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都内在住の中3不登校がいかにして進路を決めたか、あるいは通信制高校の選び方の話。

検索でこのnoteに辿り着いたあなた、あなたのために書いています。

今は2024年の4月で、娘が無事に通信制高校に入学したところです。

公立中で不登校だった娘と、いかにして進路を決めたのか。色々調べて試行錯誤したことを、今悩んでいる誰かのために残しておきたいと思い、書いています。

前提条件

不登校は千差万別です。我が家のケースを書いたところで、あなたに当てはまるとは限りません。あくまで一つの例として見てください。その中でも、できるだけ汎用的に役に立ちそうな事を書いてゆきます。

いちおうムスメの不登校の状況にについて簡単に触れると、

・小4のいじめをきっかけに不登校が始まる
・中1の2学期から断続的に不登校となりコロナ禍も重なる
・中1で発達障害の診断書を取る(ASD、言語凸/WM凹)
・中2は完全不登校、秋から週1でフリースクールに通い始める
・中3からは週3でフリースクールに通い、卒業

という感じです。

ちなみに中1の2月に奥さんが亡くなり、以下の取り組みは父である自分がワンオペで行っています。大変そうに見えるかもですが、「不登校の進学」というデリケートなイシューについて「夫婦間での調整コストがゼロ」だったので、最小のエネルギーで効率よく進められたのでは…と思います。

選択肢の整理:進路にも「定型」は無い

不登校の場合、良くも悪くも選択肢の幅が広がります。東京の場合、たぶん軽く100校以上の選択肢があると思います。普通科や高専などを除外し、不登校経験のある生徒を受け入れる体制のある学校の選択肢を簡単に整理します。

公立:定時制高校(チャレンジスクール)
朝・昼・夜の三部に分かれた定時制高校。授業時間が短いので単位取得のために4年での卒業が基本ですが、「昼のコースで夜の授業も選択して、3年で単位を取って卒業する」ということも可能です。むしろ最近はそちらが主流。
倍率は、昼>朝>夜の順です。朝は起きられない子が避け、夜はかなり時間が遅くなるので女子は敬遠されがちです。

チャレンジスクールとは東京都の制度で、定時制高校の中で「中学に行けなかった子」「他の高校に通えなかった子」などが再チャレンジできるように、受け入れ体制を整えた高校です。夜の部の生徒は学食で夕食をとることができるのもポイント(不登校あこがれの給食!)。

私立:通信制高校
認可が容易なのでさまざまな形態の学校が大量にあり、非常にわかりにくいです。パンフレットを読んでもマジわからん。通信制高校として認可を取り、そこに専門コースなどのオプションを組み合わせた学校がほとんどで、そのオプション部分が各学校の特徴になっています。

通信制高校+サポート校
通信の自主学習だけでは単位を取りにくいので、別途「サポート校」と呼ばれる塾のような提携の施設に通い単位取得をサポートします。サポート校は手厚いですが、通学するサポート校の費用は別にかかりますし、「高校」として認可されているのは通信制高校の方なので、いわゆる高校無償化の対象になりません。ダブルスクールになり学費も高いので、我が家はまず除外しました。

通信制高校の全日型
わりと主流なのが、通信と言いつつ全日型で通えるパターンです。週3〜5で学校に通い単位を取ります。もちろん元々通信制高校なので、オンラインで学べるコースも併設されており、登校が無理なら途中でオンラインに切り替えられる学校も多いです。メイクやeスポーツなど様々なオプションコースがあり、やりたいことから選ぶこともできます。

他にも色々ありますが、東京の場合、公立なら定時制/チャレンジスクール、私立なら通信制から選ぶのが、比較的に多数派になると思います。

選び方①:まずはゆるく条件を決めよ

膨大な選択肢からどのように決めてゆくかですが、まずは絞り込む条件を決めることになります。

しかし、後述しますが、絞り込む条件自体が「オープンキャンパスに参加すること」によって徐々に定まってきます。なので、最初はゆるく条件を設定します。

まずは通学経路。もしお子さんが(鉄とか)電車の乗り換えに不安がなければ、通学圏を広げても良いでしょう。我が家はかなり不安があったので、乗り換えは1回まで、通学時間は1時間以下を想定しました。

