見出し画像

2022/02月選 よくわからないからとりあえずキスをしている /評

よくわからないからとりあえずキスをしている /評

 
想像を掻き立てる作品はそう多くはない。改行詩なんてほとんど読まないよね。美しく美しく改行のタイミングよく、想いを込めて詩作りをしていたら、上出来で上品かもしれないけど、セックスやケンカはそういうものではないよね。この作品はそうではない。上品さはないのかもしれない。でもね、あたしら(今の35才前後の女性を想定してください)には、上品にすればするほどに遠のいてゆく感情があるんだよ?

今はベッドの中でも裸になりたくなくて、お互い、殆ど着たままのセックス。それでも脱がなきゃいけない衣類の量は君より私の方が多くて、それだけで本当に損した気分になる。損したっていうか奪われた気分?だからセックスのあと、私は君を少しだけ不幸にしておく。

 相手を少しだけ不幸にしておくってどんなんだろう?わかんないけど、もしかしたら、女性はみんなセックスの後、こんな風におもうのかもしれない。損得で冷静に考えるとあたしらが損をしていて男性は気持ちよくなって、皿洗いも洗濯もやらないで、しまいには働かないでセックスをしている。不幸にしておきたい。あたしが居なくなったら泣いて欲しいなんて思うよね。

倫理的に正しい正常位、または騎乗位、世間に安心を与えるつまらないセックス。どこにでもある彼氏彼女になっちゃって。私たち、いったいどこで可能性ってやつを落としていっちゃったの。それでこのまま?たぶん母親と父親になるのかな。まさか、ありきたりな子供まで?最低。

 たぶん、カップルはみんなこうなっちゃうんだよね。可能性。彼氏が居てその彼氏が天才なんだとか、信じて、あたしは夜のバイトに行く。バイト先でおっさんに胸をツンツンされても笑ってるし、帰宅して彼氏にそういう報告はしないよね。そんな現実を彼に想像させたくはない。だからというわけではないけど、この作品みたいに、キスをとりあえずあたしもする。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?