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本を読もうと思ったとき

大昔の話だ。

好きな男の子がいて、とても好きだったのだけど、どうもこのまま好きでいては自分が苦しい、つらいだけだと思ったときに、自分から離れる決心をした。

その時、私は15歳。

離れたあとはなんとも寂しくて孤独で、ぽっかりとあいた空白を埋めるものがないとやるせなくて。

その時、本を読もうと私は思った。
まだ知らない世界のことを、まだ知らない学問や知識を、いくらでも空いた時間で学べると。
もう傷つくことも苦しむこともなく、私は本を読むことで成長できるのだと。

…そんなことを思い出していた。

十二年間続けてきたパートの仕事を辞めようと先日決めて、そのあと空いた時間に何をしよう、どうしたら寂しくなくなるか考えていて、その頃と同じ結論に達していたのだった。

本を読もう。

どんな本を読もうか。図書館にいって背表紙を眺める。

私のまだ知らない世界が、冒険が、ここにはある。おぼれそうなくらいの、本の海だ。

それにしても、何かを辞めようと決めるときの心のパターンがとてもよく似ていることに、今更ながら気がついた。

なんだかわからないものにとても傷ついて、辛くて、疲れてしまって、逃げるように辞める。
そのパターンだ。

自分の、心地よくいられるペースでいられないから、そこから離れる、逃げる。それは正当な防衛反応なのだろうけど。

40年という年月が過ぎても、同じパターンを繰り返していることに、変わらないなぁと苦笑いする。

あの15歳の決断をしてからのちはどうだったのか、ゆっくり思い出してみよう。

はたして本を読んだのか。本は読めたのか。

昔の自分に尋ねても、はずかしそうに首を横にふるだけだ。

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