０.まずバディ・ヒールドとは

バディ・ヒールドという存在はキングス時代から知ったけど、その選手に注目するようになったのは、まず未だに賛否両論ありつつ、当事者チームのファンたちの中にはWIN-WINと言ってはばからない（自分も含め）大トレードによって。
当時のトレード内容は

この時はハリバートンをあまりよく知らなかったし、ペイサーズが再建期に入ったとは言え、主力だったサボニスと有能なロールプレイヤーだったホリデーやラムを出して、あまりいい印象のなかったヒールドとおそらくすぐ解雇するだろうトンプソンを獲得した事に疑問を持っていた。
まあハリバートンについては、以降言うまでもないので、この話はここで終わりだけど、ペイサーズに来てからヒールドの素晴らしいシューターっぷりやハリバートンとの仲の良さで、ヒールドはバニキとして物凄くINDファンにも愛されている存在となっている。

ただ延長契約も打診された中で、現在一旦拒否の意思を示し、トレードの可能性も出てる彼に関して、ここで話そうとしているのは彼の素晴らしさではなく、あえて彼を出した方がいいという考えがある部分。
あくまでもペイサーズというチームが今後優勝してもらう為に、ヒールドを出した方がいいという、自分にとってもジレンマに満ちた話を書きます。

１．バディ・ヒールドの特性

まず今のペイサーズにおいて、ヒールドの役割はまず言うまでもないシューター。昨季はリーグ屈指のシューターとして活躍している。
ただドリブルについてはハリバートンの父親にも突っ込まれているように、下手ではないが触り過ぎて碌なことにならない場面が多く、評価は低め。
オフボールの中ではDFは決して良くもなく、リバウンドには頑張ってくれるけど、サイズ(193㎝)もあってそこまで強くはない。

２．ポジションの曖昧さ

元々のナチュラルポジションはSGだが、現在チームには攻守バランスのいいブルース・ブラウンが加入し、彼がコンボガードという事もありセカンダリー・ハンドラーの役割を担う事もあって、SFを務めている。
開幕当初はスターターのSFにはベネディクト・マスリンが起用されていたが、彼自身の迷いやプレー相性の悪さから、ヒールドがスターターに上がった。
事実ハリバートンとの相性の良さなど、ネットレーティングも良くなった為12/1現在スターターのSFとして定着している。

が、ここでチームの一つの課題として守備力の低さが挙げられる。
攻撃力はリーグトップだが、守備力はリーグ最低レベルと言う極端なチーム構成なのが今年のインディアナ・ペイサーズの特徴。
そしてそこには色んな要素が関わっているけど、スターターには守備力は水準以上のマイルズ・ターナーがいながら、次いでいいのがブルース・ブラウン、それ以外のハリバートン、オビ・トッピン、バディ・ヒールドはそれぞれ良くて下の上といったレベルで、極端なトランジションゲームを仕掛ける為、まさにラン＆ガンを地で行っている状況。
ただそのスタイルによって不安定な戦いを繰り返し、たまたまインシーズン・トーナメントでは全勝しているが、純粋なリーグでは負け越している状況。
そしてその負けには下位チームからの取りこぼしの多さも存在する。

守備力改善を考えるなら、現在セカンドユニットの一角にいるアーロン・ニスミスを入れた方がいいと考えるが、前述の通りバディ・ヒールドが最大限に力を発揮するためにはハリバートンと並べた方がよく、アンドリュー・ネムハードやTJ・マッコネルと並べた時のデータはあまり良くない。
つまりバランスを意識したロスターにすると、(そうはならないが)ヒールドが若干あぶれる形になるという事になる。

３．タイリース・ハリバートンの存在

そして次の要因が、もはや盟友と言って過言ではないはずのハリバートン。

今彼はチームのゲームメーカーでありながら、チーム１のスコアラーとなっている。これはチームの主軸として、特にスコアラーとして語られるべきヒールドやトッピン、ターナーが得点面でのファーストオプションになってない事を示唆することになる。
ただ、ここでの問題はセカンドオプションの得点力の相対的な低さではなく、プレー内での役割問題の話に繋がる。

試合の流れの中で、ネムハードとハリバートンの組み合わせが増えてきたけど、この時のハリバートンはプレーメークをネムハードに任せ、自身がシューターになる事が多い。
そしてこの時ヒールドは外れる場合が多い。
もちろん、このことでチームとしての必要性が低くなるわけではないけど、前述で書いたポジションでマスリンがSGに戻った中でSGのポジションの重複が起こり、今の守備力問題も兼ねると、ポジションバランスが悪くなる。

４．チームとしてのサイズバランス

上の図が今のロスターをポジション別に分けた図。
最近のポジションレスの中で、あまり大きな意味をなさないだろうけど、本来SGのヒールドがSFにいる状況でバランスの偏りが見えてくる。
(マスリンは今季SF起用予定だった訳だけど)

もちろん試合の流れの中でスモールラインナップなどもあるから、あまり深い意味はないのだけど、ここで課題なのはポジションというよりサイズ的なマッチアップの問題。
ペイサーズのマッチアップだと、PGからSFまでに２mを越えた選手は２wayのケンダル・ブラウンだけになる。
攻撃特化にしてもいいけど、なかなか攻撃特化のチームが優勝に繋がりにくいのは過去が証明している。
ニスミスをスターターに置けても、まだウォーカーが成長過程の為、彼をPF起用する場面もあり、バランスよく配置する場合にSFの手駒は少なくなってしまう。

５．サラリー問題

ヒールドは現在19.2ｍ
ブルース・ブラウンが特殊な理由での契約で来年がチームオプションとは言え、23ｍ。
ハリバートンがマックス契約となり、来年から35.5ｍとサラリーは跳ね上がる。トッピンにも再契約の話は行くだろうし、ターナーにも来年再契約かFAかトレードの可能性も今回は本気で出てくる。
上記の色んな状況が重なっている中で、ヒールドを好条件で再契約しては他ポジションの補強にも差し支えるという事実もある。
※おそらくこれを踏まえた再契約内容だからヒールドは断ったと考える。

フォワードをはじめ、ハリバートンと並ぶかファーストオプションとなれるスコアラー不在や守備力問題など、優勝に繋げる形にしていくには正直ヒールドに拘る比重は下げていく必要が出て来ると考えるのが今後のペイサーズ。
来年のドラフトもあるのでルーキー契約でいい選手を取れればいいけど、そこまでにも有力選手は取っておきたい現状。
色々な側面を考えれば、ヒールドを出すことを考えてもいいのかも知れないというのが僕の考え。

実際当面の主力とルーキーがうまく重なっているPGやSG、PFはまずまず問題なく、Cにしてもジェイレン・スミスが覚醒した感はある。（直近の負傷の影響は気になるが）出来ればハリバートンの起用法を考えるともう一人くらいプレーメーカータイプのPGは欲しい所だけどね。

ヒールドは間違いなく愛すべき存在だけど、上に上がっていくためには、今の状況のヒールドは手放すべきという大きなジレンマを抱えている。
今後どのような動きに行くのか注目度は高い。