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リゲイン

引っ越してから、間もなく3か月になる。

この投稿はもともと「引っ越してから、1か月が経った」の書き出しで始めるつもりだったのに、気が付いてみればもう、節分がすぐそこだ。(よっぽど早く、上司の愚痴を吐き出したかったらしい。)

新しい街での生活にも慣れてきた。
生鮮食品や日用品の買い物ルートが定まり、さっそくまた生活導線が固定化されつつある。
それでも、この街のいいところをもっといろいろ発見したくて、ちょっと時間ができたら近所を徘徊散歩したりしている。

最近、きれいな桜が咲きそうな場所を見つけて、春を楽しみにしている。


今回の引越作業は、初めて業者に手伝ってもらった。
最近はネットで一括見積もりが便利だよと教えてもらって、申し込んだらさっそく電話がいっぱいかかってきた。
人によってはむしろ煩わしそうだったけど、自分としては申込後は受け身でよかったのでラクだった。

料金については、単身の近距離なので、どこもそんなに変わらないだろうと思っていたけど、蓋を開けてみたら結構はっきり差がついた。
大手がちょっと高くなるのかな、くらいの予想はしていて、実際大手は軒並み高めだったんだけど、最大手のサカイ引越センターだけは、ある中小が付けていた最安値と同じ価格を提示してきた。
その中小はオペレータの女の子の印象が超良かった地域密着で仕事も確実そうだったので、ほとんどそこに決めるつもりだったけど、ここは大手の安心感を買っておくべきかと、結局サカイにお願いした。

そもそもサカイが最大手だと今回はじめて知った。

サカイの仕事はけっこう良かった。
いちばん最初に電話をかけてきたし、見積もりだけでお米もくれた(チョロい)。

他の大手は、ネットだけで料金計算が完結するところも多かったんだけど、サカイはなぜか訪問見積もりも勧めてきた。
正直すこし面倒だったけど、時間を作れたので応じたら、自分の場合はネットの自動見積もりからさらに勉強してくれた。
最安値(タイ)を提示してきたので即決したら、最初からそのつもりでしたと言わんばかりに「ではこの梱包資材をどうぞ」と、その場で段ボール類をくれた。
あらかじめ玄関先まで持ってきてやがった。デキる担当だった。おかげで荷造りが滞りなく進んだ。

移動当日は、元気な若い衆が二人でやって来て、てきぱきと手際よく、そして丁寧に作業してくれた。サカイは一時期、労働問題いろいろ言われていたけど、彼らも元気にやってほしい。
ユーザとしては、全体的に満足している。

段ボールの山は、最近ようやく片付いた。

新しい部屋は、前より少し広くなった。
空間にゆとりがあると、物の定位置を決めやすくなって、片付いた状態を維持しやすいらしい。

心機一転ということで、家電は少し奮発した。
冷蔵庫は大きめのものを、洗濯機は乾燥機能付きのドラム式を購入した。

ちょうど型落ちが安くなるタイミングで、奇跡的な安さで買えた。高かったけど。

引越前、冷蔵庫は物件に備え付けのものを使っていた。
ビジホのシングルルームにあるような、四角い小さなやつだ。

どっかのビジホの拾い画だけど、まさにこんな感じ。

冷凍機能はあるにはあるが、買ってきたアイスが入浴中に溶けきらないようにするくらいの性能しかない。
だから、多めに買ってきた食材を冷凍保存したり、出来合いの冷凍食品を活用する、なんてこともしてこなかった。
知人には、よくそれで生活が成り立つな、と変人扱いされていた。

↓そもそもキッチンがこんなのだった。右下の部分が冷蔵庫。

洗濯機はといえば、そもそも所有していなかった。
洗濯機を置くスペースは、物置代わりにして暮らしていた。

じゃあ洗濯はどうしていたのかというと、入居者用のコインランドリー(有料)を使っていた。
ランニングコストはかかるが、街中のコインランドリーよりは安く、乾燥機も使えて、メンテナンスもいらないので、トータルそんなに悪くないと考えていた。狭いが便利な物件だった。

引越の見積りの電話で、冷蔵庫も洗濯機も運ばないことを伝えると「買い替えですか?処分が必要ならこちらで引き取りますよ」と提案してくれた業者がいたけど、もともと持っていないと言ったらちょっと引いていた。いや、洗濯してないわけじゃないから。

かくして、ちょっとだけ現代人っぽい生活を取り戻した。と思っているのだが。
それでも職場なんかで、「最近の冷凍パスタのクオリティが高い」という話や、「明らかに不要と思っていた洗剤の自動投入機能が地味に便利だ」という話をすると、まるで原始人を見たかのような反応をされる。
やはりまだ変人らしい。


