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安井金毘羅宮のご利益

今までに、誰かと縁を切りたいと思ったことはなかった。

でも、もしかして私…、と自分の心に聞いてみた。

若いころから、職場の上司や人間関係には恵まれてきた。
多少嫌な思いをすることはあっても、そこは仕事だからとやり過ごしてきた。

それがここ数カ月、いや出会った時から、無理をしてきたことに気づいた。
今まで気づかないふりをしてきたのかもしれない。

とにかく普通に仕事が進まない。
いくつか尋ねても、1行メールが返ってくるだけ。
領収書などの提出書類も、内容を満たさないものばかりで手を焼いた。
仕事を丸投げされ、コミュニケーションが取れないのも初めてだった。

特に昨年末あたりから、周りも心配するレベルになり、大丈夫!と言えなくなっていた。

そんなことから、先日思い立って京都の安井金毘羅宮に参詣した。

あのお札が貼り付けられた石で有名な、悪縁を切り良縁を結ぶご利益がある神社だ。


穴をくぐる人で長蛇の列だった。
縁切りなのか、縁結びなのか、お願いしたい人がこんなにいるなんて。

列に並ぶのは諦め、本殿に参り、御朱印をいただいた。

お願いごとは、人ではなく、今のがんじがらめとの縁をお切りくださいと手をあわせた。

穴を通らないで帰ってきたけれど、形代を貼ってくればよかったんだと、後になって気づいた。


そして今日は5日ぶりに、私の悩みの人に会った。

先週のパーティの料理代を、私が3万数千円立て替えていた。
それを精算しようと、彼女は私の肩越しにお金を差し出した。
くしゃくしゃの千円札を、机にひとにぎり、またひとにぎり。

数え間違いがないか確かめてくださいと促され、千円札を1万円の束にした。
結局千円札25枚と五千円札2枚、あとは小銭だった。

会費を集めたままなのだろう。
金額に間違いはないから問題ない。
4万円出されてもお釣りを渡せるよう用意していたのは余計なことだった。

そんなことよりお金の扱いがぞんざいで、ぞっとした。
研究費を管理していると、その人の金銭感覚が感じられるものだけれど、こんなところにも出るのかと思った。

その後、思いがけない展開から、来年度の勤務の話になった。

二人で話して決められることではないとわかっていたけれど、自分でも意外なほど思ったことを言えた。

定年退官した教授から、「ミタライさんのことだから、来期も頼むと言われて断れないでいるころかと思って」とメールをもらったばかりだった。
「もっと自分を大切にして」と言われたことにも力づけられた。

しかし頭のいい人って、責任逃れが上手いのか、それとも賢さは研究にしか使わないのか、人のことを理解しない人が多い。

今日の話も、あなたのことで困っていますと言ったつもりだが、伝わったかどうか。

ただ、今の状況はひどいので、すぐにでも辞めたいと思っていることは伝わったと信じている。

そこでそのとおりにいかないから、教授も心配してメールしてくれたんだろうけれど。

安井金毘羅宮のご利益は、少しあったようだ。
ひいたおみくじには「目上の人の力添えが」と書かれていたのを思い出した。

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