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10代のブリがチャゲアスの音楽を理解できなかった理由5つ

皆さんは、初めてCHAGE and ASKA(以下チャゲアス)の歌詞を知ったのは、いつですか。一般的に使われている単語で、人間の感情を描いた、比喩表現があふれる歌詞が、彼らの特徴です。
ブリは中学時代に、チャゲアスの楽曲を少し聞いたことがありました。音楽番組の名曲集やバラエティー番組で、彼らのヒット曲を知りました。彼らの代表曲である、『SAY YES』と『YAH YAH YAH』を何回も聞きました。ブリ少女は、この2曲の歌詞を聞くたび、こう思いました。

「何に対して、"YES"と答えるの?」
「なぜ殴りに行きたい気持ちになるの?」

ヒット曲の歌詞の意味はさっぱりで、楽曲に対する共感が皆無でした。高校時代に、ブリの推しバンドである、ポルノグラフィティの新藤晴一(以下晴一)から、チャゲアスの話をブログで読みました。晴一は音楽番組で聞いた、チャゲアスの『パラシュートの部屋で』という曲に感動して、ポルノのシングル曲『ヴォイス』の歌詞に悩んでいた気持ちが晴れた出来事がありました。

「Mステ(音楽番組)でチャゲアスのおふたりと話ができた。『ヴォイス』を演奏した後、なんと「いい曲だね」って言ってくださった。実は今回の『ヴォイス』の作詞をしている時、(これはいつもなんだけど)「自分に、もう書きたいこと、表現したいことなんてないんじゃないか」と弱気になってた。「書けねぇ!」と叫びながらTVをつけたら「HEY! HEY! HEY!」(音楽番組)がやってて。んで、チャゲアスさんが新曲の『パラシュートの部屋で』を演奏してらっしゃった。そのクオリティの高さと言ったら…。長くやってるのが偉いんじゃなくて、長く高いクオリティでやってるのが偉い。たかがデビュー3年生で書けねぇっていってる場合じゃないなと、机に戻ったという事があった。
この文章が宣伝っぽく見えたらごめんなさい。ただ『ヴォイス』を創るとき、そうとう悩んでて、それを抜け出すきっかけのひとつになった方から、計らずも言葉をかけてもらえたのが嬉しかったという話です。」

新藤晴一のブログ(2001年9月28日)
※読みやすいように文字修正しました
新藤晴一(しんどうはるいち)。
ポルノグラフィティのギタリスト、作詞・作曲家。

当時のブリ少女は、チャゲアスのことを全く知りません。晴一の話から、彼らは先輩アーティストだろうと思っただけでした。『パラシュートの部屋で』という曲を聞いてみて、ブリ少女はこう思いました。

「パラシュートがどうこうって、どういう世界なのか意味が分からない」

歌詞を何回も読んでも、ちんぷんかんぷんでした。ブリ少女は、きっと作詞者の言いたいことが支離滅裂なのか、内容をはっきり言わない変な歌詞だと思いました。チャゲアスの歌詞が本当に難しくて、分からなかったです。他の推しアーティストだったら、すっきり分かるのに、2人の歌詞は分からないままで、関心が低かったです。今思うと、彼らは魅力があるアーティストなのに、どうしてブリ少女はもっと興味が深まらなかったのか、知る機会をたくさん見逃していたと思いました。

そして15年後、大人のブリはもう一度、チャゲアスの楽曲を聞き、歌詞を読みました。すると、意味がすっきり分かってきました。支離滅裂な歌詞ではなかったのです。何に対して"YES"と答えるのか、なぜ殴りに行きたい気持ちになるのか、パラシュートの世界とは一体何なのか、これらが分かってきて、素敵な歌詞に深く感動しました。

きっと、長く聞いているチャゲアスファンは、若い邦楽ファンがもっと彼らの楽曲を聞いてほしいと願っていると思います。しかし、少年少女の考えの違いがあって、すれ違うことが多く、楽曲を聞いてもらえないと悩んでいる方々がいるでしょう。ブリの少年時代を思い出しながら、聞かなかった理由を考えると、なぜに若い邦楽ファンがチャゲアスに関心を持たないのか、分かってきました。
この記事では、なぜ10代のブリが、チャゲアスの音楽を理解できなかったのか、理由を5つにまとめました。歌詞については、さまざまな解釈があるので、あくまでも一例だと思ってください。


