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江之浦測候所|小田原2019

写真仲間から、小田原の「江之浦測候所」に行こうと誘われて、仲間たちと訪れた。

「江之浦測候所」とは、日本を代表する写真家・現代美術家の杉本博司氏が手がけた施設とのこと。構想10年、工事10年を要し、杉本氏が自らの集大成とすら語る場所。その途方もなさがすごい。

最寄駅の根府川駅に友人らと集合すると、そこは無人駅。相模湾を臨む静かな駅だ。江之浦測候所までは、徒歩の場合、40分かかるため、施設の送迎バスで向かう。

江之浦測候所は、広大な敷地の中に、ギャラリー棟、石舞台、茶室、庭園などが点在し、日本の伝統的文化を現代建築に取り入れた作品となっている。最初に通された待合棟で、この施設の案内があり、その後は自由に見て回ることができる。

測候所の名前がついているが、何を測候する場所なのか。説明によると、自然や文化といったものと「自分」との距離を測る場所とのこと。正直ピンとはこないが、もともとみかん畑で、広々とした海を臨むこの場所を選んだことから、そうした自然とか日本の四季とかにヒントがあるような気がする。

ギャラリー棟はガラス張りの建築の中に、写真の展示がされている。杉本氏の代表的な写真作品の一つ「海景」が展示されていた。全てではないが、この駿河湾の海も含まれているはず。

海に向かって伸びたトンネルの中を歩く。冬至の日の朝には、朝日によって一直線に光が差し込むとのこと。トンネルの途中には、光井戸という名前の天井から光が差し込む場所がある。雨の日には、天井から入り込んだ雨が真ん中に置かれた石にたまる仕掛けのようだ。

冬至・夏至などの太陽の軌道から、その光の差し込み方が計算された仕掛けがあちこちに施されているそうだ。

隣には、ガラスでできた舞台「光学硝子舞台」がある。登ることはできないが、時折、能の上演がされるらしい。海を背景にした能とは、さぞかし美しいものだろう。そしてこの舞台の床下は、清水寺などで使われている、釘を使わない工法で作られているとのこと。こうした小さなところにも、日本文化の発信地としての意味があって素晴らしい。

江之浦測候所は、将来、遺跡になることを想定して作られているとのこと。そんな想定で建築されるなんてことがあるのかと思うが、それも含めてのアート作品なのかもしれない。

テーマやコンセプトの全部を理解できてはいないが、少なくとも広大な敷地の建築一つ一つに何かしらのメッセージがあるのだろうな、とは感じられたし、ただただ相模湾を眺めるのも気持ちが良かった。

何かが測候できたのではないかな。江之浦測候所、最高。

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