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kaiko-メイキング

月刊!スピリッツ2024年3月号(1月26日金曜日)に掲載されました。


こちらに、著作「kaiko」(秋山視点)が掲載されております。

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kaiko_ビッコミ

なんかいい感じだったらいいねでも押しておいてください

まえがき

この記事ではkaiko制作時の色々な色々を書いていきます。あまり面白い内容にはならないかもしれませんが、kaikoを読んで頂いた方、漫画が好きな方には興味深いものがあるのではと思います。

主に制作の手法などを軸に書いていこうと思いますが、内容についても少し触れたりしようと思うので、作者は黙っとけ科の方はその辺をどうにかこうにかしてください!

創作者が裏側を晒すのはどうなんだ?ダサくないか?なんかこう、作品だけ出してしれっとしてる奴の方がカッコいいんじゃないか?あと自分のこと創作者ってなんかカッコつけてる感じでカッコ悪いんじゃないか?

敵を作る作者コメントダメだよ


制作スケジュール

kaikoの制作工程とそのスケジュールを一応メモっておいたので、書いていきます。その瞬間の僕の焦りも鮮明に覚えている内に書き留めておこうと思います。

kaiko-進捗

①プロット(時期不明(9月頃))

まずは「どういった作品を描くか」「何ページくらいにするか」「全体の流れ」をゆるく決めていきます。実際に制作している段階によってその都度変化はしていきますので、ガチガチにしない方が進めやすいと思っています。

この辺は基本的に紙に書いているので、一部抜粋しておきます。


第一幕
問題:やりたくないことをしている。嘘の自分を演じている。
目的:本当の自分になりたい。思ったことを正直に言いたい。
インシデント:同棲しているビジネスパートナー。(恋愛感情?)
主人公と男をなるべく対比関係にしておく。

第二幕
インシデント:男に対して正直な気持ちを言う。ラブホテルへ向かう。(なんか違った)
主人公:自分のままでいられる人に認められた。(憧憬や羨望)

第三幕
インシデント:配信で本音を言う。VTuberである自分自身との対話。
主人公:嘘も本当もどちらも自分自身だと認めてあげることで、他者も認めることが出来る。
インシデント:主人公の変化を見て男も変化する。

エンディング
主人公:序盤との主人公の気持ちの変化と共に、外見も変化させる。


話の流れはシド・フィールドの「三幕構成」にゆるく沿って考えています。こちらの本です。

映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと シド・フィールドの脚本術

「インシデント」は、物語が進む「きっかけ」のようなものだと理解しています。

他にも読切をつくる上で必要な要素を書き出し、壁に貼り付けています。自分の課題は「キャラクター性の薄さ」なので、今回はそこを重点的に考えました。

キャラクターをつくる、というのがとても難しくて、全く分かりません。僕のように「何処にでもある普通の日常」を描こうと思うと「何処にでもいる人」を描くことになるので、キャラがどうしても薄くなってしまいます。

映画やら本やらを見て僕が一応の結論として出しているのは「その人間が抱えている問題」と「その人間の目的」を序盤に示すことで、主人公を「物語のキャラクター」として読みやすくなるのではないかなと考えました。

あとは物語の内容です。僕は現代社会の時世を軸に、それに対して自分が考えていることや思うことを描くのが作品だと思っている(そういう作品が好き)ので、まずは「過去と今」の違いを知ることからだと思っています。そこに向き合いどう生きていくのか、むしろ反抗するのか、それはそれぞれの人間によって違うとは思いますが、一定の「主張」がまずあって、それこそがその人らしさ、いわゆる作家性というものに繋がる(のかは分かりませんが)、そんな気がしています。(じゃあそれが今作で自分が出来ていたかどうか、考え出すと怖くなるので今は辞めておきます)

あとは演出的な面ですが、モチーフとして「VTuber」を選んだのは、本当の自分と偽物の自分というテーマにぴったり当てはまる上、今っぽさがあるから丁度良いと思い決めました。これはプロットの段階で決まりました。

