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ごとごと。〜馬路村での小話集〜



2023年11月7日朝8時前、眠い目をこすりながら高知県に降り立った。福岡市から夜行バスで約12時間。はじめて降り立つ地だ。とりあえず無事についたことを伝え、ここからまた4時間かと気合をいれた。

高知県に来た理由はひとつ。

ゆずの収穫だ。

「ふるさとワーキングホリデー」を利用して、ゆずの生産地"馬路村"に約1ヶ月間住む。

ゆずの収穫による手の筋肉痛が治る前に、思い出を振り返りたいと思い、初めてnoteを書くことにした。文章を書くことに長けていないため、今回は小話集というかたちで書く。 

ゆず畑はこもれびでいっぱい


高知県馬路村を選んだわけ  


ふるさとワーキングホリデーはたくさんの市町村が参加しており、選択肢はたくさんある。

そんなわたしが馬路村を選んだわけは2つ。

1つ目は県庁おもてなし課という、有川浩さん作の小説だ。映画化もしており、3回ほどみている。この物語に登場する人たちがとても愛おしくいつか高知県に行ってみたいと思っていた。とくに高知の方言、土佐弁がわたしにとってドストライクで、かわいくて仕方がない。この物語でまず高知県に興味を持った。


2つ目は馬路村のInstagram「UMAJI JOURNAL」。ふるさとワーホリのサイトで馬路村を見たあと、Instagramで馬路村と検索した。すると、「UMAJI JOURNAL」の投稿に出会った。ぜひ「UMAJI JOURNAL」をみてほしい。とにかく写真がきれいで、優しくて、この景色をみたいなと思った。善は急げ。すぐに応募フォームを記入した。

なんと馬路村滞在中に「UMAJI JOURNAL」を担当するミトネデザインさんのところへ行くことができた。わたしを馬路村へ導いてくれた写真を撮ったしょうたろうさんは写真の雰囲気をそのまま纏っていた。イメージカラーは青か緑だと思う。(好きな色は何色ですか?)
お時間をいただきありがとうございました。

ゆず収穫の勲章


ゆず収穫1日目、流血を目撃する。さっきまでゆずの収穫の仕方を教えてくれていたおんちゃん(おじさん)の額から、真っ赤な血が!だいじょうぶか???おんちゃんはなにも変わらずゆずを収穫している。大丈夫だったようだ。

ゆずは棘がある。聞いたことはあったが、かなりだ。棘というレベルじゃない、針だ。ゆずの棘おそるべし。ちなみにゆずの棘のことを「バラ」とよび、「バラに気をつけて」と毎日言われた。はじめはバラにビクビクしながらゆずを収穫していたが、膨大な量のゆずを前にしたらもうバラのことなど忘れてしまう。額から流血はなかったが、手と足にはバラがささった跡がいくつかある。ゆず収穫の勲章だ。撫でると馬路の思い出がよみがえる。

実はかわいのにとげはするどい。



馬路村のグランパandグランマ いぬいさん


ゆず収穫3日目。馬路村のグランマ、グランパいぬいさんと出会う。いぬいさんは隣の家に住むご夫婦で、旦那さんは奥さんのことを下の名前で呼ぶ。「〇〇、危ないからもつな」「〇〇、すこし休んどけ」奥さんへの愛が深い。そんないぬいさんご夫婦とゆず収穫の時期にお手伝いで帰ってくる娘さんにはよくしていただいた。「さくらちゃん〜、ケーキたべる??」「さくら!気をつけろよ〜」「さくらちゃん力持ちねー」わたくしはこんなふうに甘やかされたり、囃し立てられると「さくらちゃんもてまーーす!それももっていきまーす!」調子にのりまくった。調子にのり、がんばり、いぬいさんに褒めてもらう。このルーティンができあがり、おこがましいが気持ちは祖父母と孫となった。帰る数日前には、猪たべにくる?と夕ご飯に誘われ、山盛りのごはん×2、猪汁×2、猪を茹でて秘伝のたれにつけてたべるもの、丸々太った鮎の塩焼き、お刺身、おなす、たらふくいただいた。どれも最高においしかった。「これもこれもぜんぶわしがとった!」「これだけ食べてくれて嬉しいわぁ」おふたりの笑顔と猪の味が忘れられない。わたしの好きなたべもののなかに猪がランクインした。猪突猛進、1位2位を争っている。また会いに行くね、いぬいさん。

青空ティータイム
いぬいさんちのゆず畑


ベストフレンド、マブだち T子さん


我が住処は深山荘という日本家屋。8人で共同生活だ。わたしは2階の部屋でT子さんと同室だった。(ただしカーテンでベットは仕切られている)T子さんは、"THE関西の女"。毎晩1、2時間カーテン越しに語った。今までの人生、行ったことのある国の話、いちばん盛り上がったのは人間の三大欲求について。T子さんは話のオチを求めるタイプらしい。はじめそう聞いたときは、おもしろくなかったらどうしようと思ったがそんなこと忘れるくらい喋りまくった。私をおもろい女だと思ってくれていたなら幸い。T子さんとわたしには夜語り以外にもう1つ習慣があった。ラジオ体操だ。時々メンバーが増えることもあったが、みんなが朝の支度をしているなか2人でラジオ体操を全力で行なった。そのおかげでゆず収穫での怪我はなかった。ベストフレンドT子さんありがとう。T子さんと旦那様Cビンさんに幸あれ。

馬路村役所のちかくの銀杏

ごとごと


わたしのお気に入り土佐弁を紹介したい。「ごとごと」だ。ごとごとは、「ごとごといこうや〜」などゆっくりや気張らずにのような意味があるらしい。しかしそのなかには相手を気遣う、優しく想う意味が含まれているのだという。いぬいさんの娘さんは馬路村を出た際に「ごとごと」に代わる言葉がなくどういえばいいかわからなかったそうだ。木漏れ日やペトリコール、カフネのような他言語、標準語に訳せない言葉「ごとごと」。
わたしはこの言葉が好きだ。焦らず、ごとごと生きていこうそう思う。

桂浜の海
高知城のちかくのこもれび

さいごに


馬路村には、大きいスーパーもコンビニも信号機もない。たしかに生きていくのはすこし不便だ。しかし、ここにはないものが馬路村にはたくさんあった。満点の星空、にこにこ話しかけてくれる町民、地域のつながり、自分の地元に対する誇り。そんな馬路村がわたしは大好きになった。また来年も、その次も行こう。大好きな人を連れて行こう。そのまた次の年も行こう。ごとごと。


さくら

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