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ひびのこづえさんの展示

ふと九州に行く話が舞い込んできたので、ついでに博多の友人のところに立ち寄ろうと連絡をとったところ、幸運なことにスケジュールがあって会えることになった。過去に何度も泊めてもらっていたのだけれど、
「布団を捨てちゃったので、買ってもいいけどな、でもせっかくだしどこかに泊まりに行く?」というので博多のホテルでお泊まりかと思っていたら、提案されたのが熊本。あら、さらに遠くに行っちゃうか、と笑って驚いていたら、「こづえさんの展示やってるよ」との一言で行こう!となった。

こづえさんの展示なら・・と思って関西の友達にも声をかけてみたら、「行きたいけど翌日予定があるから無理やなぁ。」と断られたのが、しばらくしたら「日帰りで行こうかな・・」になり、「前入り方向で検討するわ!」と、その日のうちに話がひっくり返った。というわけで、あれよあれよという間に私の九州行きにくっつけて、友人たちと熊本で会うことになった。

直前になって、元々の発端の私の九州行きが無くなってしまうという本末転倒すってんころりんな話にもなり、それでも熊本に向かおうとしたら途中で珍しく夏風邪に遭う・・という、なんなんだーとおもわないでもないくらいの道中になったのだけれど、無事に夜にホテルでみんなと合流。飛行機で駆けつけた友達はご飯にも間に合わず、部屋でいきなり団子を食べながら延々と喋った。

そして翌日、朝から美術館に向かった私たち。とりあえず展示を見て時間があったら熊本城にでも行くか、と言っていたのに、朝に入って、お昼ご飯に美術館前のデパートに行った以外は、ずっと美術館にいたのだった。それくらい素晴らしく内容が詰まっていて幸せな空間だった。ひびのこづえさんの展示は過去に何度か見ているけれど、ずば抜けて素晴らしかった。初めて展示したというハンカチの原画は舐め回すほどに何度も何度も見つめたし、衣装の展示コーナーでの映像は全く持って全部は見れなかったけれど、それぞれ自由に会場内をぐるぐると回って、ショップコーナーでも延々と悩んで、気づいたら夕方で、ゆっくりお茶する暇もなく、バス乗り場で大したお別れもせず慌ただしく空港バスに乗り込んだ。

「再入場可能なので外に出て水分補給などしてくださいね」と声をかけてくださったスタッフさんをはじめてとして、入り口やちょこちょこと小ネタを教えてくださる監視の方も、とても作品や展示を好きなんだなぁという感じがじわりと出てきて、それがこづえさんの手で生み出される、手でしか絶対作れない世界観と相まってとても心地よい空間だった。なんというか、生き物的というか本能的というか。夜中に作品たちがゴソゴソ動き出して、喋ってたり向きを変えていてもおかしくないような、作品も空間も息をしているような、そして、こづえさん本人もどこかで息をしているような、うまくいえないけれど、生きている展覧会だったと思う。こんな感触はとても久しぶりだ。

熊本行きを決めた後に、偶然再会した人から教えてもらって、こづえさんが衣装を手がけたダンスを見ることができた。夏のいつ頃かに別の友人が手配してくれていた舞台もこづえさんの衣装でうっとりしていた。そして、制作が遅れ会期終了間際に出来上がったという図録の販売を知り、これまた取り寄せた。すってんころりんしながら、予期していなかったところにたどり着いたら、どんどん紐で繋がっていたような感じだ。いろんな人が上手く誘導してくれたような。

図録はちらり見たけれど、もう開けただけで自分がホワホワしそうだ!という直感がびんびんしてきて、あんまり長く見ていられない。ずっと行ったり来たり浸っていられそうで、そこがまだちょっともったいないような気がして、まだじっくり見ていない。ミルクティでも入れて、どっかり座って眺めたい。




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