タイトルである「kaiko」はダブルミーニング的になっていて、成長していく主人公「カイコ」と、脱皮し、繭を作り、羽化していく「蚕」を重ねたり、懐古、回顧、など、色々捉えられそうなので、決めました。これはプロットの段階ではなく、次のネームの段階で考えたものです。

あとこれは小ネタ的ですが、蚕という生き物はそもそも「クワコ」という生物で、人間が数千年かけて家畜化した昆虫らしいです。今では蚕に野生で生きる力は無く、全ての蚕は人間の手でしか生存できないそうです。そうした「人間の手によって生み出された生物」はVTuberと重なる部分があるなと思いました。

これも僕のただの好みなのですが、VTuber「kaiko」の自己紹介「怪物ランドのプリンセス〜!怪子ちゃんなのら〜!どし〜!」というのは、大好きな漫画「怪物くん」のヒロイン、怪子ちゃんからとっています。怪子ちゃんも前髪が片方だけ長く、目が隠れていて、美味しいものを食べると「ドシ〜!」と絶叫します。語尾にもキャラっぽくなにか付けたくて、好きな漫画の「まことちゃん」の語尾からとりました。なのら〜。


②ネーム(時期不明(10〜11月頃))

何度かネームの修正をしましたが、割とあっさり通ってしまって僕は超超超焦っていました。背景の主人公の部屋に3DCGを使用する予定だったからです。その準備が全く出来ていないのにも関わらず、僕は高校の同級生と朝と昼と夜だけ麻雀をしていました。おしまいです。

担当編集の方に色々アドバイスを頂き、自分でも割と面白いものが出来た気がしていたので、早く描きたい!という思いがあり、勢いに任せて担当さんにも早く描けますアピールをしてしまいました。正直ちょっとカッコつけていました。僕は焦りながらとりあえずUnreal Engine5を起動していました。

ネームの段階ではまだキャラクターデザインもキャラの名前も何も決まっていなくて、ほぼ棒人間のような酷い絵のネームです。ここから作業がデジタルになります。


これでもまだマシな方です。

一番ひどいところはこんな感じです。

皆さんこんな感じですよね(震)

とはいえ、ネームはこんな調子なので描くのは早かったです。ここまでの作業で大変な部分は全く無く、早く絵を描きたい気持ちでいっぱいです。

どんどん担当さんに見せて意見が欲しいので、とにかく早く描くことを意識していました。

3DCGの作業も同時並行で進めていましたが、このままでは間に合わないと思い、同級生Pさんに土下座し、床を舐め、3DCGの作業の一部(主に小物のモデリング)を手伝ってもらうことにしました。二人で同時並行で勉強しながらやるのは結構良かったです。直ぐに相談しあえるのが良かったです。以前使っていたmacをあげたので、効率が良くてとても良かったです。無限に手伝って欲しいです。今では僕よりモデリングスピードが早く、(こいつもう普通に就職出来るのでは…?)という疑惑も浮上、なのでこの記事を彼に見てほしくないです。バレないで!


③原稿準備(11月16日)

こちらはコマ割りやセリフ入れなどの原稿の準備です。描く前の準備の段階でも先に終わらせようと思い、同時並行で絵も入れられるところは入れていきました。ただ、僕の場合、背景がとても多いので、先に描けるページもあまり無く、残すは3DCGの部屋を錬成することとなりました。

担当さんに告げられた締切は1月9日。年末までには終わらせるぞという自己イメージの元、12月を迎えることになります。

作画の前にキャラデザをある程度決めておきました。担当さんに送ったものがこちらです。

×しているのが初期案。アキくんは作画の段階で全然違う見た目に。


④背景準備(12月10日)

3DCGがやっと完成しました。使用したソフトはBlender、Adobe Substance 3D Painter、Unreal Engine5です。殆ど初めてのソフトだったので、やりながら覚える、という、事前準備や台本まみれで生きてきた私にとって、最悪の気分での作業でした。勿論、楽しくはありましたが、あの不安な気持ちの状態での作業は辛かったです。いや、辛くはないんですが、すげー嫌だったです。

