28頁 「愛しき待ちぼうけ」



会えるまでにかかる時間が長いたった何十時間
日数に換算するとたった数日

悲しみは待ち時間なのか それとも待てない時間
目の前にくるものを待つまでもなく

待つ必要はなくなった町で
最短距離で 目指すものを いつだって手にしたい

失敗と隣り合わせの冒険
ワクワクとドキドキの日々は いつのまにか終わっていた

安心と安全は背中合わせで どこか違うみたい

いつのまにか忘れていた
信じていられるから
遠回りだって できたということ

回り道に楽しさを見出すこと
偶然の悪戯に心を委ねることも
楽しいよって 本当は知っていた

誰かの眼で測れなくたっていいじゃない
自分の心で測れば

ゆっくりの景色は旅の軌跡
出会ったものが 心の在処になっていく

待つことと 信じることは似ている

思ったようにいかなくても
そういうものを笑えることって 大事かもね

そういうことを大切にできたら
待つ時間も 本当は 出会える瞬間の中に 入っていることに
気づけるの かもね


Amazonでキッチン用のラック配達予定日に3日後の日付の表示
3日もかかるたかが3日72時間キッチンラックがなくても死なない

夜更け過ぎに雪に変わる雨永遠に来ないきみ一人きりのクリスマスイブ
この歌は今やもう成立しない山下達郎の「クリスマス・イブ」

地上10000mの飛行機からでもLINEができる今「ごめん、30分遅れる」

「きみが来ない」時代は終わった終電と始発のあいだの真夜中

私たちは、いつだって最短距離を選べる。

乗り換え案内Google Mapは最短ルートAmazonのシステムは「お急ぎ便」
レストラン映画レビューサイトは最短で“おいしい“おもしろい”に辿り着く
身を呈する失敗を飛び越えるベスト直通ルート消えてくセレンディピティ

ふいに好きな曲が流れてきた時の嬉しさに泣くラジオの前で

回り道の途中でふいに訪れるという偶然性数字やお金で測れない幸せ
手に入るものは実際に待ってみないと分からない「待つ」を選んだ人の特権

たまには乗り換え案内を使わずゆっくり目的地を目指してもいいじゃないか
1枚のワンピースを買うのに1ヶ月待ってみてもいいじゃないか
つまらない映画ばかりにあたって悔しい思いをしてもいいじゃないか
レストランが最低で恋人と「まずいね」て笑い合ったっていいじゃないか

君が来ないクリスマスイブは悲しいどうせなら待ちぼうけのノスタルジー
時々は世界の隅っこから「待つ」を呼び戻して回り道をしながら戯れたい


今を解き放てばすべて怖い
誰にも見えない分かっているはずのそれは冒険で旅で
何に出会うか分からないその一歩はほんのささやかな勇気をくれる

出会って失敗なら失敗したんじゃなくて失敗に出会ったんだ
(この違い分かるかな?)

探し続けている
見つけてきた これは 誰にも決めることができない 私の人生だ


ここから先は

0字

¥ 100

詩人です。出版もしております。マガジンで書籍のご案内もいたしております。頂いたサポートは出版の費用にさせていただきます。