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交番勤務員の職質③(「俺じゃないって!」「いや、絶対お前だろ。」)


ゼロ職とは


交番勤務中、事案が何も入ってないのに、自分から積極的に職質して検挙に結び付けるのをゼロ職といいます。

これは非常に高く評価されます。

交番勤務していてひまな時間、同僚や上司としゃべってるだけの者も多数います。

こういう警察官も結局「職務質問強化月間」では職質しなければいけないのは職質編で述べてきたとおりです。

暇な時、積極的に職質を重ねていく者とそうでない者は組織の中ではっきりと明暗が分かれていくのですが、今回は話がずれるので割愛します。

俺じゃないって!


さて、ゼロ職でなくても職質が必要な場合があります。

それは通報が入って臨場指令が出て現着し被疑者を探す場合です。

5月の当直、昼12時ころ、私の管内で公然わいせつの通報が入りました。

現場はかなり広い公園です。公園内で複数人に対して自分の局部を露出して見せつけた若い男がいるようです。

ちなみに公然わいせつは寒い時期はほとんど発生しません。やはり寒い時期は肌を露出したくないのでしょう。

しかし、暖かくなってくるとこういう性癖を持つ人間が一斉にやり始めるので通報が多くなります。

「かなり広い公園だから被疑者が車で来てても、車に戻るまでにけっこう時間がかかるかもな」などと考えながらそこまで緊張もせずミニパトで向かいました。

公然わいせつに限りませんが、被疑者はすぐに現場を立ち去る可能性が高いからです。

酔っ払いでもない限り、私が現着するまでその場に留まっている可能性は低いです。

普通は聞き込みをして付近のパトロールに移行します。

公園に到着すると全然人がいません。公然わいせつの男に驚いてみんな逃げてしまったのでしょうか。

だだっ広い公園を眺めると遠目に男が一人見えます。

何をしているのか、行ったり来たりしています。

まあ、とりあえずあの男しかいないようだし、話を聞いてみるか、と思い近づいていきます。

すると男は私に気づいて逃げていくようです。

しかし、走って逃げるわけでもありません。かと思うと立ち止まってこちらの様子を伺っています。

「全く何なんだよ、早く話を聞きたいのに。からかっているのか?」等と思いながらもやっと声が届く所まで近づくことができました。

20歳前後の眼鏡をかけた男です。

「すいませ~ん。」と声をかけます。

するといきなり「俺じゃないって!」と怒ったように言ってきました。

内心(いや、まだ何も聞いてないし。っていうか絶対お前だろ!

逃げもしないで、何なんだコイツは!?

「この辺で局部露出した男がいるんですけど見ていませんか?」などと質問を重ねます。

最初は「友達がやった」「もうそいつはいなくなった」等と否認していたのですが、結局自分がやったことを比較的あっさりと認めました

話していて分かってきたのですが、知的障害を持っている人でした。

しかし、被疑者は被疑者です。

結局、刑事とも相談して現行犯逮捕せず、在宅送致で私の交番で持つことになりました。

公然わいせつは一発で現行犯逮捕が主流で、あまり交番で持つことはないですからね。被疑者調書作成にも協力的で心は純粋な被疑者でした。

この件はゼロ職ではなかったのですが、印象深くてよく思い出す事案です。


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