巨女ノ国 ~#014~

【意外にも冷静な五人目に、皆は何もないこの空の世界を受け入れようと決意しました。小人の村を飛び出しても、そこには何もない空虚な世界が広がっているばかりでした。でも、「この空虚の先にはきっと希望に満ちた巨女ノ国がある」__そう信じる気持ちは、五人ともしっかりと持ったままでした。】

 これ以上進んだら、帰ってこれなくなる__後戻りのできなくなる折り返し地点に近づいていました。ドローンのバッテリーも、これ以上進めばそろそろ帰りの分はなくなってしまいます。

 でも、誰も「もう戻ろう」とは言いだしませんでした。我慢大会をしているわけではありません。それが彼らのプライドでもあったのです。

 この先このまま東へ飛び続けても、必ずたどり着くという保証はない。それでも、飛び続けることができるかどうか。「結果が約束されていない」からといって何も行動しなければ、きっと後悔が残る。

 五人はお互いの意思を確認するかのように、無言で東の大地を見つめ続けていました。

 「これをやれば、これだけの結果が手に入るよ」というわかりやすい因果関係が明示されているものに、小人村の住人たちは食いつく傾向がありました。「時給」という考え方がその最たるものでした。「一時間頑張れば、これだけの報酬をあげるよ」という契約は、小人たちの気持ちを安心させたのです。小人村の住人たちは結果の見える努力はするけれど、結果が伴うかどうかわからないものに対しての行動を起こすことはとても億劫になる傾向が強くありました。

 五人はそんな小人村の住人達の生き方に違和感を感じていました。 

 飛び続けてもたどり着かないかもしれない。それでも、前に進み続けることには意味がある。結果が約束されていて保障されているということは、底や天がある程度見えてしまうということだ、と五人は考えていました。

 そんな生き方でいいのか?限りある命と時間を、時給に換算して消費していく先にある未来は何だろう?そもそも、どれほど時間をお金に換算すれば私たちは満足するのだろう?

 「今は仕方がない」「お金だって必要だ」__確かに、辛酸をなめて我慢せざるを得ない時期は誰にだってあるだろう。だけど、そんなことを言いながら、何も自分から行動を起こさず、一生ないものねだりで不満ばかり募らせて生きていくなんて、おかしな話だ。

 一番大切なものは、命や時間ではないのか?

 命と時間をかけてつくるべきもの__それは、未来ではないのか?

 未来をつくるには、新しい世界に飛び立つ必要がある。だから、彼らは希望を失わずに東へ東へ、飛び続けていくのでした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?