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僕は心から佳代を愛していた。    ~ショートショート~

それは突然に、テレビから圭くんと眞子様の婚約会見が放映された。
「まさか圭くんが眞子様と。。。」
嬉しかった。
圭くんは立派になった。
そして、まさか眞子様と婚約をされるなんて。。。

僕は心から佳代を愛していた。
婚姻こそなくとも僕らは夫婦だと思っていた。
だから圭くんも当然、僕の息子だと思っていた。
だから二人の生活費も圭くんの学費も、支援する事に躊躇はなかった。
そりゃそうだよ。
婚姻こそなくとも家族だもの。
そこに誇りはあっても躊躇はなかった。

僕は心から佳代を愛していた。
でも。男と女は非情なもので、別れの日は突然にやってきた。
いや、僕にとっては突然だったが、佳代にとっては必然だったのかもしれない。
もう、今となっては佳代の気持ちを聞くすべもない。
全てが想像だ。

思い出を一つ一つ辿ってみる。
二人の写真や。
佳代が走り書きしたメモや。
佳代がこの部屋に置き忘れたカーディガンや。
思い出の一つ一つを数えてみる。
二人で行った旅行やレストランや。
その時々の佳代の笑顔や、たわいのない口喧嘩や。
「あの祭りは華やかだったな」
「あの時の酒は美味かったな」
一つ一つ思い出を数えて
気づけば、いつしかそれらの金額を計算している。
二人の時間も。二人の温もりも。全てお金に変えて思い出している。
支援した生活費や。圭くんへの学費や。

気づけば一人暮らしの殺風景な部屋で。
一つ一つ佳代を数えていた。


僕は心から佳代を愛していた。
だからけしてそれは恨みなんかではない。
確かに今の暮らしは貧乏のどん底ではあるが、貸した金が欲しいわけではない。
僕と佳代の物語を誰かに聞いてほしかっただけなのだ。
それだけだったのだ。
だから週刊誌の取材に応じた。

その次の週。
「小室圭氏の母。元交際相手に借金!」
そんな見出しの踊る週刊誌に、僕の言葉は切り貼りされ掲載された。
直ぐに各局のワイドショーが騒ぎたてた。
あれよあれよという間に僕は闘争の渦中におかれた。
僕の思いは置いてけぼりに、週刊誌と代理人が僕を乗っ取った。

「借金を返さない母」
「金をだまし取って息子を育てる母」
「こんな親子と眞子様を結婚させてはならない」
と日本中から佳代と圭くんは叩かれた。

世間は「結婚許すまじ派」と「結婚をお祝いしよう派」に分断され。
そのほとんどが「結婚許すまじ派」で。
なんでこんなことになってしまったのか。。。
僕は僕が分らない。

ついには
「結婚をお祝いしよう派」が立ち上がり
「元婚約者へ400万を返せばいいんだろ!」というクラウドファンディングが立ち上がった。
驚く事にその400万どころか4000万が僅か1週間で集まり。
「金の問題じゃない!」となおさらに
世間は「結婚許すまじ派」と「結婚をお祝いしよう派」が論争を繰り広げた。

「金の問題じゃない!」
「金の問題じゃない!」
「金の問題じゃない!」
それは僕が叫びたい言葉なのだが。
世間は「金の問題じゃない!」といいながら金の問題しか主張しない。

「そんな金は受け取れない」という僕の言葉を無視して。
代理人はそのクラウドファンディングの4000万をもらってしまった。
4000万の大金を目の前に
弁護士はどこか勝ち誇った顔をしている。
違う!違う!違う!

僕は心から佳代を愛していた。
ただ一言「圭くんおめでとう」と言いたいだけなのだ。
ただ一言「今までありがとう」と言ってほしいだけなのだ。

違う!違う!違う!
僕はこんなかき集めの金と引き替えに
僕は佳代から恨まれ、圭くんから恨まれ、眞子様から恨まれ。
世間から揉みくちゃにされ。
僕は永遠の一人ぼっちだ。


サヨウナラ
僕は思い出までも。壊してしまった。
粉々に。。。

サヨウナラ
僕は心から佳代を愛していた。
もう。。。分らない。。。



※もちろんフィクションです。

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