次にオプションとして、我が家の場合、娘は絵が得意なので、イラストや美術に関連するコースのあるところを選びました。実はこの条件、最終的には使われないのですが、一旦の指標としました。とにかく、何か興味を持てそうなこと、楽しそうな雰囲気、聞いたことある名前の学校、何でもよいです。

ここで必要なことは、「とりあえず見学に行く学校」を「数件決める」ということです。足を運ぶことで、見えてくるものがあります。

選び方②一括資料請求:鬼電タイムを活用せよ

条件で検索し、一括で資料請求できるサイトがいくつもありますので、これを利用します。ここでいくつかコツがあります。

資料請求すると、各学校から電話がかかって来ます。10校資料請求したら10本かかってきます(私は20校以上請求したのでえらいことになりました)。そして、お子さんの学年や通学状況などを聞かれます。「いや高校の資料請求してるんやから、中3の受験生に決まっとるやろ?!」と思うかもですが、通信制の場合は「高校に行けなくなって編入を検討する」子も多いので、状況を確認してくるのです。じゃんじゃん電話が来るので、資料請求してから1〜2週間はいつでも電話を取れる体制にしておくと理想的です。もちろん、こちらからかけても親切に対応してくれます。

閑話休題ですが、営業熱心な学校、カネの匂いがする学校についてどう思われますか?「学校なのにガツガツしていてなんだかなぁ、だまされるんじゃないかなぁ」と思いませんか。確かに悪質なケースもあると思います。しかし、高校は義務教育ではないし、学校運営は慈善事業ではないので、運営には資金が必要です。資金が潤沢な学校と、常に予算の無い学校、どちらが本業の教育に力を入れられるでしょうか。また、いまどき金儲けだけで表面的なサービスをしてもすぐにバレるし、なにせ子供は学校に不満を持ちがちですから、そう簡単には騙されないと思います。なので私は、営業熱心な学校を「質の高い教育のためにしっかり資金調達している、ビジネス視点のある学校」としてプラスに評価しました。

もう一つのコツとして、電話口で「そちらの学校の特色はなんですか?」と聞いてみるのが良いです。パンフレットには大量の情報が書かれていますが、「一言でいうとどんな学校なのか」をパンフレットから読み取ることは難しいです。電話では複雑な説明はできません。言葉だけで端的に説明できるのは、その学校が本当に得意なところ、価値のあるところだけになります。最初のフィルターとして、電話で特徴を聞くのは効率が良かったです。

また、気になる質問事項があれば、あらかじめメモにまとめておくとスムースに聞くことができます。質問内容については次章で。

選び方③:質問を整理せよ

電話でもオープンキャンパスでも質問ができますが、何を聞いたらわからないですよね。気になる心配事はいろいろあると思いますが、大きく分類すると、以下のどれかに含まれると思います。

  • どんな学校なの?

  • 不登校だったけど、通うことができるの?

  • 卒業後の進路はどうなるの?どこまでフォローしてもらえるの?

です。いくつか例を挙げておきます。

  • どんな学校なの?

・ひとことで言うと、どんな学校?
・生徒数(規模感。意外とパンフレットにも明記されてない)
・専門コースがある場合、その人数比や人気度(選択の参考として)
・男女比(かなり偏っている場合があるので、少数派になっても良いかどうかの確認)
・編入生について(比率は?他の高校が合わずにわざわざ選んで編入してくる理由は?)

  • 不登校だったけど、通うことができるの?

・不登校経験者の比率(正確な数字は出ませんが、大体何割、とかの回答はもらえます)
・発達障害への対応(具体的に対応を謳っている学校は少ないですが、答え方で理解度はわかる)
・合理的配慮の具体例(板書の写メOKなど。対応力の引き出しを見ます)
・通えなくなった場合のサポートは?(単位や出席がギリギリになった時のリカバリ方法、オンラインへの切り替え方法など)
・いじめ、トラブル対応は?(LINEトラブルにどう対応しているか?など)

  • 卒業後の進路はどうなるの?どこまでフォローしてもらえるの?

