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対談記事:CL2022京都大会Best4クワガノンデッキができるまで

有料記事ですが、全文を無料でお読みいただけます。もし面白かったら、お買い上げただけると幸いです。次回の取材費に当てさせていただきます。

チャーさん(以下、チ):クワガノンはあの大会にブッ刺さっていたと思いますよ。実際のところ。予選を突破してベスト16に残った時点、その後三神デッキとの対戦に勝った時点で、これで勝てないのはダメだろうと考えてました。

みやもー(以下、み):準々決勝の三神との対戦の時、たしかに持ってる感じはしたよね。

チ:めちゃくちゃ事故っていたからね。
うわ、やばい展開悪い!…相手も展開しない。
あちゃー全然引けない!…相手もっと引けない。
バッチン(オルタージェネシスGX発動)してこない。
でなんとか勝つ、っていうね。

チ:だから、これで勝てないのはない、この大会にこのデッキで負けるというのは、それは持ってなさすぎるだろうと。

でも次の準決勝で負けちゃうんですけどね(笑)

CL2022京都大会、彼はクワガノンデッキで予選を全勝1位で通過した。
その勢いのまま優勝を狙えると本人が確信するほどに、クワガノンデッキは京都大会を席巻していた。
大会後のシティリーグや各地の大会でクワガノンは大量に発生し、そしてそのデッキパワーで数多くの勝利を記録。環境に大きなインパクトを残したこのデッキを、大会で使用したチャーさんと、デッキを組み上げたみやもーに、対談形式で振り返ってもらうことにした。


いつものように大会前日に調整

―配信席対戦後のインタビューでも言及されていましたけど、本当に前日に組んだんですか?

対談風景(PLAY FACTORY TOKYO)

み:まぁいつものことだけどね。

チ:そうだね、よくあります。前日にみやもーさんのお店を早めに開けてもらって相談してたんですよ。午前中からだったと思います。

み:来たのはたしか昼くらいでしたね。出て行ったのは15:00。3時間くらいしかいなかったもの。

チ:それまで有力候補だったケケンカニVのデッキが迷走してしまって。これはダメだと。
使うデッキはなくなってしまったけど、デッキ案をいくつかもっていってみやもーさんと話しながら決めようと思ってました。

み:あれ?デッキ案持ってきていたっけ?

チ:持っていってたよ。アマージョVとか。全部みやもーさんに却下されたけど。

み:だって弱そうだったんだもの。それならケケンカニVでいいのでは?ってものばかりだったんじゃないかな。よく覚えてないけれども。

チ:ケケンカニVで出たかったんだよ。でもなかなか勝てなくてね。特にミュウV-maxにほぼ勝てない。
そして1番の問題は「ひとり回しで楽しくない」っていう点でした。

み:チャーさんは回していてつまんないって感じてしまうデッキはCLだろうとシティリーグだろうと使わないよね。

チ:そうね。デッキは「楽しい」という視点が重要。

み:そんなチャーさんに手持ちの中からクワガノンデッキを薦めてみたんですよね。とりあえず回して見なよ?って言ったと思います。
このクワガノン、お店に来るお客さんに何度か貸して回してもらったら意外と好評だったんです。
いつもは自分のデッキって、難しいとか回らないよと言われてしまうことが多いのに、「これ強いね」という感想が出ていて、みんながそう思うならいけるかも、と候補の一つに残していたんですね。自分は大会出ないのに。

チ:しかたないのでクワガノンデッキをつかってみたら、回していて楽しかったんです。これ、楽しいねってなりました。さっきも言いましたけど、回していて「楽しい」というのはデッキを選択する上で重要なんです。

み:使ってもらうために一生懸命「そうでしょ?楽しいでしょ?」って乗せてました

チ:それでも他人のデッキを持っていくのには葛藤もありました。
やっぱり自分で一から作った、自分のデッキで大会に出たいという気持ちはいつも持っているんです。
5枚くらい差し替えましたけど、それでもみやもーさんのデッキというのは間違いないところなんですよね。だからやっぱり踏ん切りつかなくて。

最終的には新幹線の時刻が迫って、悩んでいる時間もなくなってきて、「これはクワガノンか……」と観念した感じです。


環境を観察してのデッキ選択

―CL2022京都大会でクワガノンがいけると考えたポイントはどこにあったんでしょうか?

