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2022年03月選 幼なじみのまいちゃん /評

 幼なじみのまいちゃん 評

  3月のビーレビを1通り読んでみた。200作品近くあるなかで引っ掛かったのは『幼なじみのまいちゃん』『流血しか知らない淡い壁紙』『涙目』『おぼりて』『五億回転ターボ』『コンビニの外に君を捨てたい』『ベッドルームからおねがい』『もう恋はうたわない』『みうらくんときむらくん』『バイオスフィア3』『聖域の支配について』『閃光』『剥き出すのを、やめた気がする』『老猫よ』『熱狂』『1畳の和室で』の16作品だけだった。これが多いか少ないかは分からない。まるで砂金を集めるかのような作業だった。(実際の砂金集めが容易いのかは分からないが感覚的に。)

  この中から今度はスルメみたいに何度も噛むように読んでみた。そして、批評文は『幼なじみのまいちゃん』について書こうと決めた。どれも本当に違った方向で良い作品で、落とすことが出来なかったからかなり難しかった。これにしようと思った理由は繰り返し読んでいくなかで、詩文が頭にへばりついていくのが早かったってこと。ザックリなジャンル分けすればストーリー系で、キラーフレーズ、凸凹、毒も無い、さっぱり整った詩だと思った。なんか悪く言ってる気がするかもだけど、あなたの化粧顔が最高だよってのじゃなくて、あなたの素っぴんが素敵と言いたいのだ。ここが読み所ですよみたいな変に味付けをしてたら私は選んでいないと思う。押してくる所がないってのが良いところなのかもと感じる。

  最初は鍵のかかった自転車置き場でまいちゃんが凍死していた事から始まる。細かい状況は書かれていないので想像だが、かくれんぼとかしているうちにそこに隠れて、それに気付かないで鍵をかけられてしまい、筆者は途中で探すのをやめて帰ってしまったのかなぁと思われる。これはあくまで想像なので実際はちょっと意地悪のつもりで、どうなるかも知らず鍵掛けて帰ったのかも知れない。どっちにしても小さい頃こういった話はあるっちゃあるよね。私もかくれんぼは探す立場なのに帰ったし、逆に帰られたこともある。お母さんに会って呼ばれた。ほんとそれだけの理由とかでね。そんで次の日は当たり前のように再会して、ケンカして仲直りしてみたいな事をした。単なる子供の頃の思い出として語られるけど、あれは人生で最初の大きめなすれ違いと勘違いをしていたんだろうね。テレビドラマとかですれ違いにあぁ~どうして!となったりするのはそのせいかもしれない。意地悪って視点から行くと、小さい頃は特に分かる事が少ないから、人や物に対してこうしたこうなるに違いない、こうなってしまうってのがそんなに想像も出来ないだろうから、危うい事をうっかりしちゃいがちだよね。多分これもそうなんだと思う。この経験が少なかったり学ばなかったりすると、パチンコの駐車場で子供を車内に置いてしまうのかも知れないね。私はこれも経験がある。でも、私が小さい頃の夏は今みたいに猛暑じゃなかったからなんとかなってたけどね。これは子供だけの残酷さじゃなくて、大人になってもやっちゃうんだね。若いうちに苦労を買ってでもしろってのはこんな時に使うのかも知れない。じゃないと大人になった時に取り返しが付かない事もあるのかも。 子供の時はちょっとしたセカイ系なので、君が居ないと世界が大騒ぎしてるなんて思うけど、身近な人間が居なくなっても世界は当たり前にいつもの可動をしているんだよね。それぐらいのことで世界はブレない。どうしてだって思ったかも知れない、でも逆に取り上げられまくったら筆者は何を思ったのだろう。うちの一族は自殺家系な部分があるんだけど、とある人は車に飛び込んで、飛ばされた衝撃で更に橋から川に落下して亡くなった人がいる。その時は地方ニュースになってそれを見ていたんだけど、私の経験では亡くなり方は既に知っているのに「うわぁこうなって死んだんだ…」ってなんか他人っぽくなってた。多分、そうなってたんじゃないかな。とにかく、身近な人間が居なくなっても世界や社会は変わらない残酷さみたいなのを冒頭に感じた。まいちゃんのお父さんが怒鳴り込んで来たのは、どう行った理由からなんだろう。娘が死んだからなのは当然だとして。

  やっぱり、上で話した2つのどっちかなのかな?やり場の無い怒りを沈める為に違うとしても謝る事しか出来なかったのか、それともお母さんが不注意で鍵を掛けてしまったのか。詳細は分からないけど、だとしたらお母さんの方が苦しいと思う。なんにせよ父親が怒鳴り込み母親が謝る姿を見た筆者は、自分がまいちゃんを殺したと思ったのだ。 ここから筆者は、色んな経験と年齢を重ねていく中でまいちゃんの存在が小さくなっていったけど、中学受験をキッカケにまいちゃんの出来事があったから単なる受験ノイローゼで終わらないでどんどん心が削れていくようになる。そしてまいちゃんや色んな事へのこんな私を許してください謝罪をして過ごすようになる。幸せになって生きては行けないんだと罪を背負って生きていくのだが、ここに関しては私とは違う。

  私はネガティブで自尊心が低いのだが、逆に幸せになってやると思う方だ。まいちゃんを殺したみたいな出来事が無いからからってのもあるけど、許してくださいってよりはいつまでも許さないって呪いが私にはある。今でも許せない人との出来事がどうしてこんな場面でって所でフラッシュバックする。だから法が許すなら会うことはもう無いけど取りあえず殺しに行きたいし、もう知ること無いけど不幸になってて欲しいし、何かの不幸を知ったらその日はご褒美にうまいもんを食べれる。さっさと不幸になって私が勝者でしたみたいになりたいんだけど、早々なってくれないし、どうなっているか殆んど分からないから諦めたというか、そいつらにいつまでも生きるエネルギーを預けて生きるなというか、まぁ…許せるようになったんだよねある程度。 なので筆者はきっと許されているんだと思う。そして許したんだと思う。こうやって詩に出来ているから。じゃなかったらきっと、ビーレビにこの作品は存在しなかっただろう。というヒューマンドキュメントを感じれた良作でした。

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