結局アドリブで省けるところは省き、そのとき最優先で出来ることを上手くアレンジしつつ良い感じに見えるように作りました。もっと完璧に作りたい気持ちはありましたが、作画にかけられる時間が刻一刻と減少し、焦燥と憤懣であのときはおかしかったです。何故ならあまり記憶がないです。


煙草や灰皿は一応キャラと関わりがあるので、自作です。本は全て元ネタがあるよ〜!
モニターや本、額やスピーカーなどは自作で、CDや机、オーディオ器系などは配布アセットです。
手前右下に見えるゴミ袋は頂いたアセットです。すげえ。

UEで配布されているアセットと自作のアセットを混ぜて作りました。あとは頂いたアセットも少しだけあります。

他にも今作はAIを使用していて、ポスター等の素材を作成しています。

それぞれ元ネタはあります。分かるかな〜!?

AIで画像を出力→Photoshopでテキスト等の追加→汚れのテクスチャを貼り付け、という手順です。こちらはホラー映画風ポスターです。

3DCG、AIについて話すと長くなり主旨がズレそうなので、この辺にします。

これらの素材を2階調(モノクロ)にし、線を足し作画していきます。

以下、原稿完成までの流れです。


①原稿準備

コマ割りと吹き出し&セリフ、ネームを下に配置します。あとセリフの「ッ」「っ」は意識的に使い分けています。

②キャラ作画&背景配置

髪等のベタは後回しでキャラを作画しました。マスク機能で背景をくり抜いています。

③背景処理

これだけで漫画っぽーい

④背景作画

かけあみの素材と線を足したり引いたりです。

⑤最終処理

グレーを塗ったりします。


先に全てのページを作画してから、最後にまとめてグレーを塗っていきました。素材は殆どカラーで作っているのに、わざわざ白黒にしているのは無駄な作業をしている気がして、気がして、気がしています。漫画も何かこう、変化していって欲しいです。

グレーを塗る際、先に「塗り分け」という作業をしておくと、選択範囲がとりやすくなり楽なので、同級生Pさんに手伝ってもらいました。少しだけRさんにも手伝って貰いましたが、結局ほとんど自分で上から描き直すことになりました。(ちゃんとお金は払ったよ)

人物と背景を塗り分けておくと後で凄く楽。
Pさんは1コマ目左にいるモブキャラとして登場させたよ。結構似てるかも。あとこの場所は大阪です。分かる人には分かる!

あまり納得のいっていない絵もいくつかあって、凄く不服です。もっと絵が上手くなりたいです。雑誌に掲載されているどの漫画よりも自分の絵が一番上手くないと嫌だな〜と思います。かっこいい絵を描けるように精進します。


⑤完成(1月9日)

最終調整をし、日付が回った夜中に担当さんにデータを送信しました。年末年始の記憶が全くないです。気がつけば世間は2024年になっていました。僕だけ年を越せず、2023年に残ることになってしまいましたが、今年も頑張って沢山描いていきたいです。

Photoshopで最終的にモノクロ2階調にします。グレーのまま見れるといいのだけれど。

作画に関してはほぼ1ヶ月で40p描きあげました。このときの記憶がないです。漫画家の人ってこれを週刊とか月刊でやってるの気持ちわり〜!アシスタントがいるとはいえ、異常ですよ。気持ち悪。

あと気に入ってるコマだけ置いておこうと思います。

次作はもッともッともッと良いものが作れるように頑張ります。


あとがき

上手く描けないページが多く、精神状態が地球と同化し宇宙の歴史全てをこの身体に宿していたせいか年末年始の記憶が全く無いので、知らない間に年が変わっていました。今年はたくさん描いていきたいです。

ビッコミの最後のページにあるこちら、少しでもぶっ刺さった方はよろしくお願いいたします!

今作「kaiko」とnote「kaiko-メイキング」を読んでいただいた方、ありがとうございました!

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