対談風景02(PLAY FACTORY TOKYO)

み:この環境の検討がはじまった頃から、そろそろ非ルールで戦えないか?というのを考えていました。
V-maxが殴り合う環境になっていて、サイドが1枚しか取られない非ルールのポケモンが同じスピードで攻撃できるなら、サイド取得レースの上で有利をもてるのは間違いないです。
非ルールのポケモンが数年目立った活躍ができていない理由は、サイドレースの有利を無効にしてしまう三神の存在が大きかったのですが、ここへきて徐々に数を減らしていました。非ルールのデッキをいくつか組んでみた中で、戦えるポケモンとしてカードテキストが公表された時からクワガノンに注目していたのです。

チ:非ルールのタイミングになりそうだということはわたしも感じていて、デッキができなければ連撃テンタクルのカラマネロデッキを持ち込む準備もしていました。

み:もうひとつクワガノンを選択するのに懸案となるのは、ベンチバリアを持ったミュウがどれだけ採用されているか?ということになると思ったのですが、ミュウを採用する理由であったトップデッキの連撃ウーラオスが、新たに登場したミュウV-maxによって一気に減ったんですね。それを見てミュウの採用率も下がっていることを、大会前にいつも行っている環境観察から感じ取っていました。

チ:大会当日のミュウの採用率がどこまで下がってくれるか、というのは不確定要素ではありました。大会前の状況からミュウの採用率が一気に下がるところまで環境が動くのか、読みきれないと思っていました。

み:前日すこしだけやった対戦中も「ミュウおらん?ミュウおらん?」って何度も言ってましたね。

チ:最終的にはベンチバリアのミュウを採用しているデッキと当たって1敗することは仕方ないと考えたんです。そこは切るか、と。

み:当たってもプレイングで頑張っていけば無理ではない、という気もしていたけど?

チ:カラマネロのようにHPの低いアタッカーとなら五分以上の戦いはできるけど、黒馬のように大きなポケモンを2体、3体と相手にしなくてはならなくなって、一度でもかわされてしまうとそれで負けてしまうので、黒馬デッキにミュウが入っていると相当厳しいと考えていました。

み:ボスの指令も入っていないデッキでしたからね。

チ:とはいえ仮想敵となるデッキとの相性は悪くなくて、ミュウV-maxはデッキの性質上ベンチにゲノセクトVを並べるわけですし、白馬についてもアタッカーとして採用率の高いスイクンVが場に出てきてくれれば勝率はかなり高いと考えていました。この二つのデッキに有利を取ることができるなら、5勝はできる、という算段でした。

み:他もだいたいいけそうじゃなかった?

チ:ルカメタがすこしきついかなとは思ってた。

み:ルカメタはマリィ使いながらアタッカーにダメージを与えていくことで、相手のリソースを削いでいく「スーパーマリィ作戦」でなんとかする感じで考えていたけど。マオ&スイレンを使っての回復をされても手札がなくなって動きが止まれば押し切れると考えてましたね。

チ:相手の動きが鈍くなったことで予選の9戦目は勝てた側面はあるね。

み:特にルカメタが先にバトル場に出てきた状況なら、先にダメージをあたえていけるのでだいぶ有利になる。ルカメタ以外にどんどん出てくるクワガノンを一撃で倒し続けていけるポケモンが意外と入っていないデッキだと思うんですよ。

チ:たしかにザシアンではブレイブキャリバーで倒した次のターンにバトル場から逃げる必要があるしね。

み:逃げる必要があるし、ザマゼンタだと20足りない。だからルカメタに4つエネルギーをつけて攻撃するのが、相手の最善手ということになります。

チ:ザマゼンタはたしかに打点が足りないんだけど、特殊エネルギーを壊してくるのでリソースが厳しくなってしまいます。9戦目も実際には最後に相手に良い動きをされたら負けていたと思います。ただルカメタ自体が時間のかかるデッキではあるので、非ルールと対戦すると時間を気にしてかなりプレイが粗くなってしまったというのもあって勝てたのかな、と。

み:そういうこともあるかー

チ:8戦全勝できていたのですこし「負けても仕方ないか」という気持ちでいたんですけど、実は階段(8-0同士ではなく7-1のプレイヤーと対戦していた)で負けていたらベスト16から落ちていた可能性が高かったというね(笑)

―その他では三神デッキは厳しいという見立てでしたか?

