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【ポケカ考察】『アーキタイプ序説』


はじめに

 今回は、タイトルにもあるように、ポケカにおけるアーキタイプについて考察していきます。アーキタイプとは、元来はユングが提唱した概念で、TCGの世界ではMTGで用いられているデッキの特徴に合わせた分類のことを指します。アーキタイプを知ることで、デッキの相性関係を整理し、あるデッキに勝つにはどのようなデッキを選択すればいいのかを予測できるようにすることが本記事の目標です。
 また、本記事を書くにあたっては下の記事を参考にしていて、こちらを先に目を通しておくのがいいと思います。

アーキタイプの特徴

 ここからは各アーキタイプについて解説していきます。アーキタイプは、大きく分けて6つに分類されることが多く、各アーキタイプがゲームテンポ・決定力・妨害のどこにリソースを割いているのかに着目すると、特徴を掴みやすくなると思います。

アグロ(Aggro)

 アグロは、序盤からリソースを消費し、相手の盤面が完成するよりも前に攻撃することで、そのまま押し切って勝つプランを採るデッキです。特に、ポケカにはたね切れによる敗北があり、相手の事故を拾いやすいのも強みとなります。アグロの作りとしては、すぐに攻撃できるようにたねポケモンで構成されていて、エネルギーを加速させるカードやアタッカーをバトル場に出すための入れ替えカードにアクセスする必要があることから、山札を掘り進める手段が豊富です。足りない打点を補ったりサイドを効率よく取ったりするため、相手ベンチの呼び出し手段も多く採用されます。弱点を挙げると、HPが低いたねポケモンであることからアタッカーが倒されやすく、後半になるにつれて段々と息切れを起こし、山札を掘る手段を妨害されるとスピードという強みが失われるというのがあります。自分のデッキを回すことにリソースを割いていて、直線的な動きしかできず、序盤に押し切れないと逆転されやすいです。
 イキリンコex、かがやくゲッコウガ、ミュウex、トレッキングシューズ、ポケストップ等で積極的に山札を掘り進め、トラッシュにエネルギーを溜めながら、ダークパッチとオーリム博士の気迫でエネルギーを加速する古代デッキは、典型的なアグロデッキだと言えます。

EX. 古代ウィニーデッキ、ツイントドロクツキデッキ

(*)アグロをビートダウン(Beatdown)と表記することもありますが、ビートダウンはサイドを取り切るデッキ全般を指すこともあるため、本記事ではアグロで統一します。

アグロコントロール(Aggro-Control)

 アグロコントロールは、コンセプトはアグロに似ていて、妨害手段を入れることでその弱みを補うようなデッキとなっています。攻撃への要求が低いアグロデッキの余った枠に、妨害カードを採用していると捉えることができます。このデッキは、相手への妨害が功を奏すれば、相手を完封させることが可能です。しかし、妨害にリソースを割いている分、アグロ本来の強みは薄れていて、相手に妨害が通用しないとアグロ以上に苦しい状況に追い込まれることになります。
 イキリテイクとエレキジェネレーターでデッキを回しつつ、ジャッジマンで相手を妨害するミライドンデッキは、ここに分類されると思います。ジャッジマンを採用せずに博士の研究を増やし、ライコウVではなくコストが重いテツノカイナexをメインのアタッカーとする場合にはアグロの色が濃くなり、スタン落ち前に存在した頂への雪道 + ジャッジマンで妨害する場合にはコントロールに寄ります。

EX. ミライドンデッキ

(*)アグロコントロールは撹乱的アグロ(Disruptive Aggro)やビートコントロール(Beat Control)とも言われ、クロック・パーミッション(Clock Permission)はここに含まれます。

ミッドレンジ(Midrange)

 ミッドレンジは、アグロと比べるとゲームテンポが遅く、レイトゲームで勝つことを意識したデッキです。序盤は盤面を作ることに注力し、中盤以降にHPや打点の高いポケモンを出してリソースの量と質で圧倒していきます。ミッドレンジでは、性能の高い進化ポケモンを軸としていることが多いです。ゆっくりとしたサイドレースを見据えていて、序盤にサイドを先行されても逆転できるように、手札干渉や回復の手段が搭載されています。
 序盤は盤面作りに専念し、中盤以降はナンジャモやツツジでの手札干渉や、フトゥー博士のシナリオや崩れたスタジアムでの擬似的な回復を使い、高HPかつ高火力を押し付ける悪リザデッキは、ミッドレンジとなります。

EX. 悪リザデッキ

コンボ(Combo)

