第31回 小熊猫的少女


少女とはなんの関係もないと思われるかもしれないが、ここでレッサーパンダ愛を語らせてほしい。何を隠そう私はレッサーパンダ・マニアである。

今でこそ、立つレッサーパンダ・風太くんの人気もあってレッサーパンダもだいぶ認知度を上げたが、かつては「レッサーパンダって何?パンダなの?」くらいであった。ジャイアントパンダが圧倒的な人気を得ているのに対し、同じパンダと名がついているにもかかわらず、動物園でも知る人ぞ知る存在であったのだ。
それに加えてアニメの「あらいぐまラスカル」の影響がある。ラスカルは本来アライグマなのでその毛色は灰色であるはずなのだが、それではあまりにも絵的に地味だったからなのか、アニメでは明るい茶色とオレンジの間のような色に描かれていた。これが決定的にレッサーパンダとの混同を招く。実はアニメのラスカルの毛色はアライグマの毛色とは全くと言っていいほど異なっている。全体的な色だけでなく配色も違う。アライグマの腹は白くない。体の他の部分と同様灰色だ。
一般的にレッサーパンダとして売られているぬいぐるみのほとんどが、このラスカルをモデルにしたと思われる色になっているため腹の色が白いが、レッサーパンダの腹は黒いのだ。アライグマとレッサーパンダなんて、尻尾がしましまであることくらいしか類似点はないのだ。声を大にして言っておくが、よく見比べてほしい、全然違うから。

レッサーパンダはレッドデータブックにも載っている絶滅危惧種である。主な生息地である四川省では近年だいぶ数が少なくなっているそうだが、ここ日本では動物園での繁殖が成功している例が多い。
長野県にある茶臼山動物園でも毎年のようにレッサーパンダの双子が生まれており、とうとうレッサーパンダ舎まで建設されている。名物の肩乗りレッサーパンダもいて、飼育員さんの肩に乗って登場して触らせてくれた。全国のレッサーパンダ・マニアの垂涎の的だったが、残念ながらそのロンくんは高齢のためこの3月で引退となってしまった。
レッサーパンダの可愛らしさというのは、その豊かな毛皮に包まれたふくふくの姿にある。決してアライグマファンを敵に回すつもりはないのだが、アライグマの手が物を掴みやすいようにネズミや猿のような細く毛のない手であるのに対し、レッサーパンダの手はぶっといあんよと言っていいような分厚い毛に覆われたむくむくの前足である。なにからなにまでまるでぬいぐるみのようなその愛らしさは、元々は肉食獣であったとは思えないほどであり、その辺りが猫とも共通の錯覚を起こさせる。どちらも本気を出されれば命の危険を覚えるような危険な動物であるのにもかかわらず、なんとも愛らしい外見につい騙されてしまうのである。

少女はよく猫に化ける。いや、猫が少女に化けるのか。猫耳に尻尾をつけて鈴の付いた首輪をすれば否応なく誰でも可愛くなれてしまうが、甘く見ていると怪我をすることになる。
レッサーパンダ少女もあって良さそうなものだ。猫に比べて圧倒的にポピュラリティに欠けるところが問題なのだろうか。マニアとしてはぜひレッサーパンダの普及に努めたいところである。


登場した動物園:長野市茶臼山動物園
→篠ノ井の小高い山の上にあるこの動物園、シセンレッサーパンダの飼育頭数は全国一とのこと。ウォンバットもいるよ。
今回のBGM:「あどれっせんすドレス伝」by たんきゅんデモクラシー
→現在はソロとして活動するSOLEILがいた少女2人と猫2匹(!)のバンド。可愛らしさの中に毒がある感じがとても良い。

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