♪人生経験が浅かったから

10代のブリは、勉強の合間に、音楽を楽しんでいました。友人は少なくて、音楽の趣味を通して、友人が増え、会話が盛り上がっていました。ブリの好きな音楽は、邦楽ポップスとロック、往年のクラシックで、おもしろいと思ったら、何でも好きです。しかし、ブリ少女は「ただノリが良ければいい」、「音楽は楽しいもの」と思っていました。勢いで、ノリノリになる楽曲が多かったです。歌詞は例えや言葉が分かりやすく、軽いコミカルな恋愛や応援歌、若い世代の不安や孤独を描いた内容が多かったです。
ノリ重視、分かりやすい歌詞、少年の感情、ブリ少女は音楽は分かりやすい勢いで生活を盛り上げるものだと考えていました。そんな考えのブリ少女がチャゲアスの歌詞を読んだら、「いろいろ言葉の例えがあって、意味が分からない」と詰んで、「なぜ"愛には愛で"感じ合うのか」、「どうして殴りに行くことになったのか」と首をかしげ、もっと簡単に言ってほしいと思いました。

成人を過ぎ、人生を重ねて、聞く音楽が変わっていきました。勉強だけではなく、家庭や進路でのさまざまな体験があり、音楽を聞く考えが変わりました。10代のようにノリで分かりやすい音楽ではなく、癒やされる、考えさせられる、心に響く音楽を求めるようになりました。10代の時に聞いていた音楽を今聞くと、ノリに疲れて、分かりやすい歌詞に恥ずかしさがあります。でも、ブリ少女を支えてきた音楽は、今のブリの好みを作り出しました。多彩な楽曲、個性的な歌声、独特な歌詞、魅力的な容姿を持ったアーティストが、ブリの推しの好みの傾向です。
大人のブリが、チャゲアスの歌詞を読むと、いろいろ考えさせられる歌詞の表現に、ハマりました。さまざまな出来事を乗り越えたブリは、歌詞の意味に深く感じて、笑顔と涙があふれました。言葉の表現を考えることがおもしろくなりました。人生の積み重ねによって、歌詞への考え方が熟してきたのです。歌詞のような体験をしたことなくても、"YES"と誓うロマンチックな瞬間を描いた世界に浸ったり、"YAH"と歌って、ストレスを吐き出す感情を盛り上げる気持ちに共感します。


♪感性が磨き足りなかったから

ブリは音楽だけで得られるものがあって、ずっといろんな音楽を聞き続けています。読書もゲームも楽しいですが、音楽で唯一得られるものは、言葉やコンピューターを超えた表現で、感情を昇華してくれることです。10代のブリは、「音楽は音に歌詞を乗せるだけ」と思っていました。楽器と歌声に、奏でる理由を考えずに、聞いていました。
音楽体験が足りない頃は、歌詞は何が言いたいのか、楽器を奏でる方法になぜ違いがあるのか、音楽のことを理解できなくて、ただギターを奏でていればいいしか分かりませんでした。そんなブリ少女は、チャゲアスの音楽を聞いても、美しい歌詞と歌声、繊細な演奏がさっぱり分からず、退屈な曲だと思っていました。考え方が足りず、彼らの本当の魅力になかなかたどり着けなかったのです。

音楽を聞けば聞くほど、次第に理由や表現方法について、考えるようになりました。なぜこの音にこの歌詞を乗せるのか、この楽曲はなぜこの楽器で表現するのか、歌声のテクニックの意味について、表現方法の理由が見えてくるようになりました。気づいていくと、音楽がさらに深く響き、新しい視点で音楽を楽しめるようになりました。

10代のブリが聞いていた音楽を、今のブリが聞くと、曲調は荒くて、若い衝動を感じる音楽だと思います。歴代の推しアーティストたちが作り出す、絶妙なメロディー構成と歌声に感心することが増えました。歌詞は今読むと、すらすら分かるようになり、単純に考えていた頃の気持ちに励まされる気がしました。
支離滅裂と思ったチャゲアスの歌詞を今のブリが再び読んで、衝撃が走りました。あの時に読んだ、パラシュートの世界は、愛の営みの空間だったのです。美しい言葉で書かれた愛のやりとりに、ブリは照れてしまいました。あの美声であの歌詞を歌うから、一人で聞いて、ますます頬が赤くなりました。ブリは音楽の感じ方に気づいてきたので、音楽で描かれる美しさを楽しめるようになったのです。


♪時代錯誤を感じたから

ブリ少女は、チャゲアスのミュージックビデオを見たことあります。初めて見た時は退屈でした。当時の2人のファッションが古風に見えて、何か映像におもしろい演出や効果を期待していたので、そう思っていたのでしょう。