 コンボは、特定の条件を満たすことで相手に有無を言わさずに勝つことを目標としたデッキです。コンボパーツを集めることが求められ、展開が遅く、デッキの枠をドローに割いている反面、盤面を完成させることが勝利と直結します。そのため、盤面を作る猶予がある対面で強力無比である一方、相手からの妨害に弱いです。また、コンボそのものが通らない相手も苦手となります。
 ロストゾーンにカードを溜めることを基点として、ミラージュゲートで高コストの技を使用するロストデッキは、コンボとしての性質を備えています。ただし、今のロストデッキは決定力に欠けていることから、カウンターキャッチャーとツツジで相手の動きを止めるという工夫が必要となっています。以前のCL京都で優勝したロストカイオーガデッキであれば、コンボの特徴にピッタリと当てはまり理解しやすいのではないでしょうか。ロスギラデッキだと高HPを活かしたミッドレンジに近くなり、山札を掘る手段や入れ替え手段を増やし、後攻1ターン目や先攻2ターン目からミラージュゲートを使うように組むと、アグロらしさを帯びてきます。

EX. ロストデッキ

ランプ(Ramp)

 ランプは、永続的なエネルギー加速手段を用意し、コストが重い技を駆使して戦うデッキです。アグロのエネルギー加速が一時的なものであるのに対して、こちらは持続的にエネルギーを供給させることができるため、息切れしにくくなっています。序盤は準備に時間を使い、中盤以降は高コストの技を連打するという性質は、コンボとかなり近いです。相性関係もコンボデッキと類似します。コンボとの違いを挙げるのであれば、盤面を完成させたときに必殺と呼べるほどのパワーがない代わりに、盤面を作り上げるまでの要求が低く、コンボパーツが抑えられているというのがあります。
 セグレイブやアーケオスで無尽蔵にエネルギーを供給するパオジアンデッキとルギアデッキは、ランプにカテゴリーされます。

EX. パオジアンデッキ、ルギアデッキ

コントロール(Control)

 コントロールとは、相手を妨害してゲームテンポを遅らせるアーキタイプです。エネルギーを加速するためにデッキを回す必要がなく、他のデッキとはリソースの量と質で勝負することができます。なお、ポケカではサイドを取るか否かという観点から、コントロールデッキはさらに2つに大別できると考えられます。サイドを取り切るコントロールデッキの場合、打点が足りない一方で要求が低い手軽な技で攻撃し続け、相手の展開を阻害しながら、サイドレースで勝つことを目指します。ただし、相手のリソースを枯らし切ることができるときには、LOによる勝利も狙うことができます。もう1つのサイドを取らないコントロールでは、サイドを取らない以上、基本的にLOによる勝利を目標とします。LOを軸にしている場合であっても、相手が単騎で戦うときや、LOデッキでミラーしたときには、サイドを取ることがあります。
 また、コントロールと混同しやすい用語として、StallとMillがあります。コントロールが相手の手札や特性を制限して動けなくするデッキを指すのに対し、Stallは相手からの攻撃を無効化するデッキ、Millは相手の山札を破壊するデッキとなります。Stallの例としては、先日のCL福岡で使われたアローラロコンVSTARやしんぴのまもりを持ったミミッキュを採用するデッキがあります。相手のアタッカーではないポケモンを縛り、ゆうきのおまもりとボタンで耐久するカビゴンLOデッキや、ミュウツーV-UNIONのちょうさいせいで耐久するデッキもStallとなります。Stallデッキからサイドを取る方法は限られているため、コントロールと同じく、解決手段をどう通していくのかに焦点があります。Millは、今のスタンではじばんほうかいのイダイナキバが代表例となります。Millの個人的な見解として、山札破壊はランダムハンデスと実質的に同じであり、ただ山札を削っているだけではLOまでのターン数が足りないことから相手への妨害が含まれていて、相手がこの妨害を乗り越える手段をハンデス及び山札破壊から守れるかというところにゲーム性があるので、リソースの奪い合いという点ではコントロールと共通していると思います。要約すると、StallとMillも広い意味でコントロールの仲間と見ていいのではないかということです。
 今のスタンだと、ジャッジマンやビワで妨害するアルギラデッキがコントロール、相手の攻撃を耐久するアルセロコンデッキとカビゴンLOデッキがStall、じばんほうかいで山札を破壊するイダイナキバLOデッキがMillとなります。