チ:厳しいですね。こちらがきれいに回ってやっと勝てるかどうか、というところで。三神を相手にしないで戦うプランでいってもベンチバリアのミュウが採用されていたらそもそも勝てない、というくらいの相性差だと思います。

み:三神1体でサイドを4枚とられてしまう可能性が高いわけですし、ちょっとでも自分のクワガノンが立ち上がるのが遅れたら追いつくのは難しいですね。

チ:ミュウが多くのデッキに採用されていないこと、三神デッキもこれまでより少ないこと、そのあたりの環境読みが結果としてうまくはまったんですね。

デッキのチューニングと採用カード

―デッキの選択は的中したわけですが、デッキ自体の完成度も高いものでしたね。

みやもー構築デッキ

みやもーデッキ

チ:みやもーさんの構築から5-6枚ほど差し替えて持ち込んだんですが、即席のわりには完成度は高かったと思います。みやもーさん的にはエリカの2枚目を入れた形ってどう見えてた?

チャーさん大会使用デッキ

チャーさん使用デッキ

み:2枚目のエリカはありだと思っていたし、あの大会においては良かったと思っているよ。ミュウV-max筆頭にベンチを並べるデッキが大半だったわけで、状況にあっていた選択だったと感じています。

チ:他のデッキもメッソン並べるしね。ベンチを絞って戦うデッキはルカメタだけだろうという状況でした。そうでなくてもルカメタは不利なマッチアップだと大会前から感じていましたし、いまでも不利だと考えているので構築の面では切っていたデッキでした。

み:うーん。理想的に動いたルカメタにはかなり厳しいけど、数字的にはこちらの方がしっかり回る可能性高いし、そこまで不利マッチにならないと思っていたんだけど。

チ:こっちの動き厳しいけど相手も辛い、っていうのはあるとは思う。それでもリソースが厳しいのは確かで、スタジアムを割る手段がないので回復されて持久戦されると本当に辛い。望遠スコープがあれば、という気持ちになると思う。

み:差し替え候補として最後まで悩んだカードだね。ボスの指令と望遠スコープは。

チ:ボスの指令は一枚あれば便利なのは確かなんだけど、微妙な選択だと思ったけどね。

み:あの時点(CL2022京都大会開催時)では採用する必要は全くなかったと思います。いま(CL2021福岡大会直前)となってはデッキに採用する価値は高いと思いますけど、そのためには他のカードを抜くことになりますからね。デッキの良さは下がります。

チ:ボスの指令を入れるとスタンプも欲しくなってしまいます。そうなるとどんどん欲張りになって、いろんなカードをあれもこれも入れたくなる。デッキはシンプルな方が強い、という考えなのでそれはしたくなかったです。

み:単純に「クワガノンをたてる」「クワガノンが戦う」という大きな軸があって、それがしっかり回れば非ルールであることで勝てるというデッキですからね。

チ:望遠スコープもボスの指令も京都大会でのゲームプラン上、採用するには至らないカードだった言えると思います。デッキの全てのカードに意味があることが重要で、その意味ではふつうのつりざおも入れたくなかったんですよ。手札にあって意味を持たない場面が多いカードなんです。

み:いれたくなくて抜いて対戦もしましたね。でも対戦によってはクワガノンが足りなくなる。

チ:5体使うよね、ってなりました。サイドにクワガノンが落ちてしまった時も厳しくてトラッシュから戻すカードは必要になります。それでもふつうのつりざおを入れたくないから他のカードで代用できないか考えたんですけど、結局1枚採用しました。

み:ほかにはタケシのガッツも検討しましたね。

チ:終盤にタケシのガッツをつかって勝てるイメージはなかったんで不採用です。

み:インテレオンの数もかわりましたね。(クイックシューターインテレオンを2枚から1枚に)その代わりに回収ネットが増えたり。

チ:このあたりはみやもーさんとわたしでジメレオン・インテレオンをどのように使ってきたかの差があったのかなと思っています。みやもーさんはスイクンVデッキでジメレオン・インテレオンをつかってきていて、わたしは連撃ウーラオスで使っていた時間が長かったんです。それはデッキ構築の視点の違いになっているかなと思います。

み:あるとおもう。回し方がちがうよね。

チ:スイクンV+ジメレオン・インテレオンというデッキではしんかのおこうの価値がそれほど高くないんですね。だけどクワガノンでは絶対に4枚入らないといけないカードになります。

