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宇宙船地球号操縦マニュアル

"宇宙船地球号をいかに操縦し維持するかということについて、また、その複雑な生命維持や再生のシステムについて、取扱説明書がなかったことも、デザインされてのことなのだ。"1963年発表の本書は宇宙的な俯瞰視点から地球の経済や哲学を解き、現在進行形で影響を与え続けている名著。

個人的には名前こそ知っていたものの未読だったのですが。今回ようやく手にとりました。

さて、そんな本書はデザイン・建築分野でダイマクション地図や身近な所でドームスタジアムにユニットバスなどを発明しつつ、シナジェティクスやデザインサイエンスなど様々な概念も提唱し『現代のレオナルド・ダ・ヴィンチ』とも評された著者による"大海賊"つまり支配層によって、意図的につくられ、大戦後に残された【分化された学問体系や国家といった単位】では、最早『地球全体が直面している問題』を解決できない。とし、地球を1つの宇宙船として捉え【包括的、シナジー的な観点で】教育や世界のシステムを考え、理解する必要がある事が約138ページで述べられた後、訳者による豊富な注釈や年譜、解説等が約70ページ収録されているわけですが。

流行りのSDGsをあらためて持ち出さなくても、頻発する自然災害、そして新型コロナで感覚的にも実感している【バラバラに対処しても解決できない】複雑に絡み合った全地球的な問題について。50年前に出された本書が既に予見していることに驚かされ、また流石に細部にこそ古さを感じるも【本質的な提案にはまったく古さを感じない】事に、さらに状況が酷くなっている現状を思い浮かべて、やや皮肉めいた気持ちも感じつつも感心させられました。

また、ごく『私的な事で恐縮』ですが。大学まで学ばせていただきながら『人生の午後』中年の今になって、ようやく様々な学問を【横断して気づき、考える】ことの大切さや面白さを日々、実感している私にとって。著者の『包括的、シナジーで捉える』の意味は今になって【痛切にわかる】し、また面識のある訳者があとがきで、本書と若いときに出会って『人生の進路を変えていった』話にも、訳者の現在の素晴らしい多方面での活躍をよく知っているだけに【強く頷かされる】部分がありました。

俯瞰的に、今の世界で起きていることを考えたい誰か、また分野を横断して学ぶことの大切さを実感したい人にもオススメ。

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