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贈与って必要? (私にとって)

「世界は贈与でできている」近内悠太 著、キナリ読書フェスの課題図書。
数日前にふと読書フェスに参加してみようという気になり、課題図書を眺めて一番気になったこちらを選択。

ほぼなんの事前知識もなくamazonの概要だけ眺めて購入したのだけど、おもしろい考え方や解釈がたくさん、知的好奇心を刺激されながら楽しく読んだ。

最初の率直な感想。

贈与の条件、多いな! 結局何が「贈与」なんだ?

全編を通して贈与とはどういう時に生まれるのか、どういう特徴があるのか、ということがいろんな切り口で書かれているのだけど

いやいや、贈与って条件多くないですか?

受け取ることからしか始められないとか、差出人は贈与であることを気づかれないように渡さないといけないとか、相手に必ず届くと思ってはダメとか、合理性では説明できないものであるとか。

矛盾するように思えるところも多くて頭がこんがらがってきて、本を読み返しながら贈与の特徴をノートに書き出した。
が、すごい数になってきて余計混乱してきた。困った。

多分、全部は理解しきれてないけど、私は以下のように理解した。

・愛情、親愛、好意、善意などを含めた言葉、モノなどを、受取人にそれが贈与であることがすぐには気づかれないように、だけどいつか届くように祈りを込めて送ること。

・誰かから贈与を受け取ったことを時間差で気付き「受け取ってしまった」という負い目があって、初めて自分が差出人になれるもの。

・交換では手に入れられないもの(使命感、生命力、つまり仕事のやりがいや生きる意味など)が、自分が差出人になることで結果として偶然手に入る可能性があるもの。

そして、贈与の定義がなんとなく自分の中でまとまってきたとき、新たな疑問が。

贈与って本当に必要なのか?

世界に必要なのは分かる。
社会として機能するためには、交換の論理だけでは成り立たない。交換できるものを持たない人が助けを求められない社会なんて、苦しすぎる。

じゃあ、私にとっては?私は贈与を必要としているのか?

私はとても資本主義的というか、ものすごくギブ&テイクの考え方が染み付いてしまっている。味気ないなと思いつつも、それが特段悪いこととも思えないでいるのも事実。
それなりに稼いでいれば1人で生きていける、自由でいられることが心地よくも感じている。だからむしろなんでも対価交換可能に、商品化してくれた方が楽なんだけどなと思っていた。
そんな私に、贈与は必要なのか。

話は変わるが、私は仕事が長続きしない。
平均して3年弱で働き方や会社を変えている。
それぞれの場所でそれなりに評価はされてきた、と思ってはいる。だけど、そこで自分がやるべきことが、2年くらいしたら分からなくなってくる。
最初は目新しさや学ぶことの多さに一生懸命になっているのだけど、ある程度のことがそこそこできるようになってくると、途端にやる気やモチベーションがしぼんでいく。
私、ここでこれから先何やっていくの?未来が全然見通せない。いつも半年先も想像できずにその場しのぎで日々を生きている。

人に対しても、仕事に対しても、同じなのかもしれない。
この人は、この仕事は、私に何を与えてくれるの?与えてくれる相応のものは返しますよ。やっぱり交換の論理だ。それ自体は悪くないんだろう。
だけど、私はそれに満足していないようだ。

人と関わりたいと思えない、仕事を続けるモチベーションが沸かない。
現状、具体的に何かすごく困っていることがあるわけではないけど、気持ちが安定しない。
これから先、私は社会とうまく折り合いをつけて生きていけるのかなという漠然とした憂鬱。
薄い紙でも積み重なればかなりの重さだ。コップの水は今どれくらい溜まっていて、いつ溢れるんだろう。そんな不安。
小手先ではなく、根本的な考え方を変えたいとずっと思っている。
だから今回、哲学書に分類されている本書に興味を持ったんだろう。

合理的かどうか、割に合うか合わないか。そんな考え方で、私は今、行き詰まっている。
ってことは、必要なんだな私にも。贈与。
余白に立ち現れる「お金では買えないもの」が必要なんだ。

だったら、考え方を、行動を変えなければ。
すぐに結果を求めない。損とか得とか考えない。
それは、ボトルメールみたいなもの。返ってくることを期待してはいけない。ただ、誰かにいつか届くようにと祈って送り出すこと。
あぁ、でもなんて難しいんだろ。
私にとってはどうしても打算が働いてしまう。隙間に落っこちている「それ」が欲しいよ、と。

そうか、私はまだ受け取っていないのかもしれない。
受け取っていることに気づけていないのかもしれない。
贈与は受け取らずに始めることはできない。
届いていた手紙を正しく読むことができるような人になれれば、見える世界も変わってくるのかな。

勉強が必要だ。まだ開けていない、受け取ったはずの手紙を読むために。

#キナリ読書フェス

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