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「金が鉄に変わる」ノストラダムスの予言とは?

15日から開催されていた、「ダボス会議」について思いを巡らしていたところ、突然に「ジュネーブから逃げよ」というノストラダムスの予言が脳裏に浮かんだ。世界の政財界のリーダーがこぞって集う「世界経済フォーラム」年次総会が毎年開催されるダボスはスイスの都市であり、その関連から脳が昔読んだ本の記憶を導き出したのだろう。

「すべてのジュネーブ」の詩

ノストラダムスの予言詩はうる覚えだったが、「黄金のサトゥルヌスは鉄に変わるだろう」という一文は印象が強かったようで記憶に残っていた。ネットで調べてみると、何と便利なwikiサイトが存在していたので、すぐに思い出すことができた。

Migres migre de Genesue trestous,
Saturne d'or en fer se changera,
Le contre RAYPOZ exterminera tous,
Auant l'a ruent le ciel signes fera.

離れよ、一人残らずジュネーヴから離れよ。
黄金のサトゥルヌスは鉄に変わるだろう。
レポの反対が全てを滅ぼすだろう。
到来の前に、天が徴を示すだろう。

詩百篇第9巻44番

ノストラダムスの「大予言」シリーズを書いた五島勉の説では、大災害や地震、戦争、または大国の核の支配から逃げよ、というような趣旨だったように思う。しかしそういった解説では、ノストラダムスのもったいぶったような言い回しの、言葉の綾(あや)に織り込まれたものが、ざっくり抜け落ちているように感じていた。

現在の筆者の視点からの見方では、ノストラダムスは占星術師であったことから、おそらくこれは、彼が未来のある時点でのホロスコープを作成し、その解説を四行の詩にしたためたものであろうと受け取れる。

占星術ということは、黄金は太陽、サトゥルヌスは土星、鉄は火星で示されることは占星学的にいえば基礎的な知識である。この詩の元になったホロスコープが、それぞれの天体の位相と配置が際立って特徴的であったことが窺える。

四行詩の解読を試みる

改めてこの詩が何を意味するのか、思いつくままに書き出してみたい。原文からというのは無理なので、上記サイトの邦訳から考えてみた。

まず、ジュネーブとは何を意味するか。スイスの都市であることはわかるが、彼の時代で、フランスから見たジュネーブとはどのような町であっただろうか。避暑地のようなもの、というのは少し浅い考えのような気がする。

次に重要なのが、「RAYPOZ」(レポ)という言葉。何らかの暗喩か、アナグラムだろうか。あるいは日本でもよくある“縦読み”の類かもしれない。「反対の」という単語があることから、逆さに配置すると、「ZOPYAR」となり、何となくギリシア語の「Σοφία」(ソフィア=叡智)を連想させる。

仮に「ソフィア」を意味するものだとすると、反対に読ませることから、「知性とは反対のもの」と意訳できるかもしれない。現代でいうところの「反知性主義」というところだろうか。

しかし気になるのは、「黄金のサトゥルヌス(土星)は鉄に変わるだろう」という二行目の詩だ。文意から考えると、鉄に変わるのは土星ではなく、黄金の方であろう。金(ゴールド)が鉄に変わる、とはどういうことだろうか。鉱物の性質が変化する、ようなことは突飛すぎる考えだ。

そもそも思い返せば、発想の始まりは世界経済フォーラム、ダボス、ジュネーブ、と連想し、ノストラダムスの「すべてのジュネーブから逃げよ」という詩文にある、「黄金が鉄に変わる」という節の意味とは何だろう、という疑問を掘り下げることにあったのだ。

金融占星術で読む四行詩

そのような直感に従えば、やはりこの詩は社会の金融経済的な側面を捉えているものと解釈したほうが良さそうだ。ノストラダムスが金融占星術で未来を予見した、という見方で詩を読み直したら、俄然意味が通りやすくなり、描かれる情景もリアリティーが高くなる。

まずジュネーブという都市が、ノストラダムスの生きた16世紀前半では、金融経済的にどのような位置付けであったか。以下のサイトによれば、スイスは11世紀の十字軍遠征の頃から、すでに金融経済の中心地であったことが窺える。

そして「黄金のサトゥルヌス(土星)」とは、土星が「秩序、法律」を意味することから、これは金(ゴールド)の取引に関するルール、また取引価格(レート)を示すと解釈できる。そうすると、「黄金のサトゥルヌス(土星)は鉄に変わるだろう」とは、「金(ゴールド)の取引レートは、鉄(の価格)に変わるだろう」と意訳することができる。

─もう、読者諸氏にはお分かりだろう。この詩は金融市場の「大暴落」を予言している、ということを─

この詩が金融恐慌を意味するものだとすれば、ジュネーブとは「金融市場」を暗喩していると受け取れる。また三行目の「レポの反対が全てを滅ぼすだろう」にある「レポの反対」が反知性的、すなわち「理性を失った」状態であるとするなら、これは市場参加者すべてが恐慌パニックに陥り、財産を失って市場が全滅する光景を描き出しているといえるだろう。

四行目の詩は、その時が来る前に、天は予兆を示すということから、大暴落のタイミングは、金融占星術で知ることができると、ノストラダムスは述べているようにも受け取れる。

以上の解釈をもって、ノストラダムスの四行詩を新たに、五島勉風に日本語訳を付けてみた。

逃げよ、みな全ての金融市場から撤退せよ。
金の取引価格は、鉄屑と同様になる。
人々は狂乱パニックを起こし、金融市場は全滅する。
その前に、天体位相はその予兆を示すだろう。

pneuma_2007

終わりに

さて、筆者は西洋占星術で地震のほか、金融占星術も独自に研究しているものであるが、以上のような恐慌は、1929年の世界大恐慌のことなのか、はたまた未だ来ぬ金融市場崩壊の予言なのかは、筆者も判じることはできない。

ただ、昨今の中国を始めとした新興国の莫大な金(ゴールド)の購入に、いささか不安を感じていたこともあって、このような記事を書く発想を得たのであろうと思っている。

手前味噌ではあるが、筆者は株式会社投資日報社の「投資日報α」(月曜版)に、月3回記事を投稿させていただいている。ご興味がおありの方は、以下のリンクからご一読いただければ幸甚である。(有料となっています)

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