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結果オーライ

身寄りのない人、身寄りがないに等しい人をあまり良く診てくれる医師が少ないというのが最近の悩み。何なの、給料貰ってるでしょうに。

重度の糖尿病の人で、それなりに代償を支払って来た方をホームに入所した後もフォローして貰いたい。そんな簡単なことが看護師の熱がなければ継続できないこともある。

かと言って強めに出ても機嫌を損ねる。そこは慎重に。だって相手は彼に興味が無いのだから。

横柄な態度で暴言を吐くたびにスタッフが私に苦情を言いに来る。『もうどうにかして下さい。ちっとも言うこと聞きません。』
しまいには『だから身寄りがないんだよ』と言う人がいたので、『ちょっと待て。』とそれだけは口をはさんだ。

確かに人生の晩年にはその人がどう生きて来たか?が色濃く出る。しかし、ここは特養。プロがそんなこと言ってはいけないのだ。
ついでに言えば、裕福でご家族が勢ぞろいしている人々も同じくらいの頻度で威張り散らかしている人はいっぱい居る。境遇というより人なんだよね。

それはともかく、彼の両手が浮腫んで来たので外来に連れて行ったのだ。彼を病院から退院させた先生の元へ。

採血の数字が想像よりは悪くなかったので「先生、これくらいのちっちゃなおせんべい、食べさせても良いでしょうか?たったのこれだけ。こんな、ちっちゃいやつ!」とお願いする。

すると味方が出来たと思ったのか、それまで神妙な顔をしていた彼は突然『先生よお、そうだよおう。でないと俺、毎日看護師にやつあたりだよ。ははははっ。』

私も私でそれまでしおらしく先生にお願いしていたのに、ほとんど反射で「いい加減にして!」と怒号。公衆の面前。医師の前、外来看護師の目の前。皆さん、ドン引き。

すると先生が、椅子を座り直して背筋を但し『ま、毎週来なさい。採血して大丈夫だったらその週は食べて良いってことにしよう、ね?ね?』

『ありがとう、先生。俺、いじめられてるんだよう。』

な、なにいーー?!

しかし、先生はそれを制するように『お薬も私が出しましょう。そうだ!血糖測定器もあげよう。』

・・・。

あとから冷静に考えてみれば、思っていたより熱心に診てくれる運びとなった。
先生は私に怒られている彼に同情してくれたのだろう。良いのだ、悪者で。

***

今日から当分連勤だ。頑張ろう。

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