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冬に王様

昨日の東京の天気は曇りだった。

冬の冷たい空気が街を覆っていた。

外を歩いていると、その空気におよそ似つかわしくない匂いがふと鼻を掠めた。マスクをしているのに、それを貫通してまで存在を誇示してくる、この匂い…。



ドリアンが近くにいる……。


あたりを見回してみたら、本当だった。車1台がゆうに走れるくらいの商店街を歩いていたのだが、通りの反対沿い、アジア系食品を扱っている中国人経営のお店の店頭に、その大きなドリアンはあった。段ボール箱に入っていて、札には「猫山王」と書かれていた。値段は見逃した。

それにしても、ここは別に密空間でも何でもない普通の外なのに。あるのは冬の冷たい空気だけだ。その中で、ドリアンの匂いが鼻を掠めるというすごさ。自分の嗅覚もちょっとすごいかもしれないけど。
(関係あるのかわからないが、じつは直前に耳鼻科に行って鼻の吸引をしてもらっていたので、感度が上がっていた可能性はある。)

何かと好きな、ドリアン。東南アジアの国を旅行するときは、必ずその時期にドリアンが旬であるかどうかを調べる。そして、旬であれば旅行中のどこかのタイミングで食べる算段を企てる。

バンコクの屋台で食べた生ドリアンは美味だった。注文すると、その場で切ってパッと出されて、それを食うスタイル。バンコクにはドリアンの屋台が当たり前のようにあって、現地の雰囲気ごと味わった。

子どものときに図鑑で初めて目にしたとき、「果物の王様と書かれているこれは、いったいどんな味がするのだろうか」と、秘かに憧れを抱いた。
夢が叶ったのは大人になってからだったけど、憧れもくそもないほど強烈な匂いと味に、まんまと心を持っていかれた。

あらゆる果物を混ぜ合わせたような独特の風味。クリーミーな食感。くさみと甘味のアンビバレンツ。凶々しい外見とその貫禄。どこをとっても王様だ。

ただ、日本ではドリアンはめちゃめちゃ高く売られているから、正直手が届かない。食べるなら「現地」に行ったときに食べたい。
今年はどこかドリアンのいる街に行けたらと思った、そんな昨日の出来事。


(猫の絵をもっとちゃんと描けるようになりたい…。)

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