『マスク』 雑感

明るい映画が見たいなあって言ったら知り合いに勧められたので鑑賞。ネタバレあり。

総評:楽しめなかったわけではないが微妙。マスクというまあまあ難しい道具をご都合主義で無理やりねじ伏せた感じ。

○展開がご都合主義すぎる
 特にティナ関連。最初に出会ったグラマラスな美女になんやかんやで惚れられたり彼女を救ったり最終的に結ばれるという筋書きがなんとも。そもそもティナはマフィア?の女だったはずで、最初に出会ったきっかけも強盗の下見なのに、なんで善玉みたいな感じで扱われてるのかわからない。
 ティナは最後に「初めて私を飾りではなく人として扱ってくれた」とか言ってたが、スタンリーがそうしてたとはあんまり思えない。確かに恋はしてたかもしれないが、ティナの人間性とかは結局ほとんど知らないままだし。ティナもティナで、最終的にスタンリーを選んだのは彼が新しく「強い男」として映ったからでは?という気もしてしまう。
 マスクとしての数々の犯罪行為も市長という権力者に気に入られたことで不問になってハッピーエンドってのも納得がいかない。警官が不憫でならない。

○マスクを被った時の映像表現
 『アラジン』のジーニーの方がいい!カートゥーンのはちゃめちゃでなんでもできる感じを実写に置いて再現したいのはわかるが、時代的にCGの技術が未発達なのもあってか、リアルとの切れ目が隠し切れてなくてもやもやした。
 その点では『メリー・ポピンズ』を引き合いに出したい。あれは実際に実写にアニメーションを混ぜてるけど、魔法という概念と子供の世界観であるという前提があるから、非現実的なことと現実的なところが明らかに分かれていることが、むしろプラスに働いていた。
 とはいえ、以上に挙げた作品に見られるような楽しさももちろんある。ただそれらを超えてはこなかったし、後述するマスクという道具の消化不良感から素直には見られなかった。

○マスクという道具の消化不良
 結局スタンリーはマスクによって何を得て、何が変わったのか?最終的にマスクを捨てるための話ではあるんだろうけど、マスクがなければスタンリーは冴えない銀行員のままではあったはずで、平凡な日常を肯定する話にも思えない。
 マスクを被って変身することによる変化は概ね以下の二つ。

  1. 抑制が効かなくなり、自分の欲望のままに動いてしまう

  2. カートゥーン的はちゃめちゃ能力を得る

 スタンリーの変化について特に注目すべきなのは1. の点だと思うけど、その発露がかなり反社会的でびっくりした。嫌いな管理人に嫌がらせをするところから始まって、暴行やら銀行強盗まで平気でしてしまう。コメディとして見るべきシーンなんだろうし、実際笑ってもいたけど、実際ペルソナの話をわざわざ出してるしそれだけではなさそう。特に、ティナと夜の公園で待ち合わせするシーンは普通に引いちゃった。そのときはティナも嫌がってるし、ちゃんと性加害だと思う。
 マスクを被って自分でなくなることで、却って自分を出すことができるみたいな話、つまり、スタンリーというペルソナから離れることでフラストレーションを解放させることができるみたいなことが言いたいのはわかるし、割と好きなんだけど、気になることがかなりある。
 それが、これまで書いたことのまとめみたいにもなるけど、マスクは反社会的行為な欲望を解放させて、(倫理的に)悪いことをいっぱいさせてるのに、どういうわけかスタンリーの人生は好転するというところだ。もちろん、ロキが出てきたように、善悪がどうとかではなくとにかく掻き乱すという道具として描いてるんだとも思うし、それが魅力でもあるのかもしれないけど、やっぱり腑に落ちない。

おわり。

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