・進学率(進学率=専門学校なども含めた数字を出してくるので、大学の進学率を知りたければ「大学の進学率」を確認すること)
・卒業生や専門コースの具体的な進路(最終的な就職先や傾向)
・大学の推薦枠や提携する専門学校への優先入学制度などの有無

などなど。お子さんの状況や心配事に応じて、聞きたいことを考えてみてください。

質問をまとめて、回答をメモするノートを常備してください。学校別にページを分けるとよいです。

オープンキャンパス:現場100遍でものさしを作れ

アタリをつけたら見学です。まずはどこでもいいので1校、オープンキャンパスに参加してください。親だけでもいいです。先生もスタッフさんも100%親切です。質問も丁寧に答えてくれるでしょう。パンフレットだけでは絶対わからない校舎の雰囲気、生徒の様子を感じてください。1学年数百人で自社ビル校舎のマンモス校から、貸しビルのワンフロアで塾のように運営している小規模校もあり、雰囲気は全く違います。

ここで注意なのが、最初の1校で「ここでいいかも…」と思ってしまうことです。

(先生には歓迎されるし、色々配慮はしてもらえるし、多少気になるところもあるけど、今までと比べたら大したことない……今までの公立中の塩対応は何だったんだ……それに比べて……好き!

と、すぐに恋に落ちてしまいます。が、いったん耐えて他の候補も見てください。ハッキリと違いがあります。他を見ることで、同じところと違うところ、小さな違和感の正体などがわかってきます。

お子さんが同行する場合、何が気に入ったのか、何が気にいらないのかをよく聞いてください。我が家の例ですが、「ピアスがOKか禁止か」をすごく気にしていました。これは単にピアスの話ではなく、「ずっと学校に行けずにキャンパスライフに憧れてきた」娘が求めていたのが「とにかくおしゃれして、青春したい!」という気持ちが強かった、ということが浮き彫りになった例です。(そして、最終的にはピアスNGの学校を選びました…それを超える大事なものがあった/気づけたということです)。

オープンキャンパスのコツとして、在校生に話を聞く機会があればチャンスです。営業モードの大人たちは都合のいいことしか言いませんが、子供は正直です。私はいつも「学校の困り事」や「今の悩み」など、学校生活でネガティブに感じることについて質問していました。「進路が決まってないのが不安で…」と答えてくれた2年生のいる学校は、大学進学率が低かった…など。

3校くらい回ると、自分の中に物差しが作られて、どこも同じところと違うところ、本人にとって何が大事で何が大事ではないか、だいぶ見えてきます。本人の同行が難しければ、親だけでもたくさんの学校を見ると良いです。そして必要なら最初に戻って、新たな条件で絞って資料請求をします。

オープンキャンパスでわかる、通信制高校のタイプ

10校以上、20回以上のオープンキャンパスに参加して、通信制高校にはいくつかのパターンがあることがわかってきました。

おとなし型
イメージ通りというか、おとなしく静かなタイプの生徒がモジモジしつつ集まっているタイプの学校です。雰囲気が優しく静かで落ち着いているので、こういう場所が馴染むタイプのお子さんも多いと思われます。ただ、全体的にちょっと暗い雰囲気になりがちです。公立のチャレンジスクールはだいたいこの枠に入ります。

はっちゃけ元気型
意外かもしれませんが、めちゃくちゃ元気で盛り上げるタイプの通信制高校があります。これはプロモーションの一環として、オープンキャンパスの盛り上げにリソースをしっかり使うタイプの学校で、オーキャン自体を大事な学校行事として扱っているパターンです。

その先の進路明確型
専門学校が経営母体で、その専門学校への優先進学がコースがあったり、公務員試験に特化していたり、進路を明確にしたタイプの学校があります。やることがハッキリしている子には良いと思います。オリンピックのアスリートが高卒資格を取るために多く在籍している学校、生徒が芸能活動をすることを想定している学校もありました。なるほどねぇ。

