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ソーシャルPM手法の勉強会 Vol.4〜 ベネフィット・リアライゼーション・マネジメント 〜

こんにちは。ソーシャル・プロジェクトマネジメント研究会の浅山です。
今年の1月から隔週で行っているソーシャル・プロジェクトマネジメント(以降、SPM)手法の勉強会について、今回はベネフィット・リアライゼーション・マネジメント(Benefit Realization Management: BRM 、以下「BRM」という)についてご紹介します。
 
BRMは、目的の実現、目標の達成、価値の実現のためのマネジメントなどと訳され、具体的には、社会課題解決、社会価値向上といったソーシャル事業で成果をあげるために、活動体の構造と進捗状況を可視化する手法である「ロジックモデル」とロジックモデルで定義したベネフィットが実現できているかを測定・可視化する手法である「ベネフィットリスト」という内容になります。

ロジックモデル

ロジックモデルとは

ロジックモデルは、組織の活動がビジョンを実現するために必要な要素(インプットー活動ーアプトプットーアウトカム)の因果関係を図式化したもの
 
目的:活動が現実に実行可能か?因果関係を評価すること
効果:活動とゴールの因果関係を明確にできる
   時系列に進捗管理が可能となる
   ミッション・ビジョン・ベネフィットを明確にして共有できる
利用シーン:自組織の活動方向性を確認/評価(年間計画など)

ロジックモデルの作成例

下図は、「都市圏における住民主体のまちづくり」を行っている組織のロジックモデルの例になります。

出典: https://simi.or.jp/logic_model/community-development

ロジックモデル作成の全体の流れ

STEP1:組織のミッション・ビジョンの設定
ミッション・ビジョンを再確認し、ビジョンステートメントとして「最終的にどのような状態を目指すのか」を明文化します。
なお、ミッションとは、組織の目的のことで、WHYで表現でき、なぜこの組織はあるのか?という組織の存在理由、使命になります。
一方、ビジョンとは、組織の目標のことで、WHATで表現でき、何をこの組織は目指すのかという組織活動のゴール、目指すべき姿のことになります。
 
STEP2:ビジョンの要素分解
ビジョンステートメントを要素分解し、中期アウトカム・長期アウトカムを設定します。
アウトカムとは、成果物の活用によって得られる成果のことで、活動が働きかけた対象に起きる変化のことです。(中期は3〜5年、長期は5〜10年を目安にします。)
 
STEP3:活動との紐付け
活動から中期アウトカムまでを因果関係で結び、組織の活動がビジョンを実現するために必要な要素(インプット-活動-アウトプット-アウトカム)の連鎖を明確にします。

ベネフィットリスト

ベネフィットリストとは

ベネフィットリストは、ロジックモデルで定義したベネフィット(=価値)が実現できているかを測定・可視化する手法です。
 
目的:ロジックモデルで定義した活動がもたらすベネフィットの妥当性を検  証し、説明できるようにすること
効果:ベネフィットの評価対象、評価方法を一覧的に示し、明確に把握・管理・合意しやすくできる
利用シーン:ロジックモデルの作成または修正時の検証

ベネフィットリストの作成例

下図は、「都市圏における住民主体のまちづくり」を行っている組織のベネフィットリストの例になります。

出典: https://simi.or.jp/logic_model/community-development 

ベネフィットリスト作成の全体の流れ

出典: https://simi.or.jp/logic_model/community-development

STEP1:アウトカムの列挙
ロジックモデルから短期・中期・長期アウトカムを抽出し列挙します。
この段階でアウトカムのロジックが繋がっていない、単なるHow To(手段)になっているなどがあれば再検証します。
また、この際に、短中長期のアウトプットに対するベネフィットも書く考え方・成果物イメージもあります。
 
STEP2:主要顧客の決定
各アウトカムが価値提供する「顧客は誰か」を考えます。
活動により働きかけたい相手(直接顧客)および、必ずしも直接の働きかけ相手だけではなく、結果として活動の価値を提供したい相手(2次、3次顧客や間接顧客など)も洗い出します。
 
STEP3:ベネフィットの決定
ベネフィットとは顧客価値(ステークホルダー価値)です。
ベネフィットとは活動成功の結果として受益者が受ける価値で、「メリット」が直接的な利益なのに対して、「ベネフィット」は本質的な目的に基づく価値となります。
 
STEP4:指標の決定
どんな指標によって、ベネフィットが実現できているかを測定できるのかを考えます。
また同時に、各ベネフィットに対して、優先順位、測定基準、基準値、目標、データ源、測定頻度なども検討します。
活動は上手くいっているのか?または修正が必要か?を測定する指標や、直接的な経済価値にとらわれず、社会価値も踏まえ、「顧客に提供したい価値」を評価する指標を考える必要があります。
ベネフィットリストは作成したら、終わりではなく、定期的にその内容を見直すサイクルを回していきます。

まとめ

社会課題解決は不確実性が高く、変化への対応が必要です。ベネフィット実現のためにも、定めた指標に対して、その達成度を定期的に評価し、ロジックモデルへフィードバックをするというPDCAのサイクルを繰り返して、最終目標を達成していきます。成果を出し価値を創出するには変化に気づくことが重要です。

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 ロジックモデルは以前、本研究会のワークショップで習ったのですが、ベネフィットリストについては、馴染みがなかったため、とても興味深い内容でした。ロジックモデルとベネフィットリストをセットで活用することで、ミッション、ビジョンから体系立てて、指標の策定まで導くことのできるので、業務においても活用ができるのではと思いました。
この記事を読んで、少しでもソーシャル・プロジェクト研究会に興味を持っていただけると幸いです。
様々な社会活動を行なっている人がいるので刺激がもらえると思いますし、知識の幅も広がると思います!

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