そういえば退去の話。

SNSで定期的にバズるネタで、退去費用の高額請求のアレがあるが、不本意ながら私も体験することになった。

もともと学生時代から住んでいた敷金礼金更新料なしの安物件だったし、長年住んだこともあってそれなりに傷みは出てきていたので、ある程度の退去費用はかかると理解していたのだが、退去に立ち合いに来てくれた担当は、壁やフローリングの貼り換え費用もきっちり全面分を満額請求しようとしてきた。
黙って聞いていれば「より詳細な金額は後日連絡しますが、だいたい20~30万円くらいになるんじゃないですかね」とのこと。
先に家電の購入を決めていたから、うーむ、さすがに全額払うのはしんどいな、となった。

バズるネタだと、ここから「弁護士を通して〜」みたいな展開になるんだろうけど、こちらはあくまで平和主義者なので、いきなり敵意むき出しで強硬姿勢に出るのも違うよなと思って、次のようなことを言った。

「そうですよね、まあまあ年季入っちゃってますよねー。ただ、僕もまあまあ長いこと(目力)住まわせてもらってるわけじゃないですか。設備の法定耐用年数(目力)的なところも考慮してもらえると嬉しいんですけど…(目力)

担当「耐用年数…、そうですね…」

「また後日詳細ご連絡いただく際で結構なんで、十分に(目力)ご考慮(目力)いただいた内容として、最終的な額を聞かせてもらえると嬉しいです。いやー、恥ずかしながら懐事情が寂しいもので、どうかお手柔らかに(目力)お願いします!」

後日、担当から電話があり「上司に確認したところ、私の計算が間違っていました」との説明があった。
結局4万円くらいで済んだ。
クリーニング代+その他諸経費と考えれば妥当かと受け入れた。
「誠実に対応いただきありがとうございます」と言っておいた。

(うちの場合ワンチャン狙いで言ってきてるだけっぽかったからすんなり覆ったけど、世の中にはマジで話の通じない業者もいるらしいから、みんな注意しような!)

孫子曰く「戦わずして人の兵を屈するは善の善なるものなり」

次の物件は、契約時点からしっかり詰めてある(目力)ので問題ないだろう。


ところで、前の物件はユニットバスだった。

子供の頃は湯船に浸かること自体が面倒で、実家にいた頃から、季節を問わず、シャワーだけで済ませることがもっぱらだった。だから、ユニットバスでも何の問題もなかった。
最後の3年はサウナ・銭湯にハマっていたけど、自宅では、結局退去のその日まで、浴槽にお湯を張ることは一度もなかった。

新居にはリンナイさんがいた。

\オフロガワキマシタ!/

引越から少し経ったある日、入居後初めてバスタブに湯を溜めた。
サウナチャンスだったけど、その日はあえてサウナには行かなかった。

買ってきた風呂椅子を置いて、シャワーで身体を清めて、熱めのお湯に肩まで浸かった。
静かで誰からも邪魔されない、自分だけのプライベートな時間。
少しのぼせた身体を拭き上げ、外気を取り込んで程よく冷えた部屋に戻る。
ソファに身体を預け、ゆっくりと目を閉じる――

あまりにもだらしなくととのうので、最近は「ちらかったー」の方が正しい気もしている。

「…あぁ、これでいいじゃん」

正直、そんな考えもよぎった。
結局次の日サウナに行って「やっぱお前しかいねぇ(イケボ」とヨリを戻すことになるんだけど。

でも原始人にとっては、ボタン一つで沸かせる家風呂の良さもかえって新鮮で、このところ、おうちでのお風呂タイムは日常の楽しみのひとつになっている。


ところで、銭湯が少なくなっている要因として、当たり前の話だが、家庭風呂の普及があるそうだ。
銭湯好きの端くれとしては、自分が家風呂の良さを再発見することに対して複雑な気持ちがある。

でも、別の「好き」を通して、普段の「好き」の解像度が上がる、なんてこともあると思うんだよな。
おうちの風呂の良さを知るほどに、お風呂屋さんのありがたみがよく分かる、そんな具合いに。

あるものの良さを認めるときに、他の何かと比べる必要なんて、本当はないはず。
ないはずなんだけど、でも残念ながら凡人なので、そんな絶対的な感覚なんてものは持ち合わせていなくて。
だからこそ色んなものに触れ、取り入れ、比べたりしては、新しい自分を見つけている。

身の回りにある良さに、いつもゆるく開いた状態でいたい。
それを探しに、散歩するのかもしれない。
そうして歩き疲れた後の、お風呂はきっと気持ちいい。

今日だって、たぶん。

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