見出し画像

あなたの世界に加わる私

わいわいと、がやがやと、がしゃがしゃと...
世界は雑音に紛れている。
雑音ばかりの中から特定の音を選んで聞いている。

私が好きな音は雨の音だ。
ポツポツと雑音の中に響く雨音が波紋で辺りを静まらせていく。何度も何粒も。

初めて彼と出会ったのは雑音ばかりの飲み会だった。
何を話せばいいのかわからない。
うるさいのは苦手だし、音に潰されて声が聞こえない。
何て言ったのって聞こえなくて笑顔だけを浮かべる。
トイレに行くときに手にしたスマートフォンには今時古い、有線のイヤホンがついていた。
この中では雨が降っている。

「神崎さんて何聞くの?」

隣に立ったのは酒臭い営業。
ああ、こういう人こそ私のことをつまらない人とか、何話せばいいのかわからないって思うんだろうな。

「最近はVANIMAとか...」

とりあえず有名どころを伝えてみた。
たまに聞く。元気な歌。あー俺も好きとか返ってくるかと思っていた。

「じゃあその前は?」
「え...あ、雨の音。」

思わず本音が出てしまった。
広がらない話題。また、会話が途切れてしまう怖さ。
お喋りは理解や同調があるから楽しいのであって、それがなければ孤独を感じる怖いものだと思う。

「俺はねー風に揺れる旗の音が好き」
「え?」
「バータバタバタバター!!って激しいやつ」
「なんでそれなんですか??」

ヤマザキさんは笑った。
「目立つから」

先に空いたトイレに行き、若干騒音が静まる。
更に水の音で私の空間は孤立する。

この音、目立つなあ。

かっぱを干していた、知らない人の洗濯物から着想

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?