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正解はないものの

ある日ショートステイという方法を利用してその人は施設へやって来た。

4泊5日くらいの短い滞在だったが、初日から『この人、具合が悪いなあ』というのが一目瞭然だった。ショートステイの入所というのは相談員さんが情報を取って来てくれるのだが、必ずしも医療従事者目線というわけではないので、ハッキリ言ってしまえば良く分からないことが多い。
質問して質問してやっと病状が分かる。

そうして調べた上で関わりを持つのだが、お子さんの『施設でもどんどん歩かせて下さい。歩けないようになるので。』というご要望とは相反する状態ということが一目瞭然。

やがてその方が退所して自宅へ帰ったところ『何を安静にして過ごさせてくれたんですか!』というクレームが来たとのこと。
が、その翌日、病院で検査をしたところ、持病が著しく悪化して歩けなくなったのはそのせいだと判明。逆謝罪をされて恐縮。

余命一ヶ月だと言われホスピスを探しているが空きがないので・・・という理由で再びその人はショートステイに来た。今度は無理やり歩かせてくれとは言われなかった。

ところが入所してからというもの、わずかの間に浮腫みが引いた。段々元気になって行った。
これは衣食住が事足りて、時間軸に関係なくゴロゴロしたり気ままに過ごせたせいだ。
利尿剤はずっと以前から使っていたのに効かなかったが、このゾーンに入るとストレスが取れて沢山尿も出るようになる。

余命一ヶ月ではない。

特養に入れば、特にこの施設に本入所してくれると自分の知る先生に診て貰うことが出来る。適切な処方を貰うことが出来る。
あと何か月か分からないけれど、気ままに過ごして貰えたら良いのに・・・と言っていたところ、即行でボスが動いてくれた。

今、特養入所に向けて諸手続きが進んでいる。

お子さんたちも「そんな方法があったなんて」と喜んで下さっているとのこと。何より本人が『いいの?』と笑顔を見せてくれた。

派遣でここに来た当初は『なんだ、この施設』と思っていたが、やがて、利用者さんたちが元気だったりイキイキとしているということに気が付いた。
今は尚、より一層。

暑い部屋で冷房もつけずに、栄養も摂れずにいるよりはずっと良いことは確か。
でも、それプラス何か、何か・・・その人らしく何か・・・といつも考えている。

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