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「祈ってるだけじゃ世界は変わらない。」 PMI理事 田中佑典

この度、立ち上げメンバーとしてPublic Meets Innovationの理事に就任しました。

▶︎現職と、現職に至るまで
自分は奈良県の山奥にある小さな村で生まれました。周りは薄暗い森に覆われていて、村には病院も商店もない。毎週毎週2時間もかけて買い出しに行かないといけないし、病気になったら致命的なんですよ。ばあちゃんも年食うにつれて「ここにいつまでも暮らせんなぁ」とか言っていて、なんでうちの村はこんな風になったんやろうって幼い頃からずっと疑問に思っていました。
そんなこともあってか、幼い頃から答えのない問いを考えるのが好きで、大学の頃はもっぱら哲学や文学にのめり込んでいましたね。小説は谷崎潤一郎や夏目漱石、哲学は当時流行っていたロールズとかを読み漁っていました。小説で食っていきたいと思った時期もありましたが、何か直接人の暮らしを守れる仕事がしたいと思って探していたときに、今働いている総務省に出会いました。

総務省ってあんまりなじみがないと思うんですが、地方自治、つまり「自分たちのコトは自分たちで決める」ための仕組みを作っている省庁です。自分の村が色々国の施策に振り回された経緯もあって、国に立ち向かうみたいなイメージにすごく惹かれました。あと、一つの場所に定住したくなかったので、あちこちを転々とするキャリアパスも魅力でしたね。

長野県や外務省への出向を経験して、今はいかに人口減少の中でも持続可能な社会を創れるか、その一つの答えとして、民間やスタートアップの方々と一緒にシェアリングエコノミーの社会実装に取り組んでいます。
人口減少と高齢化で、これまでのように行政が全ての行政サービスを提供することが難しくなっている。一方で、個人のエンパワーメントが進み、民間やNPOといった社会課題に挑戦する新たなアクターが続々と登場している。次の世代にバトンをつないでいくためにいかなる社会システムが必要か、模索する毎日です。

田中が考える “イノベーションと政策における課題” 

課題: 地方公共団体の疲弊
① 課題に対し、2050年に予測される状況
人口減少が進み、大部分の自治体は大幅な収入減。一方、現在自治体が担っている多くの仕事は、オンラインやロボット、NPO、民間が代替。行政の外縁部が薄れ、社会的サービスの供給主体の分散化が発生する。
② 2050年を見越した提言内容
必要な時に必要なものを提供する「個人主体型オンデマンド行政サービス」へ移行するため、個人番号に紐付けて、個人が行政、民間、NPOから享受しているサービス情報や、個人を取り巻く周辺情報等を分析し、自動的に各種主体に指示を発する分散型プラットフォームの構築。
③ ①に向けた、現在の課題
個人番号の限定的利活用。個人を取り巻く情報のごく一部のみがマイナンバーの対象。
④ ③のために考えられる、政策・テックについての考察
ブロックチェーンを行政分野へ積極的に導入し、IoTによって収集したあらゆる個人情報の連携・統合を促進。

PMIの立ち上げに向けて
日本の地方に対して何かポジティブな変化を起こしたいと思っていましたが、行政だけで出来ることに限界を感じていました。結局右肩上がりの社会において、行政ってずっと受け身だった訳ですよ。何かあったら対応する、その能力はピカイチだと思いますが、トレンドを読み攻勢を掛けるのは本当に苦手。これは一朝一夕でどうにかなるものではなく、長い歴史の中DNAレベルでしみこんだものだと思いました。それでうんうん悩んでいたとき、代表の石山アンジュがうちに来て、シェアリングエコノミーをめちゃめちゃロビイングしていったんですよ(笑)。
でも取組を聞くうちに、何かが自分の中で変わっていくのを感じました。結局僕も既製のスキームの中で物事を考えていて、思考のイノベーションが出来ていなかった。別に行政サービスを行政だけで提供する必要はなくて、バスがないなら誰かが乗せてあげればいいだけの話。そんなシンプルな発想をテクノロジーで実現していく、不可能を可能にする可能性をそこに感じました。

それからですね、民間の持っているコンテンツと社会課題をぶつけたら面白いんじゃないかと思い、PMIの立ち上げに参加するようになりました。

PMIに携わることで、生み出したい変化
もっと色んなことから自由になればいいのに、と思います。常識や文化、思想、何なら歴史まで、無意識のうちに縛られているものが多すぎる。大事じゃないとは言いませんが、一度自分たちで価値を見直さないと、善悪混同して飲み込んでしまっている気がします。

自分は日本の地方にポジティブな変化を起こしたいと思ってきましたが、最近は地方という観点で考えている限り答えにはありつけないなと思うようになりました。結局そこに生きるのは人間ですから、今を生きる人間が、特にこれからを生きる人間が、与えられた箱を乗り越えて自由に歩き始めないといけない。PMIを通じてそんな社会を創っていきたいなと思います。

理事 田中 佑典

1989年奈良県生まれ。京都大学卒業後、総務省入省。長野県への赴任を経て、外務省にてG20、OECD等数多くの多国間交渉を経験。2017年より現職。シェアリングエコノミーの社会実装をはじめ、人口減少下における持続可能な社会を実現するための企画・立案に従事。自身の故郷が消滅していく過程をユーモラスに描写した「ふるさとの看取り方」(TEDxSaku2014)が話題となり、「コミュニティの最期を看取る」をテーマに各地で活動。現在、長野・東京の2拠点にてデュアルライフを実施。

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