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【イベントレポ】ケアで紐解くPolaris

こんにちは、ちひろ@自由七科です。

近年、「ケア」という言葉をよく聞くようになりました。ケアに関する書籍もたくさん発売されています。これほど注目される前は、ケアという言葉は看護や介護、ヘルスケアの文脈で使われることが多かったように思いますが、最近はケアがもっと多様で広い意味合いで解釈されています。

そこで今回は、「ケア」の視点をヒントに、Polarisの活動を紐解く対話を行ってみました。
話したのは、ファウンダーの市川望美、創業メンバーである山本弥和、自由七科の武石ちひろです。

なぜ、「仕事軸のコミュニティ」という言葉を使うのか

ちひろ:最近、ケアに注目が集まっている理由には、行き過ぎた資本主義や自己責任論への問題意識があると思います。これまでは強い個人が前提とされる社会でしたが、人間は弱い存在だし、強い個人が活躍できる社会を支えてきたのはケアする人たちがいたからですよね。

Polarisは誰もが自分が望む働き方を選択できる社会を目指していて、創業時は家族のケアの担い手である育児中の女性が主なメンバーでした。そういう意味で、今の社会の問題意識にいちはやく取り組んだ会社なのではと思っています。

今回は、「ケアとコミュニティ」がテーマ。ケアの話をする前に、コミュニティについて話しておきたいのですが、Polarisは自分たちのことを「仕事軸のコミュニティ」と呼んでいますよね。会社組織とコミュニティは遠い存在に思えるのですが、なぜコミュニティという言葉を選んだのですか?

望美:Polarisの設立の前は子育てNPOをやっていました。そこで感じていたのは、する・されるの関係ではなく、お互いに関わり合い、つくり合う関係でした。そこにいると安心する、誰かが見ていてくれるような雰囲気を、コミュニティの中で一番心地よい要素として感じていたんだよね。何かができるとか、役に立つからとかではなく、いること自体を受けとめてくれる場所。そういう場だったから、「こんなことをやってもいいのかも」「こんなこともできるかもしれない」と中長期的なビジョンを持つことが出来た。

Polarisを設立するときも、ただ仕事をする・してもらうだけではなくて、そもそもどんな選択肢があればいいのか、みんなで考えてつくっていきたかった。そういう思いがコミュニティという言葉に繋がっているのだと思う。

弥和:確かに望美さんから一緒にやろうと誘われて創業メンバーになったけど、一緒につくっていこうという意識が最初から強かった。その時はコミュニティという言葉にピンときていなかったけど、今思うとその言葉しっくりくるね。

Polarisは「優しい」と言われることへの違和感

ちひろ:今は違いますが、創業期はPolarisで働いている人の多くが子育て中の女性でした。家族のケアの担い手がメンバーに多かったことで、Polarisの組織づくりの中にも自然とケアの視点が内包されていったのではと思います。お互いの心地よさを大切にしながら、共にPolarisをつくってきたわけですから。
 
望美:最近はだいぶ変わったけど、その「心地よさを大切にする」という理念も、最初はなかなか理解してもらえなかったよね。私は心地よさというのは、自分に誠実に生きるということで、それはとても大変なことだと思っているんだけど。よく「Polarisは優しい組織ですね。」と言われるけど、それも違和感がある。かと言って、厳しいわけでもないのだけど。
 
弥和:なぜ心地よさを大切にしているかと言うと、それが一番いい仕事ができるし、みんなが健全な状態だからだよね。つまり、前へ進むため。在宅で働くメンバーも多いので、テキストコミュニケーションにすごく気を遣ったり、仕事のお願いの仕方も工夫したりしている。いつも力が出せる状態であるように、コミュニティを整えてるんだよね。

望美:Polarisはチームで仕事をしているわけだけど、そのチームづくりにも特徴があるように思う。1対1の関係だけに着目せず、チーム全体としての状態を捉えて、今ここで何が起きているのかを感じる取ることを大切にしている。そこにも個人、チーム、事業、会社全体など様々なレイヤーがあるよね。解像度を上げたり、下げたり、焦点をぼやかしたりしながらコミュニティを機能させているように感じる。コミュニティを整えると言っても、必ずしも気の利く人が一人ひとりに手を掛けるということではないんだよね。

弥和:そう。一人ひとりを見るのが得意な人、全体を見るのが得意な人などみんなそれぞれ。違うことを前提としながら、それぞれの特徴を気持ちよく出し合えるか。単に仕事の受発注の関係ではなく、もう少し広い範囲を見てるね。

望美:その辺を「優しい」と表現されるのかもしれないけど、一方でちゃんと厳しさもある。そこをケアの視点で上手く伝えられないかなと思ってる。

その人がしてきた経験に敬意を払う

ちひろ:少し視点を変えると、Polarisには「くらしのくうき」というサービスがありますね。新築マンションの購入検討者に対し、その土地に住む人が地域情報を話し、その街の暮らしの空気感を伝えるというもの。子育てや家族をケアする中で得てきた情報が、誰かの価値になるというとても画期的な事業だと思います。

望美:「くらしのくうき」は、Polarisのフラッグシップ的な事業。その背景には、毎日の生活を営む人たちの経験を、キャリアロスとかブランクとか言われたくない、もっと敬意を持ってほしいという思いがありました。

ちひろ:最近は、コミュニティ運営の事業が伸びてきていますが、これも地域をケアするという意味で、くらしのくうきの精神が受け継がれている事業だと思います。地域コミュニティも少し前は専業主婦が中心にケアしてきたのではないでしょうか。今はみんな働いているから、そこを担う人が必要になってきた。ケアの価値が認められるようになってきたのでしょうか。

望美:時代の要請によって必要なものは変わってくるけど、自分たちがやってきたことが誰かの役に立つことの嬉しさは変わらない。一方で、何か役割がなくてもいてもいい、ということもPolarisがつくるコミュニティでは大切にしたい。たとえば、地域の誰かが持ってるちょっとしたスキルをシェアする機会をつくったり、その人の中に眠ってるものを形にして届けることももちろろん素晴らしいんだけど、やっぱりタイミングや関係性や様々な要素があるから。まずは、いていいんだっていうところを大切にしていきたいかな。

自分をケアすることの難しさ

望美:でも誰かをケアすることって、とても疲れること。自分を解放したり、取り戻すことはたぶん、今までよりも重要になってくるんじゃないかな。

弥和:どう休めば自分は休んだことになるのか、どうしたら自分が満たされるのかを理解するのは、意外と難しいことだよね。

ちひろ:ケアも行き過ぎると、依存や暴力にも繋がる可能性がありますね。母の愛=自己犠牲、のような言われ方もします。

望美:自己犠牲にならないケア。他者との距離感みたいなところが、自分に向くベクトルがどれだけあるかっていうのはとても大事なポイントだと思う。次はそんなことも話してみたいね。

参考図書

最後に、望美さんがこの対話にあたり、参考にした本を紹介してくれました。よかったら読んでみてくださいね。

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今回の対話全編はこちらでご覧いただくことができます。


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