羽海野チカ「ハチミツとクローバー (6)」

自分の手だけで
何を作れるだろう

自分の足だけで
どこまで行けるだろう

怖くて蹲って
悔しくて泣いて
そんな後ろ姿に

ぼくは何も言えなかった

優しさで涙を止められると思ったけれど
何もしてない自分に どんな言葉が言えるだろう

そう
彼女は負けているのでも
傷ついているのでもなく

戦っているのだ

一緒に戦おうなんて言えない
それは一人きりの戦い

僕は どこに行くんだろう
その後ろ姿が とても強かったから
自分だって どこかに行きたいと思った

どこかにそんな自分がいるなら
どこまでだって 会いに行ってやる

辛くても この手が空っぽでも
泣きそうでも 勝手にお腹がすくし
やめることができない自分だから
どこまでだって 叫んだり走ったりしながら
自分を出し切りながら 新しい自分になっていく

どうやったらいけるだろう
そんなんじゃないんだ
どこにいけば なりたい自分になれるだろう

それは この手が空っぽだって
怖くても悔しくても悲しくても
虚しくても寂しくても自分が駄目だって思っても
認めないと 進めないんだ

そこからなんだ
本当に始まるのは

ぼくの物語は
まだ始まってさえもない


―――――――

ハチミツとクローバー(5)
https://note.mu/poet_ohno/n/n0fabc852ff4d


ハチミツとクローバ―(7)
https://note.mu/poet_ohno/n/nf501ff264742?magazine_key=mf112a52f1a27


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