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読書記録 「医療の外れで」*木村映里

医療現場からは長いこと離れてしまっているが、
私は看護師である。
図書館がまた閲覧と貸出ができるようになったので、数冊借りてきて、雑多なジャンルの本を読み漁っている。
この本は新刊コーナーに鮮やかな色の表紙で、 
何だか手に取って見てみて、と主張していて、
パラパラとページをめくって借りてきた本だ。

今の自分の状況下において、また病棟勤務になることは選ばないだろう。
それでも、今現在最前線で働いている人達の書いた文章は、様々な思いを抱えて患者さんと向き合った日々を重ねつつも、
あるある、という、懐かしさだけでない、
こんな的確な表現があったのか、と
再認識できるので、興味深く、
見かけるとつい、手に取ってしまう。
この本を読んで、
こうした言葉を世に送り出してくれる
貴重な代弁者が現れたと思った。
まだ若く、繊細で思慮深く、
他者に寄り添う木村さんのお人柄が滲みつつも、
きっと論文や看護研究で鍛えられてきたのであろう、明確な文章。
一般の人もさることながら、医療従事者にこそ、
読んで欲しい本だと感じた。

ジェンダーとか、マイノリティとか、
世の中にこうした言葉すら出てこなかった時代を過ごしてきた年代の私は、
今の時代にはこうした背景を知った上での看護が必要なのだと痛感したと同時に、
年々、医療現場、看護師に求められるものが
どんどん膨らんでいく気もしている。
それは、教育現場での先生という立場に求められるものが多岐にわたり、
疲弊していくニュースに通ずるようにも思うし、
他の職業に対してもそうかもしれない。

社会的に弱い立場や、
少数派と捉えられがちな人々のことを知ることは機会がないとなかなか難しい。
ただ、自分ごととなると人の対応は一変する。
自分もまた、どういった状況になるか
予測できないこともある。
今回手に取ってこの本から学べたことは
とても貴重だった。

人と接する全ての仕事において、
相手の置かれる状況に寄り添いながらも、
携わる側が安心して仕事ができる環境を
一人一人のサポートができる世の中を切に願う、
そんな読後感だった。

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