大人になったブリが、ミュージックビデオを振り返って、あることに気づきました。彼らは振り付けをやったり、歌う彼らの背景で何か派手な演出があったり、そういうものがないのです。歌う彼らの姿を終始写したり、楽曲の世界観を描いたドラマシーンを交互に写すものがあります。1980年代、1990年代のミュージックビデオは、今のように手軽に作れず、費用が高かったのです。技術進歩が発展途中でした。あの映像は当時で最新のものでした。現在の若い邦楽ファンから見ると、「安っぽい」とか、「演出が退屈」とか、「印象に残る振り付けがない」と、思ってしまうのはしかたありません。派出で視覚的な演出がないゆえに、退屈なものに見えて、興味がわかない若い邦楽ファンがいます。
ブリ少女は、ミュージックビデオを見て、退屈に感じてしまったのは、時代が違うゆえにそう思ったと思いました。

『MOON LIGHT BLUES』ミュージックビデオ。
パーティ会場でくつろぐチャゲアス。
パーティに来なかったヒロインを描いた。
『YAH YAH YAH』ミュージックビデオ。
白いスタジオで叫び歌うチャゲアスの姿。

音楽を聞いて、ブリ少女は、アップテンポな曲なら分かるけど、バラードは退屈だと感じていました。シングル曲のなかには、「イントロが長すぎる」と思われますが、彼らはメロディーを練りこんで、作り上げたそういう作風なのです。タイムパフォーマンスを重視する邦楽ファンには、だるいと感じると思います。
音楽の流行が違っても、歌声や歌詞の良さは変わらないのです。今も通じるヒット曲の鉄則があります。時代が変わっても、彼らはかっこ良くて、歌声は美しいです。ブリは年齢とともに、音楽で大事なことは、視覚的演出とタイムパフォーマンスばかりではなく、アーティストの魅力をどう上手く表現するか、気づいてきたと思います。


♪大人向けに見えたから

ブリ少女は、さまざまな音楽番組の紹介から、チャゲアスが「昔のアーティスト」「懐かしい昭和の歌謡曲」というイメージがありました。ファンの年齢層が、大人向けでハードルが高いと感じました。メンバーはブリの父親と同世代で、近寄りがたい雰囲気がありました。ブリ少女が当時聞いていたアーティストたちは、チャゲアスより若く、曲の内容が少年の流行に乗ったものでした。友情、携帯メール、自我、恋愛、夢、衝動など、少年の心境を描いた歌詞が多かったです。チャゲアスの歌詞を読んで、難しそうと感じたブリ少女は、「大人向けだから合わない」と思って、敬遠しました。
ブリの周りの同級生たちは、流行の音楽を聞いていたため、誰も過去のアーティストを聞く人がいなくて、彼らを知る機会がなく、無関心でした。推しアーティストたちから彼らの名前を聞いても、「先輩のようだけど何者か分からない」と思うばかりでした。ブリ少女は、彼らが「Mr. ASIA」(ミスターエイジア)と呼ばれるスーパースターだと、業績を全く知らなかったのです。

成人を過ぎたブリは、少年向け、大人向けだからと年齢に縛られずに音楽を楽しむようになりました。当時聞いていたアーティストの歌詞を振り返ると、やんちゃだったと抱腹絶倒します。でも、大人になっても、人生に迷ったり、人間関係がうまくいかないことは変わりません。
視野が広がったブリはもう一度、チャゲアスの歌詞を読みました。すると、表現が違っても、描いていることに変わりはないと気づきました。友情、自我、恋愛、夢、衝動を描いた歌詞があります。SNS、携帯メールがない時代でも、言葉のやりとりに迷うと考えました。チャゲアスの歌詞は、時代を感じるような流行語や俗語が一切ないのです。彼らが20代の時に書いた歌詞を読むと、若者だからってやんちゃするだけではなく、どこか深く熟考した、世界観と言葉選びを感じました。作詞者は言葉のこだわりを持っていると思いました。
今のブリの年齢に、チャゲアスは何を歌っていたか調べて、その頃に作った曲を聞くと、しみじみと良い曲だと感じました。今のブリは、チャゲアスが『SAY YES』と『僕はこの瞳で嘘をつく』を作った時の年齢になりました。


