレ、こんな時間に食べていいの?って聞いたじゃん。平屋ちゃん、オレの前に座ってさ、箱持ってさ、アイス食べて、箱片付けてまた寝に行ったでしょ?」

はぁ?

渾身の、はぁ?である。

身に覚えがない。全くない。
わたしは何か食べたら歯磨きしないと気が済まないのに、深夜に起きてピノ食べて歯磨きせずに寝るとか、絶対にない。
わたしはもう一度、夫に
「わたしは、食べてないよ」
と言った。

夫は曇りなきまなこでわたしをまっすぐ見つめ
「食べてたよ。平屋ちゃんが自分で冷凍庫から出して食べてたよ。美味しい?って聞いたら、美味しいって返事してたし、何個か食べたらゴミ捨てて、自分で冷凍庫に片付けたよ」
と言った。

わたしは無意識のうちに深夜に起きて、饅頭やアイスを食べていたのか?しかも会話までかわして?

病気じゃねーか。

ショックのあまり呆然とするわたしに、夫が
「美味しい美味しいってむしゃむしゃ食べてたよ」
と笑って畳み掛けてきた。

ぎゃふんだ。




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