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先生 ありがとう

今日は受診同行が多い日だった。前々からこの曜日は混雑すると分かっている。内科も泌尿器科もお目当ての先生が居るからだ。この曜日を逃すとあとは土曜日しかない。

お目当ての先生というのは、利用者さんをきちんと見て下さる先生のことを指す。大事な高齢者さんの残り少ない時間を安易に入院させていじくるだけの医者には託したくないのである。

これは私がここに勤める前からの諸先輩たちの伝統。

とはいうものの、ずる休みするナースが今日も居るのでいつもよりも忙しい。さらには、緊急で診て貰いたい人も出て来た。できれば別の日にしたいが、いや、やはり今日だ。肺炎になりかけているかも知れない。時は金なり。早期発見&早期治療だ。

この内科の先生は、この100歳の患者さんを診て下さったあと、決まって『じゃ、次は一か月後ね。』と予約を入れて下さるのだが、ここのところ私は毎週のように連れて行っている。

先日は心臓喘息のような症状が出ていたので連れて行ったら、案の定胸水が溜まっていた。そこで、まさに私が期待していた利尿剤を出して下さったので、その場は嬉しかったのだが。
大変だ。いつもより多めに飲水しなければ脱水になりやすい。しかも、採血結果でカリウムが高かったのでおののく。そして、低ナトリウム。
嚥下が悪くて、最近はプロテインゼリーやブリックゼリーなど栄養補助食品を先に食べて貰っている。おそらくは経管栄養をやっている人たちのように低ナトリウムに傾いたのだろう。(塩やお醤油使っている副食も食べれていなかったから。)

内服していたカリウムのお薬をすぐさま中止させていただく指示をいただく。
尿路を綺麗に保つために泌尿器の先生が薦めていたクランベリージュースも中止する。カリウムいっぱい入っているからね。

これで素直に一か月待てば良いのか?いや、そんわけない。
今度は痰がらみが出て来たのだ。
皆で頑張ってご飯を食べさせたり飲水させている時に少しづつ誤嚥しているのかもしれない。そりゃそうだ。100歳の嚥下力だから弱いのだ。

それで外来に連れて行くと先生が『・・・・・・・・。』

分かっている。『今度は一か月後だって何回言えば分かるんだ、この看護師。最近、毎週のように連れて来やがんな。。。。』と思っているのだろう。

しかし、渋々レントゲンと採血を取って下さったところ、
『低ナトリウムはほぼ治っています。』

やった!海苔佃煮がお好きでちょっと食べて貰ったからかな。味噌汁も少し飲めるようになったからかな?

『あと、レントゲン上は胸水が減って、肺のスペースが少し広がっていますね。そのせいで痰が出しやすくなって出て来るのかも知れません。肺炎は起こしていません。』

わー!先生、先週利尿剤を出して下さったおかげです!ありがとうございます!

『・・・・・。むしろ良くなっていますので、次は一か月後です。』

しかし、今度は『・・・・・・・。』とステイする私。

『な、何で帰ろうとしないの?こいつ?』と思っているであろう先生。

しかし、次の瞬間、『うーん、そうだね。去痰剤を2週間分くらい出しておこうか?』。

あーーざーーーっすっっ!!痰が上がって来たら吸引して大事に過ごします。じゃ、先生!またお願いします!

と車椅子を押して立ち去る私の背中に『次は一か月後ね。』と念を押す先生だった。

いや、一か月経たないうちに何か変わったことがあったら、またお願いね!と心の中で思う私。

ドアの向こうから「100歳超えの老人をどうしろっていうんだ。」という思念が飛んで来る。

長生きさせて欲しいんだよ。本人がそれを望んでいる限りは。

もうすぐ敬老の日だなあ。何か出し物考えて楽しんで貰おう。

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