♪ニーズが合わなかったから

ブリ少女がよく聞いていた音楽は友達や家族のこと、夢に向かう内容、こっけいな比喩が多かったです。音楽性はポップスに電子音や転調を加えて、新しいことに挑戦したものでした。ブリ少女は、そういう元気な音楽を求めていました。そんなブリ少女に、チャゲアスの歌詞を読んでも、「大人は感情が複雑で面倒」「流行から遅れたもの」だと思いました。「新しい音楽が好きで、古い音楽を聞いても意味ない」と考えて、無関心でした。
「推しアーティストがすでにいるから、過去のアーティストを知っても意味ない」と、ブリ少女はすでに好みのアーティストが定まっていたので、今さら自分が生まれる前にデビューした、チャゲアスを知って、何になるのか分からなかったのです。

ブリが大人になった頃、少年時代に聞いていた推しアーティストたちは、荒い勢いは落ち着き、大人向けの歌詞に成熟してきました。2000年代で「新しい」と言われたポルノグラフィティ、ORANGE RANGE、浜崎あゆみ、倖田來未は、2020年代の今日の邦楽ファンからは「懐かしい邦楽」「ミレニアムズ世代が聞いていた音楽」だと呼ばれました。ついに、音楽の流行が変わっていきました。
ブリが求めている好みも、変わっていきました。ブリは感情を描いた、落ち着く音楽を聞きたいと求めていきました。
若いアーティストたちの歌詞を読んでいっても、やっぱり違うと思いました。「情報とリズム量が多すぎる言葉」、「ひたすらかっこ良さを見せる」、「よく分からない固有名詞」、これらの押しつけで、ブリの落ち着きたい感情と合わないのです。
「たくさんの音」、「かっこ良さ」、「固有名詞」があって、おもしろくて、メッセージ性あふれる楽曲がもちろんあります。でも、大人のブリが求めている気持ちがやっぱり違うのです。

自分が生まれた頃の邦楽は一体どんな楽曲があったのか、邦楽の歴史を振り返るようになりました。
ブリは1990年前半に生まれ、小学生の時に邦楽を聞き始めました。ブリのイメージする1990年代は、B'z、DREAMS COME TRUE、globe、安室奈美恵が活躍していた時代だと考えていました。子供時代に、彼らの音楽を聞きました。ある日、ふと気づきました。彼らは1995~1998年頃に盛り上がりました。彼らが有名になる前の1990~1994年頃は、誰が活躍していたのか研究しました。そこで気になったのが、チャゲアスでした。ブリの幼少期は、彼らがスーパースターだったのです。

邦楽研究で理解が深まり、ブリの推しアーティストたちの話を振り返って、なぜチャゲアスのことを尊敬していたり、楽曲を語り草にする理由が見えてきました。推しアーティストたちは、表現方法は違っても、彼らに影響されて、音楽を作っていたのです。彼らは、メッセージ性ある歌詞と、さまざまなジャンルを混ぜ合わせた楽曲の作風を広めた、邦楽ポップスの先駆者なのです。ブリの推しバンドである、ポルノも彼らを聞いて育ちました。彼らの音楽を聞いて、「ポルノみたいにポップスやロックなどを奏でて、優れた歌唱力で、メッセージ性がある歌詞を歌うんだね」と思ったのは、彼らが邦楽ポップスの草分けだから、音楽が馴染みやすかったのです。

邦楽史の理解が深まったことで、楽曲に対する古くささがほぐれていきました。チャゲアスの歌詞を読んで、不思議に感じたことがありました。自分が生まれる前の時代に作られた歌詞なのに、まるで今のブリを励ますような歌詞に見えました。30~40年前の歌詞と曲調でも、社会背景や個人的な状況が違っても、人間の感情は変わらず、チャゲアスの音楽に共鳴するのです。


♪まとめると難しく考えずに楽しんでいけばいい

以上、10代のブリがチャゲアスの音楽が全く分からなかった理由でした。
ブリ自身の体験から、若い邦楽ファンが彼らの楽曲を聞いてくれない理由が、以上のどれかに当てはまると思います。少年時代は好みの傾向が定まらず、分からないことばかりなのは自然です。流行や求めているメッセージが違うのはしかたありません。チャゲアスの音楽を聞いて、難しく考える必要はありません。ただ、感じるままに楽しんでください。
若い邦楽ファンが、彼らに対して、何が良いのか分からないと思われても、決して相手に彼らを強制したり、相手の好きなアーティストを否定しないように、気持ちを尊重していきましょう。
いつの時代も、歌声が良かったり、癒やされたりする音楽に、人々は夢中になります。

15年ぐらいポルノを聞いてきたブリは、初めてチャゲアスを見て、どこか似たところを感じました。2人組の個性、多彩な楽曲、歌詞、歌声、見た目が良さそうだと思い、ハマっていきました。彼らの存在を知るきっかけをくれた、晴一に感謝しています。

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