シンプル型
余計なオプションが少ないタイプの学校。一見地味ですが、リソースを本業に全力投入しているので無駄がないとも言えます。ムスメが某フリースクールに通っていた頃、プログラミングなどのキラキラした各種プログラムを使いこなせず「通うのがやっと」派だったので、こういうシンプル路線もいいな…と思いました。発達障害への対応を謳い、手帳持ちの生徒が半数近くを占める、合理的配慮の鬼のような学校もありました。

もちろん、上記のパターンが掛け合わさる場合があります。おとなし型×シンプル型とか、はっちゃけ元気×進路明確型、など。

受験のスケジューリング:プランA、B、さらにCの構えで

多くの通信制高校では面接試験がメインで学科試験があったり無かったり、「名前を書ければ受かる」とか言われていますが、不登校が急増している昨今、人気校は推薦単願でも落ちます。じっさい我が家は最初の志望校を推薦単願で落ちました。推薦×単願の最強カードで落ちるなんて!

受験は強いプレッシャーとストレスがかかるので、可能であれば練習の意味でも場数を踏んでおくことをおすすめします。希望の順位が低くても、早めに行き先が決まれば、その後の受験のプレッシャーも大きく下がります。まずは併願で受験を。

ポイントは、受験の時期が、かなり早い10月ごろから、公立中の卒業後の3月ギリギリまでの幅広い期間で実施されるということです。つまり、試験日がバラけているので、複数受験が受けやすいということです。3月ギリでも受けられるかどうかは学校に問い合わせればわかります。人気校なら早くに定員に達しますが、最後まで余裕のある学校も必ずあります。不安を最小限にするためにも、時期をずらして第三候補くらいまでの受験は計画しておくべきで、そのためにはなるべく多くの学校を見学し、「最高じゃないけど行ってもいいかな」レベルの候補を複数決めておく必要があります。

我が家は6月くらいから学校見学をスタートしました。夏休みくらいから回り始める人が多いと思います。

面接受験対策:志望校のマニアになれ

さて、通信制高校の受験となると、面接が主になると思います。まず共通して聞かれるのは「なぜこの学校を選んだか?」、言い換えると「あなたはこの学校をどのくらい理解していますか?」ということです。お互いのミスマッチを防ぐ意味でも大事な質問です。この対策には、シンプルなコツがあります。

オープンキャンパスで志望校を決めたら、学校説明会にもう一度参加しましょう。同じ内容でOKです。なぜか?学校説明が1時間あったとして、あなたは1時間のプレゼン内容を全て理解して記憶できますか?2度聞くことで理解が深まり、新たな質問も生まれてきます。学校側も、熱心に理解を深めようとする家庭を歓迎するでしょう(予約の時に「同じ内容ですけどいいんですか?」とは言われる)。特に、受験する本人は緊張もしているし、説明会を1度聞いただけでは半分も理解できていないと思います(ムスメは寝てました)。我が家は「ここ!」と決めた学校について、説明会だけでも3回通いました。志望校のマニアになる。これが唯一最大の、面接試験対策のコツです。

けれど、最後はどうにかなる

……と、早め早めの準備を煽るようなことを書いてきましたが、(そんなに早く行動できないよ、そんな何校も回れないし……)と、かえって不安を募らせてしまう方も多いと思います。

身近な例として「なんとか1校に絞って受けたものの、落ちて、3月ギリギリに公立の定時制などに滑り込みで決まった」というパターンがあります。それも複数。国としても「高校くらいは行ってもらわんと…」という方針があるようで、最終的には拾う神あり、になるようです。なので、ここまで準備しなくても、実は最終的には、どうにかなると思います。

高校は義務教育ではないので、いっそ受験はスルーして、年の途中から編入する……というパターンも全然アリと思います。そのパターンも調べました。

定員があるので4月すぐは無理ですが、諸事情でやっぱり通えなくなる新入生も出てくるので、最速でゴールデンウイーク明けくらいから最初の編入が始まる学校もあるようです。各学校に問い合わせてみてください。焦らず落ち着いて。いくらでもリカバリはできます。

終わりに

ここまで読んでいただいて、ありがとうございました。あなたのご家庭の進路選びのご参考になれば。

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