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コンクリートで法面処理された崖の写真が美しいのはなぜか? 〜えも言われぬ気持ちに言葉を探して〜

初めて柴田敏雄の写真を見たときに、自分をとらえた感覚を思い起こしてみる。画面の隅までしっかりとピントが合い、波打つようなコンクリートの壁の写真に対峙した時の。これはなんだろう。こんなコンクリートの固まりを、わざわざ撮影しているのはなぜだろうか。驚きと戸惑い、そんな思いだったと記憶している。

柴田敏雄の写真集『ランドスケープ』という素晴らしい写真集があります。上の文章は、藤村里美による巻末解説の冒頭です。

東京都立近代美術館でおそらく同じ写真を見た時の私の思いを言い当てています。一風変わった興奮です。そう簡単には納得がいかない類の。

美しいと感じるのは、コンクリートで法面処理された壁の抽象的な形態や質感に。人工物と自然が一体となってうねうねと動いているように見える時間に。生きていくための営みに。技術に。いずれにも感じ入るのです。さらに、作者の世界を見る眼差しにも。

未来のあり方を問いかけられているうようで、単に美しいで終われないのです。




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