み:最初にみたときにそこを褒めてたよね。「みやもーさんのデッキにしてはおこうが4枚積んである」って。自分はデンヂムシのためにしんかのおこうを4にしたんだけど。

チ:わたしはジメレオン・インテレオンを採用した時点でしんかのおこうは4枚だと思っています。手札にあって腐ることのないカードだと感じていますから。連撃ウーラオスではV-maxにも使えるわけで、その感覚があってこのデッキではしんかのおこうはレベルボール以上に重要なカードと捉えています。

み:クイックボールの採用も論点だったね。

チ:たしかに削りたくなる気持ちもわかる。実際私も1枚減らしたしね。でも中盤にあまり使わないカードになることを踏まえても序盤の展開力の方が重要だろうと思うんで3枚が限界かなと。山札をきれいにする意味でも価値はありますし。

み:このデッキ手札をトラッシュできるカードが少ないからね。

チ:そう。スタンプへの耐性を高めると言う視点も重要だと思うし。

み:あまりやらないけど序盤のプレイングとしてジメレオンをトラッシュに落としておいて、レスキューキャリーの対象にするっていうのも考えられます。

チ:デンヂムシだっておとしておくことで手札に持ってくる範囲を、山札だけでなくトラッシュにも広げておくプレイングはありだと思います。

み:その意味でトラッシュできるカードとしてクイックボール採用の価値は高いと言えますね。ただ相手のデッキによってはクワガノンの総攻撃回数が重要になる場合もあるので、そのプレイングで回数が減ってしまうことは意識しておかないといけないんですけど。V-max相手なら攻撃回数はそこまで必要ないので、選択肢として持っておくと幅は広がりますね。

チ:非ルールと戦う場合でも最大5体しかクワガノンが立たないのは変わりませんから、このデッキのリソースにはすこしだけ余裕があると思ってます。デンヂムシをトラッシュしないでかみつくを使うこともありますし。わたしとしては積極的にクイックボールは採用する立場です。

み:かみつくケースは意外と多いんですよ。

チ:メッソンがバトル場にいる場面がそこそこあるから、というのが最大の理由だと思いますけど、その他でも意外とかみつくをつかうし、非ルール相手でも小回りが効くデッキです。この辺りは回す前と後で大きく認識が変わりましたね。

大型大会を勝ち抜く難しさ

―手応えと共に苦手の三神デッキに勝利した後、準決勝で「不利ではない」という白馬デッキに敗北してしまいました。

チ:あれはねー。もう頭がバグっていたとしかいいようがない。

み:ほんとうにそうだったね。みていて「あー」って思ったもの。

チ:事故っていたのは事実だけど、やりようはあった。あとから考えれば、ちゃんと糖分を取るべきだったし、昼食の取り方も考えるべきだった。長丁場の大会を勝ち抜く準備が足りなかったんだと思います。

み:配信卓の対戦を見て、「下手だなぁ」って感想があがることがあるけれど、そんな下手なプレイヤーが決勝トーナメントに残っているわけないんです。あれは体験してみないと理解しにくいと思うけど、本当にいつもはできていたことができなくて、何が正解なのかわからなくなってしまう。体力面でも精神面でも疲労が半端ない。
みんな体験した後で対策するようになるんです。

チ:それまで配信卓できれいに見えるように意識して場を整えていたのに、あの対戦は途中からもうぼろぼろぐちゃぐちゃでしたもんね。

み:あんなに配信卓の練習したのにね。(笑)そこじゃないよ!って何度もいった。

チ:デッキをきれいにみせたかったし、ちゃんとしないとね。

―デッキについては配信卓にいたとーしんさんも絶賛してましたね。

み:あの人、動画の撮影でこのデッキみてたはずなのに忘れてたんですよ。

チ:え?目の前で使ってたのに?

み:そう。自身がケケンカニLO使っていたから、こっちの盤面全くみてなかったんだと思う。そのうえ大会前にあげるはずが後になっているし。
でもまぁ動画が公開されていても、結果には影響なかったと思いますけど。


チ:大会の前に動画を見たとしても、なかなか大会参加デッキとして選択するのは難しいデッキだと思いますよ。わたしだってみやもーさんから勧められなければ使おうと思わなかったんですし。

み:もっと褒めていいんだよ(笑)

―本日はありがとうございました。

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