30頁 「夜更けの餃子、それをエモいと言わずして。」



告白と気持ちで言葉が揺らぐ

満足できずに開けていくだけが夜じゃない
終わらせるのがもったいなくて更けていく夜だってある

今日よ ずっと続け

真実を飲み込んでする火傷と誤算と
言い訳と本当と秘密が笑う
真っすぐさに無抵抗
駆け引きもゲームも要らない
誰かが広めた噂話みたいに消えてしまえ

夜を更けるのは時間ではなくて恋なんだエモーショナルに生きろ



「まだ帰りたくない」は告白「小腹が空いたね」は気持ち

夜更かしは今日に満足していない証書き忘れた「独りだったら」

六本木交差点から二つ先の路地裏古びたビルの階段一つ分登って木製の扉
引き戸のようなのに押さねば開かずそれもまたこの街そのもの夜も更けて

店の名は『52』知らされた一つ目の秘密
上下する角ばった包丁光を帯びる米粒鍋から舞い上がる湯気空腹の絶頂

「春巻き」「焼売」「餃子」今夜は点心祭り目につく限りの白い文字を詠む

「餃子は注文を受けてから作るんです」丸まった皮の原石をひと押し
やわらかな手で華麗に包まれていく餡を見てそれになりたい

少量多皿リスク分散パラレルキャリアそんなの知るか焼き目の潔さが眩しい
「熱いものを熱いと言って食べるのが好きなの」と言い訳は本当で誤算で

ショウガ、ネギ、ニラ、ああいや主役はこっちじゃなかったね、なんて。
ひとつ、ふたつ、みっつと子供の頃に数えたかくれんぼみたいに。

モチモチの優しさに守られた荒々しい肉の奔放さ
「醤油など無用、ほんの少しの酢で十分」また一つ教えてもらった秘密

その真っ直ぐさの前でもう無抵抗
口説き文句山手線ゲーム噂話「ジューシー」と一緒に何処かへ消えてしまえ

私はそんな事より君の事が知りたい
「昔の話を聴きたいと思ったら恋の始まり」

10年物の紹興酒より10年前に好きだった唄のことを教えて欲しい
生まれ年のワインよりもよく描いていた絵で生まれ故郷を見せて欲しい

火傷でヒリつく舌にはレモンサワーがぴったりで
慣れないハイボールの氷をカランと鳴らす君を私はもっと好きになる

夜更けの餃子、それをエモいと言わずして。
この気持ちはきっと、wikipediaにだって説明できないんだ。

辞書定義そんなものに納まるほど感情は簡単じゃないし
マニュアルがあるような単純なものじゃない

その扱いにくさ魔球変化球直球で私自信を翻弄する
でもそれがエモいって、ことでしょ?

好きと恋と愛で揺れる日々よ エモくあれ

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