見出し画像

メンテ

偶然同じ街に住んでいるナースくんが漢方薬を飲んでいる。

生まれつき気管が弱かったり複数のアレルギーを持ち、さらにはホルモンバランスが崩れる40代。彼女は真剣に自分をメンテして仕事に穴を開けないようにしている。偉い。

これだけの症状があると実に様々な漢方薬を飲んでいらっしゃるわけだが、言われても覚えられないほどの数だったりする。

私はと言うと祖母、いやその前の代からの遺伝なのか酷い頭痛持ちだった。

レイキヒーリングという外気功に出会ってからはかなり軽減したものの、急な頭痛に備えて頭痛薬はいつも買っておく。

それでいつも思うのだが、頭痛薬が売り切れて無いという現象をしょっちゅう見かける。世の人々は、皆さん頭が痛いのだなあ。自分だけじゃないのだなと変な感心の仕方をしてしまう。要するに皆色んなことを抱えて頑張っているのだ。

で、先の彼女が頭痛の際に飲む漢方薬は聴いたことがあるものだった。かなり昔に友人である内科医に「神経使い過ぎ。考え過ぎ。それを止めるように心がけて、あとこれを飲みなさい。」と処方されたものだった。

それを思い出したので、何十年ぶりかで病院にでも行って漢方薬を出して貰うことにした。普段からやれ疲れた、やれここが痛いあそこが痛いと不定愁訴めいたことを言っているわりに、病院にかかるまでには至らなかった。これも多分レイキヒーリングのおかげだと思う。

「それなら○○医院が良いですよ。」と教えて貰う。(寝込まないと自分の街の病院ですらどこへ行って良いのか分からない。)

***

そして、外観はしーんと静かで小さなクリニックに足を踏み入れて見たが、ドン引きした。何、この混雑ぶりは。

いちおう内科をうたっているのだが、ウォッチングしていると、ここの先生は何でも診てくれるようだ。

発熱、嘔吐はもちろんのこと、皮膚科に外科に整形に耳鼻科。色んな人が飛び込んで来るので驚いた。

診察室の声が丸聞えな造りで、医者と患者のやり取りを全員が聴いている状態。その診察の様子で、如何に優しい先生なのかが伺えた。こんなに忙しいのに一人一人丁寧に話してくれている。

「これはヘルペスですね。顔に出来てしまっているケースは皮膚科にかかった方が良いですね。ごめんね、うちで診てあげられなくて。今すぐ○○大学病院の皮膚科に紹介状書いてタクシーを呼んであげるから、必ず行ってね。ごめんね。めんどくさいよね。でも、目が見えなくなっちゃったら大変だからね。」

顔から血を流してやって来たお婆ちゃんを連れて来た娘さんも居た。

診察室から「これ、傷の手当はうちで出来るけど、顔だからね、もしも吐き気とか頭痛が出たらすぐに連絡してね。脳神経外科に紹介するから。」などなど。

己を知り専門外は速攻で紹介して受診に結び付けてくれるところも良い。

そして、ふとみると受付けで「今日はどうなさいましたか?」と言われている青年が「えーと・・・身体はどうもないんですが、ちょっと気になることがありまして。」とソワソワとした動き。「自分はどうも誰かに狙われているような気がするんです。」と。

それはここじゃ無理だろうと思ったが、どうやら続けて通院している方らしく、診察室から優しい声が聞こえて「そうですか、それは怖いね。」と処方の相談を真面目にしてくれている。そして先ほどの方が別人のようにニコニコして出て来る。

何とまあ、良い先生なんだろうか。

なんか、世の中の皆さんはこんなに辛いのに、そして先生はこんなに忙しいのに、頭痛の漢方ごときで来ている自分が申し訳ない気がして帰ろうとさえ思ったが名前を呼ばれた。病院に勤めていたくせに自分は滅多に病院にかかって来なかった。こんなに長く待ったのも初めてだったのだけど、何だか、全然苦にならなかった。

私もこの先生のように、患者さんや利用者さんにもっと優しく温かく接して行こうと思った。

ただそれだけのことなのだが、何だか不思議なひと時だった。

世の人々には色んなことがあって、皆自分を良くしようと頑張っている。そんなことを目の当たりにして、変な話だが、とても良い時間を過ごしたのだ。

紹介してくれたkナースに感謝。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?