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第325号『あと少しをとりこぼさないために』

よくボクサーやアスリートが日常的に走る姿を目にすることがあります。

これは現実でもそうですし、漫画やアニメや映画の中でもそうです。みんながみんなそれ(走る行為)をルーチンとして義務付けられているかのように走っています。

「毎日毎日、よく日課のように走れるもんだなぁ」

私自身は走ることを日課としているわけでもありませんし、日常的にこれといった運動をしているわけでもありません。なので割といつも(そういう走っている人を見かけても)のん気に眺めながらまるで他人事のように気にもしません。

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先日、アニメ『テラフォーマーズ』を2クール分全26話を観返していて、こんなやり取りがあってふと目に留まりました。

元ボクサーである鬼塚慶次がトレーニングとして毎日毎日欠かさず走っている姿を見た女性が彼にこう尋ねます。

「もうボクサーでも無いのになんでそんなに毎日走っているの?」

照れながらも鬼塚慶次は答えます。

「自分がボクサーだった時に試合をやってていつも思い出すんだ。全力で闘ってギリギリまで追い詰められた時に、あとほんの少しだけ力が欲しい・ほんの少しだけ力を振り絞ることができればって、だからその、あとほんの少しの力を蓄えておくために走ってるんだよ」

完全に今さらですが、見ていて頭の中でガラスが割れる音がしました。

「そうか、だから彼は走るのか、そのあと少しをとりこぼさないために」

元々大好きなキャラクターではあったのですが、ますます鬼塚慶次という男のことが好きになりました。

そして同時に理解しました。

きっと鬼塚慶次は不安なんです。負けたことがあるから。その敗北を忘れてないから。二度とあんな思いはしたくないと心に刻んでいるから。だからその隙間を埋めるように走るんだと理解しました。

火星での闘いの最中に、金玉を発勁で潰されても絶対に女は殴らないという男の中の男の強さを心で理解しました。

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たぶん、みなさんも特に意図的でなくとも毎日欠かさずやっていることってあると思います。たぶんこの場合は歯を磨くとか寝るとかご飯を食べるとかのことではなくて、どちらかというと割と真面目な努力に近い話です。

毎日やってはいるけれど、ふと考えて「なんでこんなことやってるんだろう?」って思ったことって無いですか?

それは絵を描くことだったり、映画観たりドラマ観たり、漫画読んだり、自分で小説書いてみたり、ブログに日記のようなモノを書き続けていたり。

まさにブログなんかに、ドラマや映画の感想を書く行為に近しいのかもしれませんね。

特別な誰かに宛てたメッセージというわけでもなく、なんとなくたまに書いているだけのブログって無いですか?

なんならツイッターへの投稿だってそれにあたるのかもしれませんね。

「別に誰かに褒めて欲しいわけでもないのに」

「よく考えたらなんでこんなことやってるんだろう」

そんな時はどうか「もういいや、やーめた」と思わずに、いつか・どこか・誰か、にきっと届く、あと少しだけ続ければ届くのかもしれないと思って続けてみてください。

そのほんの少しの積み重ねが何かを実現することがあるんだと思います。

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さて、今回なんでこんな感じのことを書いているのか?ってことには(お察しの通り)理由があります。

なぜ今さら『テラフォーマーズ』を全26話観返すことになったのか?

なぜ今さら鬼塚慶次のセリフや生き様にハッとさせられたのか?

我ながらちょっと動揺した話になります。

相手が存在するエピソードとなりますので、ここからは後半部分に突入してしまうことをご容赦ください。

あと少しをとりこぼさないために

先日、ある大手ゲームメーカーの若いスタッフとオンライン飲み会を実施しました。20代前半の男女3人です。(ちょっとした目的があってオンライン飲み会という名の交流会をやることになったのでした)

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