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シオシオの安心感

 ときどき、映画「インスタント沼」が見たくなる。
 麻生久美子さん演じる主人公ハナメが毎朝「シオシオミロ」という飲み物を作るのだが、いつもそのシーンを見て、ああこれこれこれよ~と癒される。スプーン10杯のミロに12.5ccの牛乳を入れて混ぜた、どろどろの飲み物。適量度外視で、表題通りのインスタントな沼が完成する。自分だけのささいなこだわりが描かれた映画の世界観が好きだ。

 私もこれをよくやってしまう。べったり甘くて、ジャリジャリとチョコの砂を食べている感じに満足する。というかミロに限らず、インスタントの飲み物やスープは基本的にシオシオにしてしまう。シオシオに幸せを感じる。今朝も、コーンスープの粉を少量のお湯と混ぜて、ぎりぎり液体にした。どろっとした塊部分を残すとなおよい。薄めるともったいない(?)。

 自分が自分のためだけに作って食べるごはんの安心感ってこういうことだなーと思う。美味しさとか不味さとか以前の話で、食べたとき「そう、これこれ。これでいいんだよ」と脳が頷く。

 一人暮らしをしていたとき、「自炊してます」と言うと、大抵「得意料理は?」と聞かれた。返答にいつも困った。普通の人は「ハンバーグです」「肉じゃがです」なんて答えるのだろうか。そんな真っ当な料理が得意と言える人を素直に尊敬してしまう。たぶん突然部屋を訪れられても、普段からある程度きれいにしているので大丈夫なタイプだろう。

 私はといえば、決して他人に食べさせたり、インスタに載せたりできるような料理は作らないし、作れない。野菜を入れ過ぎてほぼ汁のない鍋とかばかり。鶏軟骨にもハマり、かれこれ1年以上週4回は食べている。名前のついたメニューを作ることはない。得意料理は「適当に野菜炒めてるだけです」と言っておくと、あまり話も広がらないのでよいと分かった。大体、得意料理とか趣味って、名付けられないような曖昧なものの場合も大いにあるはず。意外と初対面の質問には向いていないのではないか。

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