EX. アルセウス系デッキ、カビゴンLOデッキ、イダイナキバLOデッキ

相性関係

3大アーキタイプ

 MTGにおいては、アグロとコントロールとコンボが3大アーキタイプとされ、妨害される前に攻撃をできるアグロはコントロールに強く、コンボパーツの集結を妨害できるコントロールはコンボに強く、コンボは妨害手段を持たないアグロに強いという三つ巴であると言われています。ただし、これは本家MTGでも言われているように単純化し過ぎているのが否めず、中でもコントロールはこれに整合しないことが多いです。コントロールは、相手のデッキに合わせて妨害手段を選択するデッキで、環境によって適宜姿形を変えます。つまり、組み方次第でアグロやミッドレンジに強くすることもできますし、コンボやランプにも弱くなり得ます。コントロールの強さは、どこまで対応範囲を広げることができるかにあると言うこともできるでしょう。
 3大アーキタイプに含まれていないアーキタイプでは、アグロコントロールはコントロールに、ランプはコンボに近い相性関係を持ちます。ミッドレンジに関しては、ポケモンの質に差があり、妨害手段による逆転があることからアグロに強い一方、序盤の盤面作りを許すことになるのでコンボ・ランプに弱いとされています。

タイプ相性による修正

 ポケカでは、アーキタイプの他にポケモンのタイプによる相性差も存在します。最近の環境では実感しにくいですが、タイプ相性による影響力は大きく、3年前のれんげきウーラオスVMAXとムゲンダイナVMAXとミュウツー&ミュウGXによる三竦みは、タイプ相性でかなり勝敗が決していました。今の環境では、弱点という要素はメタカードとして機能することが多いです。アーキタイプに従った相性差を覆す手段としては、ロストデッキの対アルセウスVSTAR用のフーパexがあります。ロストデッキはカスタマイズ性が高く、対面に合わせてアタッカーを選択できるバレットというカテゴリーに属し、様々な環境でも戦い抜ける性能があります。

現環境との照合

スタンダード

 アーキタイプに基づいて考えると、ミッドレンジの悪リザデッキはアグロの古代デッキに強く、コンボ・ランプのロストデッキ、パオジアンデッキ、ルギアデッキに弱いと言え、これは妥当な主張となっています。しかしながら、ロストデッキ、パオジアンデッキは、アーキタイプでの分析とは異なり、古代デッキに有利とは言えません。その原因は、これらのコンボ・ランプが、HPの高いルール持ちに対しては青天井火力のポケモン、HPの低いポケモンに対してはテツノカイナex、かがやくゲッコウガ、又は非ルールのポケモンをアタッカーにするという使い分けをしていて、古代デッキが役割対象となっていないためです。このことは、古代デッキはアグロであるにも拘らずHPの水準が高く、デッキパワーが高いと解釈することができます。ただし、これは直ちに環境で強いということを意味するわけではなく、最も数が多い悪リザデッキに大きく不利であるため、勝率はそこまで良くないです。
 このように、アーキタイプから相性を考えることはそれなりに有用ではありますが、過信してはいけません。また、アグロとミッドレンジとコンボ・ランプとコントロールが1/4ずつ環境に存在するのが理想とされていますが、今はミッドレンジが強くアグロが少ないです。

エクストラ

 エクストラでは、ルギアデッキとレジドラゴデッキが頭一つ抜けた強さとなっていて、ランプのルギアデッキがミッドレンジのレジドラゴデッキに有利であることが確認できます。ルギアデッキはランプでありながら初速が早くて妨害に強く、レジドラゴデッキはミッドレンジでありながらかなり強力なコントロール要素を持つので、並大抵のデッキでは太刀打ちできません。そして、このどちらとも勝負できるコントロールの黒馬デッキは環境デッキの1つとなっています。ルギアデッキに強いとされている、ダイス型ミュウデッキ、アマージョデッキ、ロトムアゴアクジデッキはいずれもアグロコンボとでも言えるような作りになっていて、妨害手段に乏しいルギアデッキでは勝つことが難しいです。

おわりに

 アーキタイプは万能な物差しではなく、相性関係をデッキパワーやメタカードが引っ繰り返すことは多々あります。しかしながら、演繹的にデッキを見ることで、あるデッキに対してどういったデッキが有利を取ることができるのかを予測することに役立ち、デッキリストを改善する道標となります。この手法は、デッキタイプが多く複雑な環境を形成しているエクストラにおいて特に有効です。メタゲームの奥深さに惹かれた人は、是非ともエクストラを始めてみてはいかがでしょうか。
 また、どのアーキタイプを握ると勝てるかは環境やカードプールに依存するだけでなく、個人の資質とも関わってきます。ある程度は練習や経験でカバーすることができますが、人によって得意なデッキと不得意なデッキはどうしてもあります。一般的に、先の展開を見越す高度なプレイングがあれば対応力の幅が広くバランスの取れたミッドレンジのデッキを強者が好んで使う傾向はありますが、自分の適性に合ったデッキ選びも大事です。色んなデッキに触れて、自分の長所を見つけましょう。


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