恋人に振られて宝物になったこと
一つの恋が終わったときに私の世界の景色が変わってみえたこと。
彼と付き合い出した頃、始めは彼を辛いことや悲しいことから守りたくてそばに居たいって思ったはずなのに、次第に自分のことばかりになって、上手くいかないことがあると全部相手のせいにしていました。
優しい相手に本当にわがままになって、相手の気持ちを全然思いやれなかった。誰がみても、いい彼女なんて言えなかった。そんな付き合い方しか出来なかったことをずっと申し訳なく思っていました。
彼に振られなかったらその事にも気がつけなかったし後悔も出来なかった。彼に振られたことは、当時の私にとっては悲しくて辛いことだったけど、私が自分のことを見つめ直して幸せになるために必要なことでした。
だから、そんなとこも含めて会えてよかったと、本当に馬鹿みたいにずっと思っています。
鬱気味のときにずっと寄り添ってくれた彼は私にとって命の恩人で、別れると決めた判断さえも、私を正しい場所に導いてくれるものでした。
もう彼が手を離してもひとりで歩いていけることを、教えてくれた。ずっとこの手を離したらどこにも行けないと思っていた私は、彼の手を取り続けていたら世界の広さを知らないままだったのだろうと今は思います。それは私の思い込みで都合のいい結末かもしれません。それでも、今の気持ちがこれまでの全てだと思っています。
申し訳ないと感じる罪悪感は消えません。後悔しても自分がしてきたことや彼を傷つけたことは、なかったことには出来ないし、時間も戻せない。
もし私が過去のことでたくさんの人に嫌われることになっても、それは私がちゃんとひたすらにこれからも受け止めないといけないことなんだと、今は受けいれられます。
だから、これから寄り添い合える人がいるときは、同じ間違いも後悔もしないと決めました。私がただひたすらに今でも悲しいのだとしたら、それは「自分が悔しい」という気持ちです。情けなくて、自分が悔しいという気持ちだけが、あの日からずっと私の背中を押しています。
そのおかげで、自分を変えることができました。やりたくないことをやめたし、考えるよりも行動をすること。いつでも自分で「選んだ」という感覚をもつこと、自分で選んだことは責任を持つこと。どんなプライドや法則性、世間常識よりも、周りの人も自分も笑顔でいられることが正解だと信じること。自分を信じて大切にすること、つらい時は人を頼ること。
私が笑っていたら嬉しいと思ってくれる人がたくさんいるのを、彼と別れてから知りました。「ひとりじゃないよ」と多くの人に手を握ってもらいました。私はどうしてか、いつからか、誰にも愛されているわけがないと思っていました。愛されないと思い込む方が楽だったからです。泣いて、誰かが来るのを待つのは本当に楽なことで、期待せず愛されない自分を演じることの方が怖くなくて済みました。その代償に周りがどんな傷を負っているのか何も推し量れない人間でした。本当に自分のことばかりでした。
周りの人に愛されてることに気がついてから、彼が一緒にいた数年間、どれだけ私を愛してくれていたのかも、今は付き合っていた頃よりも心の底から感じ取れるようになったのです。
人を信頼するというのは、「この人なら裏切らない」と信じることではなく、「この人の下した判断なら、それが正しい」と信じられることだと教えて貰いました。心底信用した人間のことは、どんなことをされても相手の判断やその心を大切にすることができるのだと初めて知りました。
今まで私を守ってくれた人たちの言葉や時間を無駄にしないためにも、私は前に前に歩いていきます。もし彼が今は私のことを心底憎んで、関心がなくて、嘲笑うような心持ちでいたとしても、私にとっては彼に出逢えたことが宝物のように大切だったことは、これからも変わりません。もうこの気持ちや言葉が届くことがなくても、変わりません。そんな人と出会えたことは途方もなく今も幸せだったと思います。その気持ちを嘘にしないためにも、私は彼と出会って知った気持ちをこれからもたくさん大事にします。そして、その気持ちを丸ごとつかって、これからの自分や、私が歩く先にいる人たちをたくさん愛していきます。
それが、今はもう何も出来なくても、多くの時間を寄り添ってくれた彼の言葉や気持ちを無駄にしない最善の選択だと信じているからです。
「思い込みだけが人を前に進める」という言葉が、私は少し滑稽だけど好きです。
同じように人との別れを経て苦しんでいる人が、少しでも気が楽になればと思って書きました。そしてこれが挫けそうになるときの、自分との約束です。忘れそうになったら読み返してね
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